【演】【読】富くじ
このあいだ読んだ本 『江戸の演芸』 に、富くじのことが詳しく書かれていた。
「富くじ」 とは、現代の 「宝くじ」 にあたる。
青木宏一郎 『江戸の演芸 ――自然と行楽文化』
ちくま新書 1998年 206ページ 660円(税別)
園芸とか盆栽に、さほど関心はないのだが、「江戸」とつくとつい読んでみたくなる。
読んでみると、園芸に限らず江戸文化論とでもいうのか、なかなか面白い内容だった。
「富くじ」 の項では、思わず膝を打った。
上方落語 「高津の富」 (こうづのとみ、東京では「宿屋の富」)に登場する富くじは、このようなものだったのか。
写真入りで紹介されている。
<……富くじも、寺社の費用調達の手段であるとともに、人々の関心を集めた。関西ではかなり古くから行われていたが、江戸では十七世紀の後半から町人が胴元になって商売にしたのが初めらしい。……寺社にとっては安易な集金手段であり、一方庶民にとっても一攫千金の夢を見られるとあって、すたれるどころか毎日のようにどこかの寺社の境内で富興業が行われるほどであった。……>
(『江戸の園芸』 P.94)
一攫千金 ―― 数日前に買った宝くじがハズレだった。
こうして一生夢をみながら死んでしまうのだろうか。
当たれ!宝くじ ―― 憂歌団にこんなタイトルの歌があったっけ。
私の好きな上方落語の桂枝雀が演じる 「高津の富」 のなかで、富札に書かれた番号を、慌ててさかさに読むシーンがある。
「子(ね)の千三百六拾五番」 を、「番の五拾六百……」 と読みかけて、あべこべだと気づく趣向だが、こうして富札の写真をみると少し無理があるなと思う。
まあ、クスグリとして笑えるのではあるが。
【参考】
相羽秋夫 著 『現代上方落語便利帳』 (少年社 1987年) P.160 より
高津の富 こうづのとみ 古典
あらすじ 百万長者とふれこみの男が、宿屋の亭主に高津神社の富くじを買わされ、虎の子の一分までとられてしまう。大ぼらを吹いた手前、そのくじが当ったら半分は亭主にやると約束する。翌日、高津にやってきて、当りくじを照合すると、なんと一等の千両が当っているではないか。男は震える足で宿屋に帰るとそのまま寝てしまう。……
高津神社は、大阪市南区高津町に現存する。東京では「宿屋の富」と名を変える。当りくじを照合するくだりに落語のリアリズムが冴える。
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