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2009年2月26日 (木)

【読】石原莞爾

平岡正明という評論家がいる。
1941年東京生まれ、1963年早稲田大学露文科中退。ジャズ評論等で活躍。
――著者略歴には、そのように書かれている。

60年代安保世代で、いろいろ活動してきたらしいが、私はよく知らない。
とくべつなファンというわけでもないが、何冊か読んできた。
この人の文章は面白くて、読ませる。

ただし、いいことを言っているかどうか、内容は保証しかねる。


Hiraoka_nihonjin_chugoku平岡正明 『日本人は中国で何をしたか』
 潮文庫 1985/7/30発行 (親本:1972年 潮出版社)
 350円 236ページ

単行本で読んだ記憶があるが、手元に残っておらず、ネット販売で中古の文庫版を入手。
二、三十年ぶりに読んでみたが、興味深い内容だった。
勉強にもなった。

先の戦争に関する書物はたくさんあるが、どちらかというと 「やられた」記録(いわゆる、わだつみ系の手記など)が圧倒的に多く、日本人がアジアで何を 「やった」 か、加害者の立場から書かれた記録は少ない。

ひどいことをした人たち(自ら進んでやった人ばかりではなく、「やらされた」人も多いだろうが)は、みんな口をつぐんでいるのだろう。


著者 平岡氏はこう書く。
(本書 106ページ、「3 三光における国家意思と兵の実情」)

<日本軍隊の教育は、まず具体的に人を殴ってみること、殺してみることである。
 皇道イデオロギーにもとづく日本軍隊の軍事教育および軍隊教育…(中略)…については、その奇形の精神病理学的分析にしても、集団心理学的分析にしても、あるいは軍隊内の階級対立にしても、戦中派イデオローグによる多くの内省があり、ここでくりかえすものではない。>

<興味ある読者は雑誌『新評』(1971年7月号)、安田武「日中・太平洋戦争を知るための150冊の本」リストを参照されたい。>


――として、この雑誌でとりあげられている 「わだつみ派文献」 を紹介している。

<戦没学生遺稿集、その他の遺稿集、戦争体験者の証言、女性の戦争体験、捕虜収容所・外地引き揚げ、沖縄、原爆、空襲、学童疎開、戦争文学主要作品の十項目について百五十冊の本がリストアップされている。>

<われわれは、これらの 「わだつみ派文献」 を読むべきであり、私自身もあんがい読んでいる。>


続けて、こう言う。

<しかし、安田武のこのリストアップのしかたはまちがっている。 このリストは、日中戦争および太平洋戦争で自分たちがどれだけやられたかという観点で網羅されている。 なにをやってきたかという観点が欠如しており、ことに三光関係の文献が一冊もなく、戦犯クラスの、つまり職業軍人の上層の手記も一冊しかない。 戦史、戦争論、軍事科学関係の本の匂いもない。 これでは日中戦争、太平洋戦争について半分しか知ることはできない。>


まったく、そのとおりだと、私も思う。


Hiraoka_ishihara_kanji平岡正明 『石原莞爾試論』
 白川書院 1977/5/15発行 1300円 224ページ

市の図書館には置いていないので、ネット販売で入手。
かなり変色している(ヤケがひどい)のに、いい値段がついていた(1830円)。
執筆当時(70年代後半、ある意味で騒然としていた時代だった)の「匂い」が濃厚な著作だが、面白い。

船戸与一の 『満州国演義』 にもひんぱんに顔を出す、この不気味な将軍 石原莞爾に関心があったので、読んでみようと思ったのだ。


まさに、「やった」側からの論考である。

<石原莞爾は日本近代史上稀な 「武装せる右翼革命家」 である。 たんに軍国主義者、武断派というだけではない。 職業軍人であり、陸大出の、ドイツ留学をしたエリート軍人である。 職業軍人とはなにか。 軍隊組織の内部にいなくてはアホみたいなものであり、軍隊(もっとも明確な階級制度と指揮命令の系統)がなければ無に等しいい。 これと異なって石原莞爾は、世界戦略をもった軍人であった。>
(本書 17ページ、「おりもおり、満州国建国問題を」)


読み始めたばかりなので、ためになる本なのかどうかは、まだわからない。

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コメント

指揮者の小沢征爾さん、

石原莞爾と板垣征四郎から漢字をもらったという事実は複雑な思いになります。

投稿: こまっちゃん | 2009年2月26日 (木) 16時48分

>こまっちゃん

Wikipedeaには次のように書かれていますね。
<小澤 征爾(おざわ せいじ、1935年9月1日 - )は日本人指揮者である。現在は、ウィーン国立歌劇場の音楽監督を務める。 栄典・表彰歴として文化勲章受章など。>
<満洲国奉天市(中国瀋陽市)生まれ。父小澤開作は歯科医師。協和会創設者の一人で、親交のあった板垣征四郎と石原莞爾から一字ずつ貰って第三子を「征爾」と命名した。小学生のときに満州からの引き揚げを経験。>

お名前は、ご本人の責任ではありませんが、戦争の色の濃い命名ですね。
(私は、いわれを考えなければ、いい名前だと思います)

旧満州(偽満州)や朝鮮半島で生まれ、引き揚げてきた著名人は他にもたくさんいますが、皆さん、たくましいですね。
赤塚不二夫、加藤登紀子、五木寛之、etc。

投稿: やまおじさん | 2009年2月26日 (木) 18時13分

コメントといえども正確に書かなくてはいけないので…。
五木寛之氏は、福岡県で生まれて生後まもなく朝鮮半島に渡りました。
他にも、幼い頃、引き揚げ体験をした著名人は多いはずですが、すぐには出てきません。

投稿: やまおじさん | 2009年2月26日 (木) 19時07分

しつこいようですが、満州生まれの著名人というサイトを見つけました。
トップページではありませんが、このサイトの作者自身も満州生まれだとか。
http://www12.ocn.ne.jp/~ikuya/page002.html

私が知っている名前で、このサイトに出ていたのは――
小澤征爾(指揮者)、秋吉敏子(ジャズピアノ)、山田洋次(映画監督)、山口淑子(李香蘭)、宝田明(俳優)、坂東英二(元プロ野球)、加藤登紀子(歌手)、宮尾登美子(作家)、なかにし礼(作詞家)

投稿: やまおじさん | 2009年2月26日 (木) 19時30分

むかしイザラ書房から出ていた『ジャズ宣言』を思い出し冒頭を読みたくて本棚を探してみたけれど見当たらない 処分したのだろうか
ネットで探したらあったので引用します(正確かどうかはわかりませんが こんな感じてあったことはたしか)

「どんな感情をもつことでも、感情を持つことは、つねに、絶対的に、正しい。ジャズがわれわれによびさますものは、感情を持つことの猛々しさとすさまじさである」

投稿: uji-t父 | 2009年3月 3日 (火) 22時14分

>uji-t父さん
平岡正明『ジャズ宣言』(復刻版、現代企画室発行、1990年)を持っています。

すごい記憶力ですね。
冒頭は、ほぼこの通りです。
続く部分に私はぐっときました。

「あらゆる感情が正当である。(中略)われわれは感情をこころの毒液にひたしながらこっそり飼い育てねばならぬ。身もこころも智慧も労働もたたき売っていっこうにさしつかえないが、感情だけはやつらに渡すな。他人にあたえるな。……」

この本こそ、怪著といえるでしょう。

投稿: やまおじさん | 2009年3月 4日 (水) 20時40分

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