« 【歩】身近な紅葉 | トップページ | 【読】ヘスースとフランシスコ »

2009年12月 8日 (火)

【読】長倉洋海さんの好著

図書館から借りて、今日から読みはじめたこの本。
いい内容だ。

Nagakura_photo_journalist_3長倉洋海 (ながくら・ひろみ)
 『フォト・ジャーナリストの眼』
 岩波新書 新赤版223 1992/4/20 第1刷発行
 244ページ 602円(税別)

<「右眼でファインダーを、左眼でそこには映らない世界を」 戦乱のエル・サルバドールでは一人の少女を10年間撮り続け、またアフガンの戦士と250日間生活を共にするなど、世界を駆け巡るなかで、彼の「眼」はどう変化していったか。 国内外で同時代の鼓動を撮り続ける気鋭のカメラマンが、情報過多社会における舗道写真のあり方を熱っぽく語る。> (本書カバー裏)

第一章はエル・サルバドルが舞台。
今日読んだところで、とてもいいエピソードがあった。
「難民キャンプの少女ヘスース」 という文章だ。
長倉さんには、『ヘスースとフランシスコ エル・サルバドル内戦を生きぬいて』(福音館書店/2002年)という児童向けの本もあるらしい。
新本では入手不可能なので、図書館から借りて読んでみたい。

『ヘスースとフランシスコ エル・サルバドル内戦を生きぬいて』 長倉洋海
e-honサイト
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000031029428&Action_id=121&Sza_id=F2
Amazon
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4834018857


ところで、本書で私が感銘を受けた箇所。
長倉さんの文章も、てらいがなく、好感がもてる。

以下、本書34-36ページより。

<…(略)…四年ぶりのキャンプの中はガランとしている。はずれにある一軒の家の戸口に立った。女の子が顔を出す。背が伸びて体も大きくなったけれど、ヘスースに間違いない。突然の訪問にきょとんとしているヘスースに、彼女が写っている写真を見せる。「わぁー、私だ。お母さん、見てよ」と写真をもったまま家の中に駆けこむ。以前、日本から送った写真は届いていなかったのだろう。>

<ヘスースはいま十歳。髪を長くして大人っぽくなたが、最初(82年)に見たときは、まだほんの子どもだった。家の前でだだをこね、お母さんに怒られて泣いていた。キャンプに来たばかりで、まだ環境になじんでいなかったのだろう。>


ヘスースが3歳のときの写真「母に叱られ泣き出した3歳のヘスース(サンタ・テクラ難民キャンプ,1982年)」が掲載されている。
この本の写真はモノクロ印刷だが、先日読んだ『幸福論』(東海大学出版局、関野吉晴さんとの対談)には、カラー写真が載っていた。

長倉さんの、子どもたちに対する優しいきもちがにじみでている、いい写真だ。
『幸福論』には、おなじヘスースの10歳のときの写真(1990年)と、若い母親になって娘を抱きあげている17歳の写真(1997年)が並べて掲載されている。
中米の一人の少女とこれだけ長いあいだつきあい続けたところに、長倉さんの、一本筋の通った生き方を感じる。


<84年にエル・サルバドルを訪れた時は、クリスマス・シーズンだった。町では子どもたちがアメやお菓子を買ってもらい、教会の前で着飾って記念撮影する光景があった。キャンプにも、慈善団体の人たちがプレゼントをもってやってきた。きれいに着飾った女の子が木からつるしたぬいぐるみを棒で割り、中からこぼれ落ちたキャンディを、キャンプの子どもたちに拾わせた。その奪い合いに入って行けずに、遠巻きに眺める子どもたちの一人に、ヘスースがいた。/苦しい生活なのに、彼女の表情には人を魅きつける明るさがあった。>

<ヘスースはいま週に数日、学校に行っているという。84年と違って、キャンプの外にも出られるようになった。…(中略)…ヘスースの将来の夢は「秘書になること」だ。隣りでパンを作っていた母親が、「まだ字も書けないくせに」というとヘスースは恥ずかしそうに下を向いた。>

<エル・サルバドルを離れてしばらくしてから、一通の手紙が届いた。キャンプを訪ねた友人からのものだった。便箋の中に、「Jesus(ヘスース)」とサインが書かれてあった。よれよれの曲がりくねった字……。ヘスースだ。字が書けるようになったのだ。キャンプを訪れると、駆け寄って来て、手を引っ張っては他の子のところに連れて行き、「私の写真と同じように、きれいに撮ってあげてよ」と私に頼みこむヘスースの表情を思い出していた。>

引用が長くなったが、心あたたまる、とてもいいエピソードだったので紹介した。

|

« 【歩】身近な紅葉 | トップページ | 【読】ヘスースとフランシスコ »

【読】読書日誌」カテゴリの記事

こんな本を読んだ」カテゴリの記事

長倉洋海」カテゴリの記事

関野吉晴」カテゴリの記事

コメント

この本、実は私も気になって古本で手に入れたばかりです。北海道生まれ、年齢も比較的近いというのが彼が気になる理由でしたが、モノクロの小さな写真にも文章にも打たれました。

投稿: 玄柊 | 2009年12月 9日 (水) 18時42分

>玄柊さん
長倉洋海さんは、1952年釧路生まれですね。
中島みゆきさんと同じ生年。
われわれと同学年か、一学年下の年代です。
写真は、岩波新書の制約でモノクロ印刷ですが、元はカラー写真のはずです。
この人の写真と文章、私も好きです。

投稿: やまおじさん | 2009年12月 9日 (水) 19時54分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/139344/46973086

この記事へのトラックバック一覧です: 【読】長倉洋海さんの好著:

« 【歩】身近な紅葉 | トップページ | 【読】ヘスースとフランシスコ »