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2009年6月25日 (木)

【読】朝、一時間の読書タイム

朝、体調の良いとき、最寄りの国分寺駅ではなく、ひとつ新宿よりの武蔵小金井駅から始発電車に乗る。
電車が到着するまでホームに行列して待たなければいけないが、早めに行けば必ず座れる。
総武線各駅停車で、錦糸町駅までたっぷり一時間。
途中で居眠りしてしまうこともあるが、ゆっくり本が読める「読書室」のようなものだ。

今朝は、この電車の中で平岡泰博著 『虎山へ』 (集英社)を読了。

Hiraoka_kozan『虎山(こざん)へ』 平岡泰博 著 集英社
 2003/11/22発行 262ページ 1600円(税別)

ひさしぶりに、さわやかな本に出会ったと思う。
著者の平岡さんは、関西テレビの映像カメラマンだった。
沿海州に住むシベリヤタイガーを追う番組の取材で、この広大な地域を苦労して歩きまわる。

<1996年7月24日午後、ロシア沿海地方(プリモルスキー)の州都ウラジオストクを出発した僕らは、沿海地方中部にあるシホテ・アリニ自然保護区を目指した。 七百キロの旅。 車は二台。 一行は自然保護区の山中に住むシベリアトラを追跡し、撮影しようというテレビチームである。>

平岡さんとコンビを組む、地元のレンジャーである、ヴィーチャという男が魅力的だ。

<その夜、僕らは一人の男に会った。
一メートル九十、百キロはあろうかという大男だ。 がっしり引き締まり、均整のとれた四十半ばの男である。 鳶色の瞳と黒髪。 頬のひげは青々と剃られている。>

ヴィクトル・ヴォローニン(愛称ヴィーチャ)は、1951年、ウクライナ生まれ。
なんと、私と同い年だ。
「黒海沿岸のステップ(草原地帯)で少年時代を過ごし」、「大自然のなかで、ノロ(シカの一種)やノウサギを友とする孤独な子供」だった。
レニングラード(現サンクト・ペテルブルグ)の美術学校に入って画家への道を目指したが、挫折。
シベリア鉄道に乗って極東に向かい、故郷を遠く離れたこの地で二十年間、レンジャーとして過ごしている。

彼の自然に対する感覚は、あたかも、百年前のデルスウ・ウザーラのようだ。
地元のレンジャーたちでもめったに遭遇できない、シベリアタイガーに出会い、映像に収めることができたのも、このヴィーチャの力によるものだった。


映像カメラマンらしい細やかな観察と、広大な自然の描写がすばらしい。
「凍寒(マローズ、とルビをふっている)」という言葉が、頻繁にでてくる。
著者とヴィーチャが虎に出会うことができたのは、11月29日だった。


さて、往路の電車の中で、持っていった本を読んでしまったので、もう一冊、念のために鞄に入れていた本にとりかかった。
ずいぶん前に買って、なかなか手をつけられなかった二巻ものだ。


Bear_attacks_1『ベア・アタックス』 スティーヴン・ヘレロ 著
 嶋田みどり・大山卓悠(たかはる) 訳
 北海道大学図書刊行会 2000/9/20発行
 全二巻 各2400円(税別)

 BEAR ATTACKS
  Their Causes and Avoidance
 Stephen Herrero  1985

星野道夫さんが亡くなる前にアメリカで出版されていた本。
星野さんの書斎にも残されていたという(彼が読んだかどうかは不明)。

日本語版刊行にあたって、著者みずから補章を書き下ろし、「日本語版によせて」という巻頭の文章で、次のように星野さんを偲んでいる。

<1996年、極東ロシアのさらに遠隔の地カムチャツカ半島の南端で、私にとっては世界最高の写真家だった男、〝星野道夫〟がヒグマに殺された。 星野道夫氏はそのユニークな才能で、アラスカの広大なツンドラや沿岸地方の自然構成物のひとつとして、野生のクマをとらえた。 彼の写真からは、クマや、クマが生きる野生のままの自然環境への深い理解が伝わってくる。 およそ20年間にわたって、彼は毎年何ヵ月も自然のなかで暮らし、グリズリー(ヒグマ)やムース(ヘラジカ)のような危険を秘めた動物にそっと近づき、事故に遭うこともなく、優れた写真を撮りつづけた。 彼がこれらの動物たちをよく知り、理解していたからできたことだ。
 その彼が、なぜクマに殺されたか? その答は、悲しいことに、星野氏を殺したクマは、彼が愛した、まだ人間によってそこなわれていない野生のクマではなかったということだ。 (以下略)>

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