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2009年8月21日 (金)

【読】暑い夏の読書

毎日暑くて、本もなかなか読めない。
お盆休みのあいだ電車もすいていて、国分寺駅からいきなり座れたりして良かったのだけれど、本を読みはじめてもすぐに眠くなってしまう。
困ったものだ。
こうなると、早く涼しくなってほしいと思う。
勝手なものだ。


ボリュームがあって読むのに一週間かかったが、いい本だった。

Chikappu_moritodaichi『森と大地の言い伝え』
 チカップ美恵子 編著  北海道新聞社
 2005/3/3 初版発行  333ページ
 1800円(税別)

第一部 森に宿る言霊(ことだま)
チカップさんの伯父(母の長兄)にあたる、山本多助さんの『釧路アイヌの昔話と伝説』(第一巻、第二巻)から。
第二部 故郷の記憶
チカップさんの母親、伊賀ふでさんが晩年に執筆した子どもの頃の体験記。

気負わず、淡々と語られる昭和の頃のアイヌの人たちの暮らしぶり。
文章も嫌味がなく、読みやすかった。
以下、目次から章題。

はじめに(チカップ美恵子) 伯父・山本多助の思い出
第一部 釧路アイヌの系図と伝説/釧路川とカムイ・ト(神の湖)/釧路地方のアイヌ遺跡/アイヌ民族の流儀/樺太を旅して
第二部 祖母の思い出/母と歩いた道のり/兄たちとともに/兄・多三郎の葬儀
あとがきにかえて(チカップ美恵子) 心に残る旅探し

巻末に、「山本家先祖の名称と20代目からの系図」が掲載されている。
文字をもたなかったアイヌの人々は、口承で先祖の系図を伝えてきたという。
山本多助・ふで兄妹の代から四代までさかのぼって詳しく書かれた系図に驚く。


アイヌ民族の口承文芸のすばらしさを、もう一冊の本で味わっている。
これは、今日から読みはじめた。
長いあいだ、私の本棚にあったもの。

Yamamoto_tasuke_yukar_3『カムイ・ユーカラ アイヌ・ラックル伝』
 山本多助 著  平凡社ライブラリー
 1993/11/15 初版第1刷 2004/4/26 初版第7刷

山本多助さんが子どもの頃から慣れ親しんだユーカラ 十六篇(日本語訳)がまとめられている。
多助さんも、アイヌの文化遺産を後世に伝えようと努めた人である。

<アイヌ民族は自然の子です。/むかしのアイヌ民族は、狩猟民族として、自然の恵みに感謝しながら、そのおきてに従って、自由に生きていました。>

あとがき(おわりに)の冒頭に記されたこの言葉は、知里幸恵さんの『アイヌ神謡集』序文を思いおこさせる。

巻末、藤村久和さんの「解説――アイヌの語り」がためになる。

<アイヌの人々が伝承してきたものは、その内容も然ることながら、節つきの語り口調か、節なしの口調で演ずるかで物語全体の形式の位置づけが明確になることとなる。節をつけて英雄の一代記を語ったとすれば、それはユーカ、地域によってはハウキ・サコペなどと位置づけるのに、節をつけずに話し口調となれば、ウウェペケレ、イルパイェ、トゥイタ、イソイタッキなどということになるだけでなく、……>

ほんらい、アイヌの口承文芸は耳で聴くものなのだな。
文字にすると抜け落ちてしまうものが、たしかにある。
それは、人の息吹と呼べばいいのか。
魂、言霊(ことだま)と言ってもいい。

(左) 『アイヌ神謡集』 知里幸恵 岩波文庫
(右) CD 『「アイヌ神謡集」をうたう』 片山龍峯(復元)/中本ムツ子(謡) 草風館
 このCDはすばらしい。
 知里幸恵さんが文字で残したユカラを、ほんらいの謡(うたい)に復元しようとした試み。

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