【読】高野秀行さんの魅力
蔵前仁一 『ホテルアジアの眠れない夜』
(凱風社)
高野秀行 『異国トーキョー漂流記』
(集英社文庫)
続けて読んだ。
蔵前さんの本は、長く本棚で眠っていたもの。
期待していたほど面白くなかった。
このところすっかりハマっている高野秀行さんの著作、文体に慣れてしまったからだろうか、蔵前さんの今から20年前に出版された本は、少々もの足りなかった。
お行儀がよすぎるというか、ハメをはずさないというか。
もちろん、つまらない内容ではなかったが。
いっぽう、高野さんの 『異国トーキョー漂流記』 は、内容に関する予備知識ゼロで読みはじめた。
それがよかったのだろう。
私には新鮮な内容だった。
ここに詳しくは書かないが(まだ読んでいない人の楽しみを奪わないために)、高野さんの優しさを感じた。
この人は人間が好きなんだな、と、あらためて思う。
高野さんの著作の魅力は、その文体だと私は思う。
じつによく考え抜かれた上手な文章だ。
蔵前仁一さんが解説(『異国トーキョー漂流記』 集英社文庫書き下ろし)で、高野さんの魅力をうまくまとめているので引用する。
<さて、高野さんの本を読むたびにいつも思うことがある。 それは、冒険家でありながら冒険家らしい文章を書かないということだ。 普通の冒険記は、たいていの場合、自分がいかにすごい冒険をやったかが書かれているものだ。 あるいは、冒険家はつねに勇気ある立派な人として描かれている。 冷静沈着な判断力と勇気で危機を乗り越えられるからこそ冒険は成功するのだろう。>
<高野さんの冒険記は、いつもそこらか逸脱している。 脱線しているというか。 だから、アフリカ奥地を探検する理由としては、ちょっといかがなものか、というような怪獣探しが目的だったり、幻のシルクロードを探しに行った割には、単にビザの問題で帰国できなくなりそうになったり、アヘン栽培のルポにいったはずが、自らアヘン中毒にかかったり、いちいち間が抜けている。 全然立派な探検家じゃない。 冷静な判断力があるとも思えない。 とっちかというと成り行きまかせである。>
<だからこそ高野さんの冒険記はおもしろいんだと僕は思う。> (蔵前仁一)
3月18日から高野さんの著作を読みはじめて、かれこれ7冊読みおえた。
この人が翻訳した本(『世界が生まれた朝に』 エマニュエル・ドンガラ)を含めると8冊。
そして、これから読もうとしている、手元の7冊。
その表紙を並べてみよう。
これまで読んだ7冊 (私が読んだ順) +1
これから読みたい7冊 (順不同)
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コメント
あらあら、すっかりハマっていますね(^^♪
読む順番ですが「西南シルクロード」のエピソードが「ウモッカ」に繋がりますので、ウモッカはあとで詠んだほうがいいと思います。
「シンドバッド」には「ムベンベ」の完結編が掲載されていて、なかなか説得力のある内容になっています。
今「怪獣記」を探しているのですがなかなか見つかりせんorz
投稿: こまっちゃん | 2009年4月29日 (水) 00時40分
>こまっちゃん
『ウモッカ』は昨日の帰りがけに買って、プロローグだけ読みました。わりと新しい本なので後まわしにします。
とりあえず『シンドバッドを』読もうかな。
『異国トーキョー』に、おもしろい中国人の先生がでてきて愉快でした。
私はe-honというネットサイトをよく利用しています。
近くの本屋で受け取ることができて、送料無料なのが嬉しいです。
『怪獣記』(講談社・2007年)は、e-honだと数日で入手可能ですが、私はこれ以上買うのはしばらく控えようかと(この勢いだとどうなるかわかりませんが)。
投稿: やまおじさん | 2009年4月29日 (水) 07時19分