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2009年6月11日 (木)

【読】サバイバル登山

Takano_kaijuuki高野秀行さんの 『怪獣記』 は昨日読了。
クルド民族のことが詳しく書かれていて、興味ぶかかった。
ジャノワールと呼ばれるUMAを探索しに行った場所、トルコのワン湖一帯は、クルド民族の居住地ということだ。

さあ、次に何を読もうか、と迷って、今朝出がけに決めたのが服部文祥(はっとり・ぶんしょう)さんという人が書いた 『サバイバル!』 という新書だ。
これまた高野さんが  『辺境の旅はゾウに限る』 (本の雑誌社 2008年)掲載の書評でとりあげていた著者の本である。
高野さんが書評でとりあげていたのは 『サバイバル登山家』(みすず書房)だが、これはいずれ入手予定。
図書館から借りようかとも思ったのだが、ずっと貸出中だし、いっそ手元に置きたいと思うほど魅力的な本だから。


今日から読んでいるのがこれ。

Hattori_survival_2_4『サバイバル! ――人はズルなしで生きられるのか』
 服部文祥(はっとり・ぶんしょう)  ちくま新書
 2008/11/10発行  254ページ 760円(税別)

著者はこういう人だ(同書カバーの著者略歴)。
服部文祥(はっとり・ぶんしょう)
サバイバル登山家。1969年横浜市生まれ。
94年に東京都立大学文学部フランス文学科とワンダーフォーゲル部を卒業。
96年にカラコルム・K2(8611m)登頂。
デビュー作 『サバイバル登山家』(みすず書房)でスポーツ・ノンフィクションの新たな地平を拓き、脚光を浴びる。
現在は、東京新聞出版局の「岳人」編集員。
三児の父。

「フランス文学科とワンダーフォーゲル部を卒業」というのが何やら可笑しく、「三児の父」というのも、ほのぼのしていて良いが、この人のやっていることはすごい。

<日本海から上高地へ。200kmの山塊を、たった独りで縦断する。持参する食料は米と調味料だけ。岩魚を釣り、山菜を採り、蛇やカエルを喰らう。焚火で調理し、月の下で眠り、死を隣りに感じながら、山や渓谷を越えてゆく――。生きることを命がけで考えるクライマーは、極限で何を思うのか?……> (本書カバー裏)

出版人だけあって、文章がとてもいい。
自分を客観視でき、ユーモアのセンスもあって、読んでいてほんとうに気持のいい本だ。

なによりも、私が長らく忘れていた山の空気が感じられて、うれしくなる。
もちろん、この人のように極限的な山歩きは私にはできないけれど、わたしもかつて 「登山者」 のはしくれだった。
(事実上、現役をなかば引退してしまっているのが悲しいが……)
著者の心意気はとてもよくわかる。

<現在、山には三種類の人間がいるといわれている。登山客、登山者、登山家である。 登山客とは山岳ガイドの客、山小屋の客、場所は山だけどやっていることは観光客、を指す。 連れてきてもらっている人々、登山の要素の多くを他人任せにしている人々のことだ。>

――と、なかなか手厳しいが、私も同じことを感じる。

<登山者とは山にまつわるできる限りの要素を自分たちで行ない、その内容にも自分で責任を持つ人々のことである。 自分で何もかも行なうというのは面倒くさい。 だが、真の自由とは自立のなかにしか存在しない。 登山者とは自立した自由なる精神を、そのリスクを含めて知っている人のことである。 登山家は登山者のなかでも登山関係で生活の糧を得ていたり、登山の頻度と内容からして、人生のほとんどを登山に賭けてしまっているような人のことをいう。>

<登山者も登山家も夏の北アルプスでは絶滅危惧種だ。……> (本書 P.89)


私も、できることなら 「登山客」 ではなく、「登山者」 としての心意気を持ち続けたいと思う。

今日一日で100ページほど読めた。
快調。
こういう本を、満員の通勤電車という自然からもっとも遠い最悪の場所で読んでいると、救われる気がする。

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コメント

サブタイトルの「人はズルなしで生きられるのか」というのは、どういう結論になるのかなと好奇心を覚えました。サバイバルとは極限的状況だろうから、ズルでもなんでもありかもしれないし・・・。でも「ズルしなくても生きられる」というほうが意外性があって清々しいし新鮮だし。「ズル」自体も、なんだか???で、ああ頭の中が混乱・・・。
 上々タイフーン(漢字が打ち出せないので)のCD2枚を図書館から借りています。ライブに行きたくなります!
Hampton Hawesも入院中によく聞いていました。好奇心を刺激する情報をありがとう!

投稿: みやこ | 2009年6月11日 (木) 22時47分

>みやこさん
その後、いかがですか?
上々颱風、私は「しゃんしゃん」という読みで単語登録しています。
関西でもライブはありますので、ぜひ一度、お運びになってはいかがでしょうか。

服部さんが言う「ズル」の意味は、私の理解では、例えば機械力を使って作られた登山道を楽に歩くことや、文明の利器をたくさん登山に持ち込むこと、を指すようです。
つまり、サバイバル登山とは、できる限りシンプルなスタイルの登山(山歩き)を目指すということでしょうか。
・・・こんな説明では、かえってわかりにくいかもしれませんが。
この本は、おすすめです。
とくに、山歩きをする人には。

投稿: やまおじさん | 2009年6月11日 (木) 23時00分

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