【読】イヴの七人の娘たち(続)
きのうの新聞に、南アフリカで190万年前の新種猿人の化石が発見されたニュースがでていた。
東京新聞 2010/4/9(金) 朝刊
190万年前の新種猿人化石 南ア研究グループが発見
<南アフリカ共和国の首都プレトリア近郊の洞穴から約百九十万年前に生きていた新種の猿人の化石を発見したと、南アのウイットウオーターズランド大などの研究グループが九日付の米科学誌サイエンスに発表した。化石は少年と成人女性の二人分。頭や腰、腕、脚などの骨が部分的に見つかった。……>
<新種猿人は、ホモ属の起源であるとの意味を込め、現地のソト語の「水源」という言葉にちなみ「アウストラロピテクス・セディバ」と命名された。>
ヒト属祖先? 南アフリカで新種の猿人化石を発見 - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/science/science/100408/scn1004082323014-n1.htm
ちょうどいま読んでいる 『イヴの七人の娘たち』 という本の内容とつながるニュースなので、興味ぶかく読んだ。
地球上に生命体が誕生してから現代まで、気のとおくなるような、悠久の時の流れを思う。『イヴの七人の娘たち』
ブライアン・サイクス 著 大野晶子 訳
ソニーマガジンズ 2001年
358ページ 1600円(税別)
第14章 七人の娘たち
第15章 第一の娘 アースラ
第16章 第二の娘 ジニア
第17章 第三の娘 ヘレナ
第18章 第四の娘 ヴェルダ
第19章 第五の娘 タラ
第20章 第六の娘 カトリン
第21章 第七の娘 ジャスミン
現代ヨーロッパ人のミトコンドリアDNA配列を分類すると、七つのグループ(「群」クラスター)がある、というのが著者の説で、その科学的根拠が詳しく書かれていて説得力がある。
読みものとしても、たいへん面白い。
第15章からは、なかば空想の世界だが、数万年前のヨーロッパで生きていた人類の祖先たちの姿が目の前に見えるようで、わくわくしながら読みすすめている。
この本の魅力を伝えたいと思うので、内容の一部を引用して紹介しておこう。
<進化の歴史を再構築した結果、ヨーロッパ人のなかには七つのおもな遺伝学的群(クラスター)があることが明らかになった。それぞれのクラスターに属するDNA配列は、互いにぴったり一致するか、非常に似通っている。現代ヨーロッパ人の95パーセントが、この七つのグループのいずれかに当てはまる。そのクラスターの年代特定を行った結果、ヨーロッパの先史と、旧石器時代の狩猟採集民が重要視されることになった。>
<七つのクラスターの年代は、四万五千年前から一万年前のあいだに広がっている。その歳月の意味するところは、元となるひとつの配列から、いま見つかる突然変異のすべてが発生するのにかかった時間の長さということになる。そして理論的には、七つのクラスターそれぞれの元となるひとつの配列は、すべてたったひとりの女性によってもたらされたということになるのだ。……>
<彼女たちに名前を与えるだけで、その存在にずっと現実味が増してくる。そうなると、彼女たちの生活ぶりについて強烈な興味をそそられるようになるはずだ。アースラ、ジニア、ヘレナ、ヴェルダ、タラ、カトリン、ジャスミンの七人が、血の通うほんものの人間となる。名前はそれぞれ、アントニオ・トッローニのアルファベット分類システムをもとにしてつけた。アースラ(Ursula)は、Uクラスター一族の母だ。Hクラスターの根元にはヘレナ(Helena)がいる。ジャスミン(Jasmine)はJクラスターの共通祖先。そんな具合だ。そこにはもはや、理論的な概念や、統計学やコンピュータ・アルゴリズムによる不明瞭さはない。いまや彼女たちは、ほんものの女性となった。
ヨーロッパで暮らすほぼ全員が、その女性たちと、遠い過去までさかのぼってもとぎれることのない、ほとんどへその緒のようなつながりを持っている。そんな彼女たちは、いったいどんな女性だったのだろうか。>
(第十四章 七人の娘たち)
<アースラが生まれた四万五千年前の世界は、いまとはまったくちがっていた。現在よりずっと寒くて、そのあとの大氷河期へとつづく千年期はさらに気温が下がっていった。アースラは、現在のギリシャパルナッソス山の麓に切り込まれた浅い洞窟で誕生した。……>
(第十五章 第一の娘 アースラ)
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