【読】高野熱、続く
高野秀行さんの本を、続けて読んでいる。『辺境の旅はゾウにかぎる』 高野秀行
本の雑誌社 2008/6/25
253ページ 1500円(税別)
軽いエッセイと対談、それに書評を集めたペーパーバック。
対談相手は、角田光代、井原美紀、内澤旬子、船戸与一、大槻ケンヂという面々。
井原さんと内澤さんは、わたしの知らない人だが。
「辺境読書 エンタメ・ノンフ+・ブックガイド」 と題された書評も興味ぶかい。
冒頭の50ページほど読んだところだが(「ケシの花ひらくアジアの丘」)、期待にたがわず面白い。
たとえば、ミャンマー(ビルマ)での体験記に、ちょっと驚いてしまった。
ヤンゴンで床屋をみつけて髪を切ってもらおうとしたところ、店の兄ちゃんから「ガソリンを買いに行くからちょっと待っていてくれないか」と言われた話。
そのワケはここに書かないけれど(ネタバレになるから)、高野さんはこう書いている。
考えさせられる。
文脈を無視して引用すると――
<…ミャンマーにいると、物事のつながりがよくわかることに気づいた…/…日本ではどうなのか。電灯をつけるにもバリカンをつかうにもスイッチ一つだ。 スイッチを押しさえすれば、すべて片付くと思い込んでいる。 そのスイッチの向こうにいったい何があるのか、考えてみることさえない。>
「アヘン王国脱出記」 のドタバタも、何やらおかしく、これまた考えさせられる話だ。
アジアはほんとうに面白い。
ところで、今日たまたま入ったBOOK OFFでみつけてしまった。
昨日書いた、吉田敏浩さんの本だ。
BOOK OFFの書棚分類は、整理されているようで、あんがいいい加減なのだが、歴史だか地理だかのコーナーで、まったく偶然に目にとまったのがこの本。
「本との出会い」の不思議。
なんといっても、昨日の今日のことだもの。『森の回廊 ―ビルマ辺境民族解放区の1300日―』
吉田敏浩 NHK出版 1995/9/20発行
494ページ 2500円(税別)
きのう画像を載せたNHKライブラリー版(大き目の文庫サイズ)は再販で、このハードカバーがオリジナル版だ。
(第27回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞)
すでに絶版となっているこの本が、定価のほぼ半額で入手できた。
しかも、古書店に入って数分後に目に飛び込んできたのだ。
図書館から借りると返却期限に追われるようで、かえって読めなかったりするのだが(途中であきらめたりする)、手もとにあればしめたもの。
と言いながら、「積んどく」本がたまっていくのも事実だが……。
― e-honサイトより ―
吉田 敏浩 (ヨシダ トシヒロ)
1957年、大分県臼杵市に生まれる。1981年、明治大学文学部卒業後、フリーのジャーナリストに。現在、フリーのジャーナリスト集団「アジアプレス・インターナショナル」に所属。1977年にビルマ・シャン州の解放区を訪れて以来、ビルマ、タイ、アフガニスタン、インド、バングラデシュなど、アジアの諸民族の世界を訪ねる。1985年3月から88年10月まで、ビルマ北部のカチン州、シャン州へ長期取材。その記録をテレビ番組「回想のジャングル」(NHKスペシャル:1989年6月18日放映)で発表する。『森の回廊』で1996年に、第27回・大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。著書に『宇宙樹の森』(現代書館)、『北ビルマ、いのちの根をたずねて』(めこん)、『生命の森の人びと』(理論社)がある。共著に『アジア大道曼陀羅』(現代書館)、『世界の民・光と影』(明石書店)などがある。
高野さんの 『辺境の旅はゾウにかぎる』 のおしまいのほうに、こんなことが書いてある。
(書評 「探検部のカリスマは最上のペテン師だった ―― 『流木』 西木正明」 より抜粋)
<突然だが、世間に名の知れたマスコミ・出版関係者の名前をいくつか挙げてみる。
本多勝一/関野吉晴/吉田敏浩/高山文彦/長倉洋海/星野道夫/惠谷治/船戸与一/西木正明
年も仕事も志向性もまったく異なる九名だが、彼らには一つだけはっきりした共通点がある。 なんだか、おわかりだろうか。
「行動派」「硬派」「辺境をテーマにしている」「冒険的」……。
どれも近い。だが、もっと具体的な共通点というか共通体験がある。>
さて、正解は?
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コメント
イラストルポライター ルポライター イラストレーター 造本業、装丁屋(いまは事実上休業中)となっています むかし編集した本の装丁で何度か会ったことがあります いまのように「メジャー」でなかったころですが ともかく絵がイラストがいいという印象でした たまにブログを読んだりします
http://kemonomici.exblog.jp/
いっちゃんなら『印刷に恋して』『「本」に恋して』などがいいんではないでしょうか
投稿: uji-t父 | 2009年5月23日 (土) 00時00分
>uji-t父さん
お知らせ、ありがとう。
どれも、面白そうですね。
内澤旬子 空礫絵日記
http://kemonomici.exblog.jp/
『「本」に恋して 』
松田哲夫/著 内沢旬子/イラストレーション
新潮社 ISBN 978-4-10-300951-1
『印刷に恋して』
松田哲夫/著
晶文社 ISBN 978-4-7949-6501-1
投稿: やまおじさん | 2009年5月23日 (土) 06時46分
『おやじがき 絶滅危惧種中年男性図鑑』
内沢旬子/絵と文
にんげん出版
ISBN 978-4-931344-22-8
これが面白そうです。
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032166324&Action_id=121&Sza_id=C0
投稿: やまおじさん | 2009年5月23日 (土) 06時52分