【読】イヴの七人の娘たち(続々)
このところ本を集中して読めない生活が続いていたので、一週間かかってしまった。
ようやく読了。
目から鱗が落ちるような、目の前がぱっと開けるような、そんな体験をさせてくれた一冊だった。
『イヴの七人の娘たち』
ブライアン・サイクス 著 大野晶子 訳
ソニーマガジンズ 2001年
358ページ 1600円(税別)
国籍とか人種とか民族といったカテゴリーが無意味に思えてくる。
数百万年前の類人猿の時代から、延々とつながっている「生命(いのち)」。
母と娘のあいだでしか受け継がれないという「ミトコンドリアDNA」をたよりに、母系のルーツをさかのぼっていけば、私たち地球上に住むホモ・サピエンスの系統は、いずれひとつに繋がっているのだ。
つまり、この私の母親の母親の母親……と、たどっていけば、それは途切れることのないひとつの糸で結ばれている。
その糸は、途中で「姉妹」がいれば分岐している。
枝わかれした先に、私の知らない人が(世界中に!)いるかもしれないし、満員電車で隣りあわせた人が、ひょっとしたら私の母系の先祖たちとどこかで繋がっているかもしれない。
そんなことを考えると、うれしくなる。
<こうした物語を考えると、人類を分類する生物学的根拠など、まるっきりナンセンスだとわかる。……> (第23章 自分とは? 「人種」という概念の崩壊 P.348)
<……本書のなかでサイクス教授がなにより強調したかったのは、科学的データからはじきだされた結果そのものではなく、そこから人類が読み取るべきメッセージではないだろうか。遺伝学的に見て、人類を国籍や人種に基づく枠組みにおさめる意味などない、と教授は語る。たとえば「日本人」が住んでいるのは事実だが、彼らを「日本人」という枠組みに閉じこめて人類の歴史をさぐることの意味があるのだろうか、と。ミトコンドリアDNAから見れば、日本人はもちろんのこと、この世の誰もが「混血」なのだ。……なにかと争いごとの多い世の中だが、顔つきや、肌の色がちがっても、信じる宗教はちがっても、人類はみなきょうだいであり、その証拠がじっさいからだに刻みこまれている――この事実が、とげとげした人々の心に少しでも影響を与えられれば、教授にとってそんなうれしいことはないだろう。> (大野晶子 訳者あとがき P.356)
読みおえたので図書館に返すけれど、こうなると手もとに置いておきたくなる。
それほど魅力的な本だ。
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