【読】サバイバル登山 (続)
通勤電車・バスの中で、二日間で読みきった。
後味のいい本だった。
第一章 登山からサバイバルへ
第二章 サバイバル実践 ――日本海から上高地へ
第三章 サバイバルの方法論
第四章 サバイバル思想
私には、第二章、北陸本線「青海」(おうみ)駅から上高地まで、徒歩で北アルプスを縦断した12日間の記録がたまらなく面白かった。
登山道をたどるのではなく、道がないと仮定して、渓谷づたいに歩き続ける、まさに「サバイバル登山」である。
食料は現地調達(岩魚を釣り、山菜を採る)、焚き火、野宿。
沢登りのバリエーションと言えなくもないが、現地調達が基本だから、渓流釣りで動物性蛋白質を現地で手に入れるスタイルになる。
笑ってしまうようなユーモラスなエピソードがあちこちにあって、ほんと、面白かったな。
読むまえに私は勝手に、もっと原始的な山歩きかと思っていたが、必要最小限の装備は持っている。
雨露をしのぐためのタープと寝袋といった「近代装備」を使っていることも意外だったが、その理由も第三章に詳しく書かれていて納得できた。
道具の大切さがよくわかる。
私にはとうてい真似のできない山行スタイルだが、山恋しさが募ってくる内容だった。
星野道夫さんのことに、さりげなく触れているあたり、ああ、この人も星野さんが好きだったんだなあと、嬉しくなった。『サバイバル! ――人はズルなしで生きられるのか』
服部文祥 ちくま新書 751
2008/11/10発行 254ページ 760円(税別)
<このサバイバル山行記に何度も出てくるゲストという言葉。「お客さん」。ズルしないで登る、ズルしないで生きる。それは自分が人生の主になれるか、ということだと思う。 現代の日本で普通に生きていたら、お客さんにならないで過ごすのは難しい。 おおよそのことはお金を払えば解決し、いくつかのことはお金を払わなければ解決しない。 毎日のように乗客、買い物客、食事客、患者などなど、気がつくとわれわれはさまざまなお客さんをやらされている。 人生はお金を払えばそのまま進んでいく。 人生はお金を払えばそのまま進んでいく。 今は、お金を稼いで、お客さんをするのがわれわれの世界のサバイバルなのだ。>
<本来自分ですべきサバイバルの主要事項「衣・移・食・住・治」を金銭で解決するわれわれ都市生活者は、気づかないうちに悲しい卑怯者をやらされているのではないだろうか。> (本書 P.138-139)
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