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2009年7月19日 (日)

【山】危険なツアー登山(続)

7月16日(木)におきた北海道(大雪山系トムラウシ山)の遭難事故について、もう少し書いておきたい。
いずれ山岳雑誌などで詳しく検証されるだろうが、私なりに考えてみたいのだ。


まず、報道では10人死亡となっているが、これは美瑛岳という別の場所、別のパーティーで亡くなった一人と、同じトムラウシ山でも別行動の単独登山者一人の死者をあわせた数字である。

美瑛岳の事故は、ガイド三名、ツアー客三名(女性ばかり)という少人数のツアー登山と報道されている。
登山客一人にガイド一人という構成なのに、死者がでたという信じがたいもので、これはこれで別に検証されなければいけないだろう。

私が気にしてきたのは、ツアー客十五名とガイド四名の縦走パーティーのうち、八名(うちガイド一名)が死亡した事故の顛末だ。
(ガイドの人数についても、報道では三人となっていたりするが、当初から四人のガイドがついていて、一人は最終宿泊地のヒサゴ沼避難小屋に残ったため、遭難時には三人になっていたというのが真相)


遭難の状況

【朝日新聞 7/18朝刊1面より】
<道警などによると、パーティーは50~60代の客15人(男性5、女性10)と男性ガイド4人の計19人だったが、ガイド1人が事故前夜に泊まったヒサゴ沼避難小屋に残ったため、遭難時は客15人に対し、ガイド3人になっていた。/18人は16日午前5時半ごろ避難小屋を出発。昼前にはトムラウシ山頂に近い北沼付近で女性1人が低体温症で歩行困難となり、ガイド1人が付き添うことになった。/残る16人でしばらく進んだが、さらに男女4人が体調を崩すなどして進めなくなり、ここにもガイド1人が残ることになった。5人はテントを張って野営した。/この段階で、本隊はツアー客10人に対し、ガイド1人の11人。一行は下山を試みたが、ガイドが午後3時54分に5合目の「前トム平」から110番通報した内容は「ガイド1人、客2人の計3人がいます」というもので、ツアー客8人の行方を把握できなくなっていたという。>

Asahi_shinbun_20090718_2 (同朝刊一面に掲載された図より)
ツアー客とガイドが発見された位置
北沼  7人発見 4人死亡
トムラウシ山南  1人死亡
南沼キャンプ指定地  1人死亡
前トム平  3人発見 2人死亡
コマドリ沢分岐  1人発見
トムラウシ短縮コース登山口  自力下山2人
同付近  自力下山1人
トムラウシ温泉(到着予定地)  自力下山2人



私が思うこと

パーティーがちりぢりになり、具合の悪くなった人が次々と脱落してその場に残り、下山できる人が下山していった様子がうかがわれる。
ガイドのリーダーシップがまったく発揮されていないこともわかる。

別の記事によると、助かった人の談話として、「ガイドがどんどん下りていってしまって、追いつけなかった」というものもあった。
このあたりの詳細な状況は、正確な情報がないためなんとも言えないが、最初の一人が動けなくなった時点でのリーダー(ガイド)の判断、行動はどうだったのか?というところが引っかかる。
この時点で、もっと適切な判断ができたのではないのだろうか。
よくわからないのは、「北沼 7人発見4人死亡」と書かれているこの地点で、パーティーの半分近くが歩行困難になっていたと思われるのに、なぜ、パーティーを分断して下山を急いだのか、だ。

救助を求めるためだったとしたら、持っていた携帯電話を使う方がどう考えても得策だ。
(携帯電話は通話可能だったという報道もある)
http://www.asahi.com/national/update/0719/TKY200907180336.html
 asahi.com
 ガイド、山頂付近で救助求めず 遭難事故、携帯は通話可
 2009年7月19日3時0分

結果的に5人が自力で下山できたが、もっと死亡者が増えていた可能性もある。
すでに登山パーティとして体をなしていないし、見知らぬ者が集まった公募ツアー・パーティーならなおさらのこと、リーダーの判断で集団行動をとって助け合うことが必要だったのではないか。

ヒサゴ沼避難小屋まで戻るのが難しかったとしても、体力に余裕のある人だけでも避難小屋に戻し、動けない人はテントを張ってビバークさせ、その場から携帯電話で救助を求めることもできたと思う。
しっかりしたガイドなら、そうしていたのではないか。
(当時の現地の状況がわからないが、不可能な選択ではないと思う)


遭難の直接原因(死因など)

【東京新聞 7/19朝刊27面より】
<中高年の登山客ら十人が死亡した北海道・大雪山系の遭難事故で、道警は十八日、八人の死者を出したトムラウシ山でのツアーを主催した「アミューズメントトラベル」(東京都千代田区)の安全管理に問題があったとみて、業務上過失致死の疑いで本社と札幌営業所を家宅捜索した。/八人は旭川医大で司法解剖した結果、全員が低体温症による凍死だったと判明した。救助にかかわった自衛隊員は「彼らは夏用のシャツで特別な防寒具は持っていなかったようだ」と証言。事故当時、現場では雨と強風が吹いていたことから、防寒対策の不備が死につながった可能性も指摘される。>

