【読】サハリン、アイヌ民族
この本がとてもよかった。『奇妙な時間(とき)が流れる島 サハリン』
田中水絵 著 凱風社 1999/11/25発行
262ページ 1800円(税別)
著者は「終戦のわずか三年後に生まれ」たというから、私よりも少し年上の「団塊の世代」のひとり。
一週間の予定でぶらっと訪れたサハリンに、その後六年にわたって何度も行っている。
現代のサハリンに住む人々との交流が、なんとも温かみがあって、いい。
コウイウヒトニワタシワナリタイ、と思うほどだ。
<ルーブル切り下げの一か月ほど前、私はユジノサハリンスク市のレーニン通りにある美術館、かつての「北海道拓殖銀行豊原支店」の石造りの建物の前に立っていた、かつて、樺太の経済を支えたこの銀行は、前年、つまり1977年11月、経営破綻から解体していた。日本中でバブルがはじけていた。/旧銀行の前で私は思った。この私もバブルだったと。私は終戦のわずか三年後に生まれ、日本の急速な経済的発展に乗っかり、共に年を重ねてきた。ぬくぬくと、ふわふわ生きてきた。戦争も、父が戦争に行ったことも、私には遠い遠い昔話だった。>
<サハリンに渡るたび、私は無意識に感じていた自分というバブルの空洞が少しずつ埋まっていくのを感じた。>
<サハリンから帰るたび、私は奇妙な時間(とき)が流れているのは、海峡のこちら側、日本の国だと感じる。この国に流れている時間は、決して消えない過去を忘れ、おかしな方向に流されているのではないか。> (以上、あとがきより)
田中水絵さんには、興味ぶかい訳書がある。
読んでみたいが、値がはるので考え中。
この町の図書館にも置いていない。残念。
『沿海州・サハリン近い昔の話―翻弄された朝鮮人の歴史』
アナトーリー・T・クージン (著)/ 岡 奈津子・ 田中 水絵 (訳)
凱風社 1998/7月発行 317ページ 3500円(税別)
Amazon
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/477362213X
出版社/著者からの内容紹介
ロシア極東の朝鮮人が、どのように中央アジアやカザフスタンへ強制移住させられたのか、日本によってサハリンに連れてこられた朝鮮人はなぜ、祖国に帰れなかったのか。サハリン在住の研究者がソ連時代の公文書をもとに著した過去の「真実」。
I:ロシア極東の朝鮮人●1862~1937年(移住の始まり/法的問題/文化の発展 ほか)
II:サハリンの朝鮮人●1870~1992年(サハリン人として生きて/強制移住と弾圧 ほか)
e-honサイト
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000030426254&Action_id=121&Sza_id=E1
凱風社
http://www.gaifu.co.jp/
http://www.gaifu.co.jp/books/ISBN4-7736-2213-X.html
田中水絵さんの本に続いて、いま読んでいるのがこれ。『森と大地の言い伝え』 チカップ美恵子 編著
北海道新聞社 2005/3/3発行
333ページ 1800円(税別)
チカップ美恵子さんは、アイヌ文様刺繍家。
山本多助さんの姪であり、母は伊賀ふでさん(山本多助さんの妹)。
この本は、「第一部 森に宿る言霊」 が山本多助さんの著作 『釧路アイヌの昔話と伝説』(第一巻、第二巻)から。
「第二部 故郷の記憶」 は伊賀ふでさんが晩年に執筆した子どもの頃の体験記をまとめたものだという。
ずいぶんまえに手に入れ、ずっと本棚でねむっていた本だが、山本多助さんが昭和11年に樺太を訪れたときのはなしが載っていたのこともあって、このところの私の中の 「樺太熱」 の延長で読みはじめた。
山本多助さんの文章がいい。
アイヌ民族の歴史がよくわかる好著。
このほか、最近になって古本屋でみつけた本がある。『日本植民地探訪』 大江志乃夫 著
新潮選書 1998/7/30発行
492ページ 1600円(税別)
サハリン、南洋諸島、関東州、台湾、韓国、北朝鮮と、かつて日本の植民地だった土地を探訪した記録である。
中身が濃くボリュームもあるため、読むのはたいへんそうだが、いつか読んでみよう。
大江志乃夫さんの本は、ずいぶん前に一冊だけ読んだことがある(日露戦争に出征した兵士たちの手紙のはなし)。
信頼できる人だと私は思う。
田中水絵さんの本に何度もでてきた逸話だが、この大江さんの本も、岡田嘉子と杉本良吉の北緯五十度線越境(ソ連への亡命)の話からはじまっているのが興味ぶかい。『北海道の商人大名』 山下昌也 著
グラフ社 2009/4/5発行
278ページ 1400円(税別)
今日の昼休み、職場の近くにある BOOK OFF で目にとまった。
題名にひかれて手にとってみると、なかなかおもしろそうなのだ。
江戸時代の松前藩の話だ。
とうぜんのことだが、アイヌ民族との確執についても詳しく書かれている。
松前藩は、他の藩とちがって米を基盤にしない大名だった。
当時の蝦夷地は米がとれなかったため、「○○万石」という石高がなく、米の代わりに商売で得た利益で藩を経営していたのである。
グラフ社という出版社ははじめて目にしたが、なかなかしっかりした内容だと思う。
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