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2009年11月30日 (月)

【読】あと少し

船戸与一の長編小説を十日間もかけて読みついでいる。
十一日目の今日、読みおえたかったのだが、20ページほど残ってしまった。

Funado_ryuusa_2『流沙の塔』 船戸与一
 新潮文庫 2002年刊
 (親本 朝日新聞社 1998年刊)
 上巻 526ページ 下巻 449ページ (本文)

スケールの大きな小説だ。
『蝦夷地別件』 には負けるけれど、登場人物も多彩。

横浜の華僑で客家(ハッカ)の実力者に拾われ育てられた海津(かいづ)明彦。
漢人の軍人、東明正。
東トルキスタン・イスラム党の青年。
彼らにからむ、何人かの魅力的な女性たち。
謎の老人、間垣浩市は、『満州国演義』 に登場する満州浪人の成れの果てに思えてくる。
この物語で重要な役割を担う、中華人民共和国 国家安全部保安局内事第一処次長、蒋国妹という不気味な女性もまた、不幸な過去を背負っている。

登場人物たちの 「顔」 が見えてくるところが、船戸与一の筆力のすごいところだと私は思う。


題名の 「流沙の塔」 の由来が、登場人物のひとりの口を借りて語られる。
なるほど。そういうことだったのか。

 「芥子に頼るは流沙に塔を築くがごとし……」
 「何ですって?」
 「清朝末期の詩人の言葉だよ。そのころは芥子からはまだヘロインは精製されず阿片の段階だったがね。組織の財政を阿片に依拠すれば、流沙のうえに塔を築くのと同じで最初は一応の見てくれを形成する。だが、そんなものはすぐに崩れ落ちてしまう。その詩人はそう言ったんだよ」
  (第五章 「枯骨の遺跡」 P.209)

西州回鶻(かいこつ)国の遺跡が、この物語の最後の舞台。
文庫のカバー写真がそれだ。
西州回鶻国とは、唐の時代にウイグル族が作った国で、ゾロアスター教から分派したマニ教を信仰していたという。

上巻の巻頭に、次の言葉がかかげられている。

 ――沙河(さが)に多くの悪鬼、熱風あり。遇えば即ち皆死して、一として全き者無し。上に飛鳥なく、下に走獣なし。遍望曲目、渡る処を求めんと欲すれば、即ち擬する所を知らず、唯死人の枯骨を似って、標識と為すのみ。   
  東晋の求法僧・法顕(ほっけん) (長沢和俊・訳)

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