【参考サイト】
どうしんウェブ 北海道新聞
 トムラウシ遭難 全員凍死 防寒具不備か ツアー会社本社も道警捜索
  (07/18 21:21、07/19 08:28 更新)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/178011.html


今回もまた、衣類装備の問題がでてきた。
7月のこの時期といえば、梅雨明けで暑いという感覚がどうしてもある。
山慣れた人でも、3000メートル級山岳(北海道の2000メートル級山岳はこれに相当するのは常識だ)の、悪天候時(雨と強風)の気温に対する想像力が弱い。
下界なら綿のTシャツ一枚でも暑いくらいだが、悪天候の山岳では、オーロン系の水を吸わない素材の下着やシャツ、フリースのジャケット、ゴアテックス系の雨具が必携だと思うのだが、今回はどうだったのか。
少なくとも、主催者からそこまでの事前注意があったようには思えない。

もちろん、こういう個人装備は「登山者」ひとりひとりが判断して、自己責任で準備すべきものだ。
観光ツアーのようなやり方の悪い面が、はっきり結果に出てしまったように思えてならない。

つまり――
 1.リーダー(ガイド)による参加メンバー(登山客)の装備の事前(出発前)チェック
 2.参加メンバーの体力、経験度の把握
が、どれほどなされていたか。

2については、寄せ集めパーティーの場合は難しい(ほとんど不可能)かもしれないが、登山口に到着した後、旭岳温泉で一泊しているのだから、ガイドと客のあいだでコミュニケーションをはかることで、ベテラン・ガイドならある程度把握できるのではないのか。
また、登山行動中の観察によって、登山客の技量やクセなども把握できると思うのだが……。


以上、私は山岳ガイドでもなんでもなく、ガイドされたことがある自分の経験・知識から勝手なことを書いたかもしれないが、こういう事故を再発させないためには、具体的に考え、行動していかないとどうしようもないと思うので、あえてぐだぐだと書いた。

最後に、これを言ってしまうとオシマイという気もするが、そもそも今回のツアーは登山口を出発する時点で中止すべきものだったと思う。
さらに言えば、計画そのものがダメだった。
日程に余裕がないばかりか、一日の行動時間が長すぎる。
いつも山行を共にしている山慣れた人たちだけの少人数のパーティーならいざ知らず、一般公募で集まった15人ものお客(それぞれ登山経験があるにしろ)を連れて歩く行程ではないと思う。
まして、悪天候にあうことを想定しておかなければ、このようなツアーは成り立たない。


「自然が牙をむいた」 というような新聞見出しをみるたびに、腹立たしくなる。
たしかに、この時期としては考えられないほどの低気温という最悪の気象状況だったようだが、この遭難は人為的ないくつものミスがひきおこした山岳事故と考えるべきであろう。
想定外の状況でもなんでもなく、防ぐ(発生させない)ことがじゅうぶん可能な事故だったと私は考えている。

61歳のガイドさん一人を含め、亡くなった方々を哀悼し、この方々の犠牲を無駄にしたくないという強い思いから書いた。
論旨にまとまりがないのは、お許しいただきたい。


【その他参考情報】
ネット記事は多数あるが、下記サイトの情報がよくまとまっていて有用と思う。
ヒサゴ沼避難小屋の混雑状況など、私が考え及ばなかった問題もあるようだ。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/disaster/090717/dst0907172225021-n1.htm
 【北海道遭難】雄大な自然にひそむ危険、悪条件重なれば… - MSN産経ニュース
 2009.7.17 22:22

http://sankei.jp.msn.com/affairs/disaster/090717/dst0907171310014-n1.htm
 【北海道遭難】雨と強風…北の高山 日本アルプス並みの低温  - MSN産経ニュース
 2009.7.17 13:08

http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2009071902000140.html
 中日新聞:防寒具持たず、死因は凍死 大雪山系遭難:社会(CHUNICHI Web)
 2009年7月19日 朝刊

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コメント

山日誌、危険なツァー登山読ませていただきました。多方面から情報収集、分析、コメントされており大変勉強させていただきました、ありがとうございました。

投稿: 高原正雄 | 2009年7月22日 (水) 15時21分

>高原正雄さん
コメントをお寄せいただき、ありがとうございます。
この遭難に関する新聞記事も、そろそろ終息してきたようです。山岳雑誌の特集を待ちたいと思います。

それにしても、とても行動できそうもない悪天候のなか、下山を強行したことが悔やまれます。
日程に余裕のないツアー登山の問題は、これからも議論されるべきだと思います。

投稿: やまおじさん | 2009年7月22日 (水) 21時28分

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