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2010年2月10日 (水)

【読】五木寛之 「親鸞」 読了

とうとう読みおえた。

Itsuki_shinran_1Itsuki_shinran_2五木寛之 『親鸞』 上・下
 講談社 2010/1/1発行
 310ページ/318ページ
 各1500円(税別)

本の帯から、魅力的な登場人物を紹介しておこう。
まだ読んでいない人には、よけいなお世話とは思うが、この小説の魅力を伝えたいので。
(上巻・下巻で一部重複する)



主な登場人物

―上巻 帯より―
●忠範・範宴 この物語の主人公。のちの親鸞
●犬丸 忠範の家に仕える、正体不明の召使い
●サヨ 犬丸の妻、愛情豊かなしっかり者
●河原坊浄寛 元武者、いまは鴨川の河原の聖
●ツブテの弥七 ツブテ打ちの名手、白河印地の党の頭
●法螺房弁才 元比叡山の行者、弁舌巧みな巷の聖
●伏見平士郎 美しき、残酷無類の怪少年
●後白河法皇 今様で世を治めんとする「暗愚の王(きみ)」
●慈円 寺門、権門をあやつる政教の黒幕
●良禅 比叡山での同僚。危うい美少年
●玉虫 旅先の大和路で出会った、傀儡女(くぐつめ)
●紫野 六角堂で出会った、不思議な女

―下巻 帯より―
●範宴・綽空・善信 物語の主人公。のちの親鸞
●恵信 かつての紫野。労咳を病んで死線をさ迷う
●鹿野 紫野の妹。越後から来た、若く快活な娘
●安楽房遵西 念仏での世直しを謀る美青年
●法本房行空 筋骨隆々、念仏一筋の無骨者
●犬麻呂 人買い稼業で稼ぐ、かつての犬丸
●ツブテの弥七 元白河印地の頭、餌取小路の顔役
●法螺房弁才 元比叡山の行者、医術を心得る聖
●黒面法師 悪行の限りを尽くす奇怪な修験者
●良禅 慈円に仕える比叡山の若き実力者
●信空 長年法然に仕えた高弟
●日野宗業 苦節の末、出世街道を歩む伯父


下巻のおわりちかく、「首切られ念仏」 の章が、なんといってもこの小説の山場。
電車の中で読んでいて、ぐっときてしまい、落涙しそうになった。

五木さんのこの小説には、次のような(当時の下層の)人々の呼び名がひんぱんにでてくる。
牛飼い、車借、馬借、辻芸人、傀儡(くぐつ)、行商人、遊び女(あそびめ)、神人(じにん)、博奕の徒、盗人、流れ者、武士(むさ)、等々。

<彼は辻説法はいたしませぬ。寺や、市場で人をあつめることもしない。ただ、ひたすら歩きまわって、さまざまな顔見知りの男女と話をかわすだけです。…(中略)…そのほとんどが、世間でさげすまれている者たちで、いわば都の闇にうごめく影のような男や女たちだといいます。牛飼いもいる、車借、馬借もいる、……(後略)> (下巻 P.239)


こういった人々の具体的な顔が、もっとえがかれているとよかった。
それと、これは私だけの感想かもしれないが、この時代の人たちが、何をどのように食べていたのか知りたかった。
食べ物は、その時代を知るたいせつな要素だと思うので。
(以前、テレビで観た「武士の一分」という映画が優れていたのは、主人公が黙々とめしを食うシーンがあったからだと、私は思っている)

ともあれ、なかなか魅力あふれる小説だった。
仏教(念仏)の世界は、私にはさほど身近に感じられないテーマではあるが、次の一節など、すばらしく感動的だ。

<死後の世界というものを、だれもがある瞬間、ふと想像しないではいられないのだろう。ことに業のふかい仕事と世間で見られている職業についている人びとは、気にせずに生きているように見えて、じつは胸に太い針を刺されているような思いを日夜おぼえているようだ。これまで仏の道を説く僧たちは、人間の犯す数々の罪について、そのおそろしい報いを人びとに語ってきた。僧の言葉は数百年のあいだに、深く、固く世間の常識として定着してきている。/そのなかでも、殺生、という行為は、ことに罪業ふかき行いとして教えられてきた。生きものの命をうばう仕事は、罪であり、悪であるというものである。>

<人は殺生を行わずには生きていけないのだ、と善信は思う。/「山川草木悉有仏性」と、比叡山では教えられた。山にも、川にも、森にも、草や木の一本一本にまで仏の光がやどている、という。/牛馬をほふり、魚獣をとり、戦で人を殺す者だけに殺生の悪を説くのはまちがっている。その獲物を食らい、武者を操りながら、贅沢な暮らしをつづけているわれらも同じ悪を背負っているのだ。> (下巻 P.266-267)

 

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コメント

読み終えましたね。私は、二冊を積んだままにしていますがいずれ・・・。楽しみです。

投稿: 玄柊 | 2010年2月11日 (木) 18時16分

>玄柊さん
力作です。

投稿: やまおじさん | 2010年2月11日 (木) 18時21分

遵西首斬の場面はぐっときてしまいました。
素晴らしかったです。
映画化してほしいです!!

投稿: 青年坊若禿 | 2010年3月 7日 (日) 18時15分

そうですね、感動的な場面でしたね。
この小説は映画化しやすそうですが、さてどうなるでしょうか。

投稿: やまおじさん | 2010年3月 7日 (日) 18時21分

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