【読】ワセダ三畳青春期
二日前から読んでいた、高野秀行さんの本である。
高野秀行 『ワセダ三畳青春期』
集英社文庫 2003/10/25発行
293ページ 552円(税別)
文庫書き下ろし
早稲田大学正門から徒歩五分。
大きな胡桃の木のかたわらにある古い木造二階建てのアパート。
そこは、高野さんが、1989年から2000年までの11年間、22歳から33歳にかけて暮らした場所である。
三畳一間、風呂なし、トイレ・台所共同で、家賃はなんと12,000円。
これが1970年代ではなく、80年代が終わろうとしていた頃の話とは、とても思えない。
浮世離れした暮らしぶりに、ただただあきれてしまうが、読後感は、爽やかのひとこと。
帯にある、「酒飲み書店員さんたちが強力にオススメする1冊」というコピーは、実際に読んでみて妙に説得力がある。
帯裏には、「酒飲み書店員さん絶賛の声!」が紹介されているので、その中のいくつかを書き写してみよう。
●まるで高品質の駄菓子。笑撃の連打で哀愁を包んだ青春の軌跡!
(ときわ書房本店 宇田川氏)
●面白いけど、どこからかスッパイ臭いがしそうだよ!
(旭屋書店水道橋店 和泉沢氏)
●椎名誠 『哀愁の町に霧が降るのだ』 にハマッた人には特にオススメ!
(本の雑誌社 炎の営業 杉江氏)
椎名誠さんの 『哀愁の町に霧が降るのだ』 (略して、「哀霧」などと呼ばれていた)は、その昔読んだ記憶があるが、細かい内容は忘れてしまった。
ただ、たしかに、この本と雰囲気は似ていると思う。
著者の高野さんの年齢は、すこしいっているけれど、「青春記」だなあと思う。
この早稲田のアパート(野々村荘、ただし仮名らしい)で、高野さんは何冊かの本を書いたという。
うーん、こんなアパートで、という感もあるが、なにやら納得。
『幻獣ムベンベを追え』 (集英社文庫)
『巨流アマゾンを遡れ』 (集英社文庫)
『極楽タイ暮らし』 (ワニ文庫)
『ビルマ・アヘン王国潜入記』 (草思社)
以上、本書「あとがき」より。
高野さんは、早稲田大学探検部に所属し、しょっちゅう外国へ行っていて、大学の授業はあまり受けていないように見える(そのあたりのことは、あまり書かかれていない)。
だが、すごいことに、7年生で卒業したらしい。
「あとがき」によると、<私が奇跡的に卒業できたのは、コンゴでたまたま知り合いになった作家の小説を翻訳し、それが卒論として認められたから>だという。
エマニュエル・ドンガラ著 『世界が生まれた朝に』 (小学館)
読んでみたいが、絶版らしい。
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000019852332&Action_id=121&Sza_id=F3
世界が生まれた朝に
エマニュエル・ドンガラ/著 高野秀行/訳
出版社名 小学館
出版年月 1996年12月
ISBNコード 978-4-09-356041-2
(4-09-356041-2)
税込価格 2,039円
頁数・縦 287P 20cm
分類 文芸 /海外文学 /フランス文学
出荷の目安 現在ご注文できません
[要旨] 「マンクンク、おまえは破壊者だ!」「「力」と、「力」に敬意を捧げるタムタムをひっくり返す者」と運命づけられ、大河に、氏族の王に、植民地支配の異人に、そして、自分の社会そのものに挑んでいった永遠の革命児マンダラ・マンクンク。コンゴのとあるバナナ畑で孤独な生を受け、長じては偉大な“ンガンガ”(呪術師)となった男が、半世紀に及ぶ試練の旅を乗り越えて、最後に見たものは…。「知」と「力」を巡る現代アフリカの創世神話。人間の根源に迫るアフリカ大河小説。1988年のブラックアフリカ文学大賞を受賞。
ちょっと、興味ぶかい。
さいわい、近くの図書館にはあるので、読んでみようかな。
―小平市立図書館蔵書データより―
抄録 現代西欧文明の最高レベルの教養と、アフリカの思想を「百年の孤独」にインスピレーションを得て重層的に描いた作品。生まれながらにして光る目と聖痕を持つマンクンク、長じて偉大な呪術師となった男が最後に見たものは。
著者紹介 〈エマニュエル・ドンガラ〉 1941年コンゴに生まれる。中等教育を終えたのちアメリカ合衆国に渡る。物理学博士。プラザウィル大学教授。劇団を主宰するかたわら、小説も書いている。
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コメント
図書館に『ワセダ三畳青春記』はあったのですが、勿論帯なしでした。ドラマ「新橋烏森口青春篇」は今でも鮮明に覚えていますが、これ以降、椎名さんのものはあれこれ読みました。
『極楽タイ暮らし』もブック・オフでゲット!350円でしたが、我が家のダンナサマが数年後タイで暮らしたいとのたもうてはるので、まあいいかあと・・・。一緒に『図書館のある都市(まち)への旅』も。これは200円也。
国道1号線から渋谷(しぶたに)街道をまわって、道沿いで葱一束を百円で。もう、あちこち、桜が満開で、その中をゆっくり帰ってくると、老犬のお出迎えが待っていました。
前足でガラリ戸を開け「春や」犬
投稿: みやこ | 2009年4月 5日 (日) 13時35分
>みやこさん
>ドラマ「新橋烏森口青春篇」は今でも鮮明に覚えていますが、これ以降、椎名さんのものはあれこれ読みました。
私も一時期、椎名誠さんに、はまっていました。
NHKのTVドラマ「新橋烏森口青春篇」はビデオに録画して、いまも持っています。
奥さまの渡辺一技さんとの出会いや、木村晋介さん、沢野ひとしさんらとの交友が、よく描かれていましたね。
椎名誠役は、緒方拳の息子さん(直人さん)でした。
そちらも桜満開でしょう。
今日は、近所をぶらっと歩いて桜をたくさん見てきました。
小金井公園の桜まつりは、たいへんな人出のようですが、行きませんでした。
投稿: やまおじさん | 2009年4月 5日 (日) 15時48分
緒方直人も伊東四郎も、他の役者さんも役になりきっていて良いドラマでしたよね。また、観てみたいものです。
昨日の夕方、手紙を2通出しに行って、『ミャンマーの柳生一族』を近くの本屋さんで見つけました。ちょっと読んでみただけですが、期待にたがわず面白いですね。
こちらの小さな公園の藤棚の枝をよく見てみると、日当りの良いところから芽ぶいていました。
投稿: みやこ | 2009年4月 6日 (月) 09時24分
>みやこさん
船戸与一『カハーニーシルベナーク(河畔に標なく)』も、あわせてお読みになると面白いと思います。
私はいま、高野さんの処女作『幻獣ムムンベを追え』を読んでいます。
『極楽タイ暮らし』も、そのうち読んでみようと思っています。
投稿: やまおじさん | 2009年4月 6日 (月) 20時57分