【読】時代劇の嘘
幕末維新の頃をえがいたテレビドラマがブームらしいが、私は好きじゃない。
どうにも嘘っぽいからだ。
お好きな方は、それはそれでけっこうだし、何も言うことはないのだけれど。
そんなへそ曲がりな私にぴったりの本をみつけた。
いつものように、少しまえに大型古書店で目にして購入していたものだ。佐藤誠朗 著 『幕末維新の民衆世界』
岩波新書 1994年発行 242ページ 602円(税別)
何を読もうか迷っていたが、これを読んでみようと思う。
はじめの方を開いていたら、うれしいことが書いてあるじゃないか。
<黒船=ペリー艦隊が浦賀に来航したのは1853(嘉永6)年。この事件を契機に幕末動乱の時代がはじまるといわれる。テレビドラマなどで、戦国の動乱期とならんでくりかえし描かれている時代である。主役は、高杉晋作・坂本龍馬・桂小五郎(木戸孝允)・西郷隆盛・大久保利通・勝海舟ら、幕末の「志士」、維新の「立役者」たちだ。/テレビドラマの多くでは、口角泡をとばして悲壮美を競い合うかのようにふるまう武士たちに対して、庶民は戦火をさけて騒がしく逃げまどう存在としてしか描かれていない。「世直し」を求める民衆の一揆が続発したことや、打ちこわしがおきたことがふれられても、歴史の脇役としてしか扱われていない。だが、庶民はわけもなくいきり立ったり、むやみやたらに逃げまわったりする存在だったろうか。そうではなかった。>
(本書 P.2 序章 「庶民日記に歴史を読む」 庶民は脇役だったか)
e-honサイトより
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000018984473&Action_id=121&Sza_id=F3
[要旨]
黒船来航、幕末の動乱そして「御一新」。庶民はこの変革期をどう捉え、どう生きていったのか。近江商人・小杉元蔵、江戸町名主・斎藤月岑、生麦村名主・関口東右衛門、京都近在の頭百姓・若山要助、宮大工・藤井此蔵、地下医・古谷道庵、等々、庶民が書き残した膨大な日記群を縦横に駆使しつつ描き出される異色の幕末維新史。
[目次]
序章 庶民日記に歴史を読む;第1章 異人、江戸に来る;第2章 張札とさらし首;第3章 京が焼ける;第4章 戦と世直し;第5章 ええじゃないか;第6章 戊辰の戦と商い;終章 庶民にとっての御一新
庶民といっても、日記を残すぐらいの人たちだから、当時のある程度の教養人だったのだろう。
それでも、幕末の「志士」や維新の「立役者」たちとはちがう、下からの視線で見た世相が描かれていることが期待できる。
巻頭に、「本書に登場する主な庶民日記」というのがずらりあげられていて、圧巻。
関口日記 武蔵国橘樹郡生麦村の豪農、関口家の日記
藤岡屋日記 江戸外神田御成道の古本屋、須藤由蔵が編集した記録
斎藤月岑(げっしん)日記 江戸神田雉子町の草創(くさわけ)名主、斎藤市左衛門の日記
野口家日記 肥前国神埼郡渡瀬村の一農家、野口広助の日記
日乗 長門国豊浦郡宇賀本郷の地下(じげ)医者古谷道庵の日記
(面倒なので以下略)
……等々、18の日記が紹介されている。
今となっては、どれも貴重な資料だ。
まめな人が、昔からいたんだなあ。
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コメント
日記は日本人の感性にフィットしてますよね。日記というほどのものではないのですが僕も毎日ノートに記録をつけてます。後の時代の人が読むのかな~、と思うときまあります。
やまおじさんもブログを毎日のように更新しているので、まめな方だと思いますよ。
メールを送らせてもらいました。Gメールのやつです。
投稿: はっせー | 2010年4月27日 (火) 13時08分
>はっせーさん
コメントとメール、ありがとうございます。
日記は時間がたてば貴重な記録になるかもしれませんね。
私のブログなどは、すぐに色あせてしまうような内容ですが……。
投稿: やまおじさん | 2010年4月27日 (火) 21時45分