【読】星野さんとジェーン・グドール
何年ぶりかで再読。
短い本なので、一日で読みおえた。
ひさしぶりに星野さんの本を読み、豊かな気持ちになることができた。『アフリカ旅日記 ゴンベの森へ』
星野道夫 著
メディアファクトリー
1999年発行 135ページ
1400円(税別)
タンザニア奥地にあるゴンベ動物保護区。
そこで40年近くチンパンジーの観察研究に取り組んでいるジェーン・グドールを、星野道夫さんが訪ねた、わずか十日間(1995年2月14日~23日)の旅日記だ。
星野さんと、ジェーン・グドールは、どこか通じあうところがあったようで、二人のあたたかい人がらが伝わってくる。
<ぼくがジェーン・グドールに会いたかったのは、彼女を通してアフリカという世界を垣間見たかったからだろう。生まれ故郷を離れ、新しい土地へ移り、そこで生き続けてゆくことの意味を、ぼくは少しずつわかりかけていた。アラスカとアフリカという違いこそあれ、ぼくは彼女の著作を読みながら、ある共通する想いを感じていた。> (P.16 東京発12時40分チューリヒ行き)
星野さんは、チューリヒの空港でジェーン・グドールと落ち合い、いっしょにゴンベへ向かう。
二人は、共通の友人 ミヒャエル・ノイゲバウアー(ザルツブルグで小さな絵本の出版社を経営)を介して、出会うことになったのだ。
星野さんが撮影した写真も掲載されている、この小さな本の原稿は、彼がカムチャッカ撮影行に旅立つ前日、1996年7月21日に脱稿したという。
翌8月、カムチャッカ半島クリル湖取材中、ヒグマに襲われて星野さんは亡くなった。
星野道夫さん、最後の書き下ろしである。
『GOMBE』 という大型写真集(1997年9月、メディアファクトリー)も出版されている。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/488991465X
この 『アフリカ旅日記』 の一節、星野さんがその著作のなかで繰り返し書いている、次のエピソードが私は好きだ。
<ぼくが子どもの頃に、頭を悩ませていたのは、北海道のクマの存在である。自分が日々、町の中で暮らしている同じ瞬間に北海道でクマが生きている。そいつは今、どこかの山を登りながら、大きな倒木を乗り越えようとしているかもしれない……そんなことを考え始めると、不思議で不思議でならないのである。そしてその不思議さは、自分の存在が消えてしまうとされに不思議なのだ。つまり、クマと出合うのではなく、その風景を天空から見ている自分を考えることで、人間のいない世界に流れる自然の気配を想像する不思議さである。その頃は言葉にはできなかったが、それはすべてのものに平等に同じ時が流れている不思議さだった。> (P.92-93 ぼくのファンタジー)
電車のなかでこの部分を読みながら、私もまた、車窓に目をやって、遠い北海道に住むクマの姿を思いうかべたのだった。
もっとも、北海道のヒグマは、今ごろまだ冬眠からさめていないだろうが……。
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