【読】高野さんの語り口
高野秀行さんの本を、次々と読んでいる。
最近読んだ、『巨流アマゾンを遡れ』(集英社文庫)の巻末解説(浅尾敦則さん)に、高野さんの魅力が的確に書かれていた。高野秀行 『巨流アマゾンを遡れ』
集英社文庫 2003/3/25発行
261ページ 514円(税別)
私は、以前このブログで、高野さんの文体がいい、と書いたことがある。
浅尾敦則さんの巻末解説では、「文体、というよりも語り口」がいいのだ、と書かれていて、なるほどと頷かされた。
― 本書巻末解説 (浅尾敦則) より ―
<(前略)いったい彼の本の何が私をそこまで狂わせて……ではなく、魅了しているのだろうか。/まず第一に挙げられるのはその語り口だろう。 文体ではなく、「語り口」である。彼の本は、本であるからには当然文字で書かれているわけだが、その文章はほとんど語り芸に近いものといっていい。>
そうなのだ。
すっかり高野秀行中毒になってしまった私も、高野さんの魅力がどこからきているのか、うまく表現できなかったが、「語り芸」と言われて思わず膝を打った。
浅尾さんの解説をもう少し引用しよう。
<(前略)ひと口に語りといっても、そこにはいろんな要素が混在している。(中略)舞台となっている地域の歴史的背景や少数民族事情などが知らず知らずのうちに理解できて勉強になるという点では、ちょっと講談に似ている。また、語り手のリズムに読者を強引に引きずり込んでいつのまにか感覚をマヒさせてしまう、呪術的といってもいいくらいの被共振力はあたかも阿呆陀羅経的である。/そして彼が語る物語の中身はというと、これはもう落語以外のなにものでもない。>
「被共振力」というのは聞き慣れない言葉だが、「阿呆陀羅経的」と言われれば、そうかもしれない。
「落語以外のなにものでもない」 ―― よくぞ言ってくれた。
今日から、ハードカバーのとても魅力的な本を読みはじめた。
真打ち登場、といったところか。
高野ワールドにどっぷり浸かっている。高野秀行 『西南シルクロードは密林に消える』
講談社 2003/2/25発行
367ページ 1900円(税別)
<中国・成都からビルマ北部~インド・カルカッタまでの古代通商路。/それは謎にみちた最古のシルクロードと言われている。/戦後、世界で初めて、この地を陸路で踏破した/日本人ノンフィクションライターが見たものは?/ジャングルの自然、少数民族、ゲリラたちと織りなす、/スリルとユーモアにあふれる奇想天外な辺境旅行記。>
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コメント
高野氏の語り口ですが、作家の清水義範さんの語りに似ているような気がします。
投稿: こまっちゃん | 2009年5月11日 (月) 23時23分
>こまっちゃん
清水義範さんの本は読んだことがありませんが、この「西南シルクロード」踏破の旅というか、無茶苦茶な行路はたまらなく面白いですね。
投稿: やまおじさん | 2009年5月13日 (水) 21時54分
>無茶苦茶な行路はたまらなく面白いですね。
高野さんの場合、旅の目的としては最終的に失敗であっても読み物としてはOKなことが多いのですが、この本の結末はまさにそれです。
そういう意味ではアマゾンの方は目的の山まで到達していないことは旅的にも読み物的にも物足りなかったです。
別の人がミスミ山まで行ったことを本に書いているだけに残念でした。
投稿: こまっちゃん | 2009年5月13日 (水) 22時31分
>こまっちゃん
『西南シルクロード…』残すところあとわずかです。面白いですね。
『アマゾン』は、たしかに最後が残念でしたが、元々ガイドブックに書かれた文章らしく、高野さんにしてはクールな語り口でそれなりに面白かったです。
概して、ハズレのないのが高野さんの本です。
いやあ、いい作家に出会えました。
投稿: やまおじさん | 2009年5月14日 (木) 21時31分