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2010年6月 5日 (土)

【山】【読】山野井泰史さんを描いたもうひとつのノンフィクション

世界的なクライマー 山野井泰史さんを描いたノンフィクション。
近くの図書館にあったので、今日借りてきた。

Maruyama_solo丸山直樹 『ソロ 単独登攀者 山野井泰史』
 山と渓谷社 1998年
 286ページ 1500円(税別)

著者の丸山直樹さんは、大学山岳部で山登りを経験しているフリーランスの記者(本書執筆当時)。
山野井さんが書いた 『垂直の記憶 岩と雪の7章』(山と渓谷社)にも名前がでてきて、山野井さんとも親しいらしい。

沢木耕太郎さんの本を読んだ後では、この人の文章はすこし読みにくい感じがするのだが(私も他人のことは言えない)、おもしろそうだ。

タイトルの「ソロ」は、山野井さんの単独登攀スタイル(アルパイン・スタイルによるソロ)に焦点をあてていることによる。

<山野井泰史――言うまでもなく現時点における日本最強のアルパイン・クライマーである。「日本」と限定するよりは、「世界最強のソロ・クライマー」と言っても過言ではないだろう。小学校五年生のとき、偶然テレビで見た劇映画『モンブランへの挑戦』がきっかけで岩登りに取り憑かれ、以来二十年近く、とりわけ高校卒業後の十三年間を、すべてクライミングに費やしてきた。定職はない。富士山頂測候所への冬季歩荷(ぼっか)(徒歩による物資の荷揚げ)である強力(ごうりき)で主な生活費を稼ぎ出し、東京都・奥多摩の山間に建つ、築六十年の借家に妻とともに住む。妻の妙子(旧姓長尾)もまた、ヒマラヤを数多く登っている屈指の女性クライマーである。>
(本書 プロローグ「自分という極限」 P.9-)

アルパイン・スタイルとは、ヨーロッパ・アルプスでおこなわれてきた単独または少人数による登山スタイル。できるだけ短い日数で一気に登る。
日本で我々が一般ルートをたどて山に登るスタイルがそうだ。

これに対して、ヒマラヤのような巨大で難しい山の場合、これまではポーラー・メソッド(極地法)、あるいはシージ・タクティス(包囲法)と呼ばれるスタイルが一般的だった。
ベース・キャンプを築き、大量の物資を運んで、そこからいくつも前進キャンプをつくって荷物をデポし、隊員の高度順化をはかりながら、最後のアタック・キャンプからコンディションのいい隊員だけが頂上をアタックする。
ルートにはロープをフィックスして、できるだけ安全に必要な物資を上にあげられるようにする。
ルートもできるだけ難しいところを避ける。ノーマル・ルートと呼ばれ、稜線をたどることが多い。
金と時間のかかる、いわば物量作戦だが、そうでもしなければ登頂が困難だったのだ。

この方法で世界のおもだった高峰が登り尽くされたあと、より難しいルートが開拓され、さらには無酸素・短期日でいっきに登ることが始められた。
強靭な肉体と体力、トレーニングによって、重い酸素ボンベなど使わずに速く登ることができれば、このアルパイン・スタイルの方が効率がいいにきまっている。

山野井さんの登攀は、そのアルパイン・スタイルの究極にあるもので、もちろん酸素ボンベなど持たず、一人かせいぜい三人ぐらいでヒマラヤの岩壁をよじ登って山頂を目指すのだ。
高度七千メートルを超えると、酸素濃度は平地の三分の一になるという。
そんな危険なところで困難な岩壁を登ることなど、私たち一般の登山者には考えられないことだが……。
岩壁に魅かれる気持ちはわかるような気がする。
ただ、登ってみたいと思ってもとうてい無理なだけだ。


この本、山野井泰史さんのことを知るのには、うってつけのようだ。

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