【読】読んでいます
『百年の孤独』 (ガブリエル・ガルシア=マルケス) が引き合いにだされていたので、さぞかし難しい小説かと思っていたが、まったくそんなことはなかった。
読みやすく、おもしろい。
高野さんの訳文もいい。
280ページほどの本文の、200ページまで読みすすんだ。
『世界が生まれた朝に』
エマニュエル・ドンガラ 著/高野秀行 訳
"Le feu des origines" by Emmanuel B. Dongara, 1987
小学館 1996/12/10発行 1942円(税別)
ストーリーがすっきりしていて、登場人物もわかりやすい。
ただし、描かれている世界が、アフリカ コンゴの住民たちの、私たちの日常からかけ離れている。
そこが面白い。
― 訳者あとがき より ―
<……ドンガラは、ローカル性と普遍性を実にうまく利用している。 最も顕著な例は、原始共産性から貨幣経済の導入、十九世紀型の帝国主義、そして現在の民主化問題を問う時代まで、言ってみれば人類が何千年もかけて昇ってきた文明の諸段階を、一人の人間が一生にうちに全部体験してしまうという設定である。 こんなことはアフリカのコンゴを舞台としないかぎり不可能な話だ。……>
主人公は マンダラ・マンクンクという、バナナ畑で産みおとされた男。
青緑色の目をもつ、いわば異能者である。
彼が生まれた部族社会は、まさに「原始共産性」的で、その社会にとつぜん西欧文明(近代帝国主義)の波が襲い、急激な変化にみまわれる。
このあたり、被征服民族の悲哀は、アイヌ民族を思いおこさせる。
武力による支配、略奪と虐殺、そして言葉巧みな交易を装った収奪……。
時期こそ、日本列島北端の島で繰り広げられた頃よりすこし下るが、アフリカ大陸を舞台に同じような歴史が繰り広げられていたのである。
第二次世界大戦ではフランス軍に徴用されて欧州戦線でドイツ軍と戦い、その後、ベトナムでのフランスの戦い(ディエン・ビエン・フーの戦い)にもたくさんの兵が駆りたてられる。
そんな苦難の歴史も、この小説に描かれている。
【参考】
コンゴ共和国 ― Wikipedia より ―
コンゴ共和国(コンゴきょうわこく)は、中部アフリカに位置する共和制国家。東にコンゴ民主共和国、北にカメルーンと中央アフリカ、西にガボン、南アンゴラの飛地カビンダと国境を接している。首都はブラザヴィル。
二つのコンゴとアンゴラは15世紀頃まではコンゴ王国として一つだったが、ポルトガルによる征服を経て19世紀にベルギー領(現在のコンゴ民主共和国)とフランス領(現在のコンゴ共和国)に分けられた。
1903年 中央コンゴと呼ばれるようになる
1910年 フランス領赤道アフリカの一部となる
1946年 フランス議会に議席を獲得
1958年 フランス共同体内の自治共和国になる
1960年 コンゴ共和国として正式独立
1968年 憲法を改正
エマニュエル・ドンガラ
― 本書 著者紹介 より (1996年日本語訳出版当時) ―
1941年、コンゴに生まれる。 中等教育を終えたのち、アメリカ合衆国に渡り、物理学を学ぶ。 物理学博士。
現在はブラザヴィル大学教授。
最初の小説 『手には銃を、ポケットには詩を』でラディラス・ドルマンディ賞を受賞。 また、コンゴで最も有名な劇団 “Theatre de l'Eclair” を主宰し、自作の戯曲のほか、サルトルから三島由紀夫にいたる幅広い作家の作品を上演している。
弟が日本に長期留学していた関係で、しばしば日本を訪れており、コンゴを代表する親日家でもある。
なお、本書 『世界が生まれた朝に』 は、1988年のブラックアフリカ文学大賞を受賞。 ヨーロッパ各国でも絶賛され、原版のフランス語のほか、ドイツ語、スペイン語、デンマーク語、ノルウェー語に翻訳されている。
また、近くアメリカで英語版が出版される予定。
高野秀行オフィシャルサイト
http://aisa.ne.jp/takano/
訳書紹介 『世界が生まれた朝に』
http://aisa.ne.jp/takano/books_page/dongala.html
訳者から一言
<主観的にはアフリカ文学の最高峰、客観的に見ても五指には入る名作である。
原書のフランス語のほか、英語、ドイツ語、スペイン語、デンマーク語、ノルウェー語など世界中で翻訳されている。
最初の1ページだけ堅くて読みにくいが、2ページ目からはすごく平易な文章になる。 立読みですぐ断念なさらぬよう。
メリハリの利いたストーリーと詩情に満ち満ちた文体が感動的で、読み出すと止まらない。
もちろん、訳文も冴えている!?>
高野さんのブログも面白そうだ。
辺境・探検・冒険ブログ MBEMBE ムベンベ
日本を代表するエンタメ・ノンフ辺境探検作家、高野秀行のオフィシャル・ブログ
http://www.aisa.ne.jp/mbembe/
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コメント
さっきのコメントの訂正です。メコンデルタとしてしまったけれど、メコン川でした。(ああ恥ずかしい・・・)。
スプレー号世界周航記は、アーサー・ランサム全12巻を彷彿とさせるのです。(ランサムが愛読したと思います)
初夏なのに、森田童子「早春にて」「ニューヨークからの手紙」(揺れる菜の花・・・」など、くちずさみながら。
投稿: みやこ | 2009年4月22日 (水) 10時14分
>みやこさん
今日、読みおえました。
そしてまた、高野さんの本を二冊購入・・・。
こんなにハマったのは、椎名誠サンいらいかも。
森田童子、残念ながら私は聴いたことがないんです。
山崎ハコさんと並べられることが多いようですが、今度、聴いてみましょう。
投稿: やまおじさん | 2009年4月22日 (水) 21時00分