【読】関野さんと星野さん
関野吉晴さんが、故 星野道夫さんと交友のあったことを知った。
そうだったのか、と嬉しくなった。
関野吉晴 『グレートジャーニー 3』 (角川文庫) P.281-
「あとがき」 より 引用
※以下、引用部分は<>でくくった。
<1996年8月中旬、南東アラスカをカヤックで移動している時、ケチカンという村で悲しいニュースが届いていた。写真家の星野道夫がカムチャッカで亡くなったという。それも彼が最も愛し、畏れていたクマに襲われたというショッキングな知らせだった。……>
<信じられない気持ち、あまりの驚きと悲しみに全身の力が抜けていく感じだった。その年の1月、東京で食事をし、アラスカに着いたら1-2ヵ月間一緒に、彼の最も好きなブルックス山脈を歩こうと約束していた。そしてカナダから南東アラスカに入る直前に、彼の住むフェアバンクスに電話をした。ちょうど私も行くことになる、ロシアの最南端チュコトから帰ってきたばかりで、そこの自然と人々の素晴らしさを興奮気味に話した。これから私と出会う前にカムチャッカに行ってくるという。……>
星野さんの最後の旅、カムチャッカ行きは、じつは当初、NATIONAL GEOGRAPHICの仕事の予定だった。
星野さんは、そのことを嬉しそうに関野さんに語っていた。
それが、(どういう事情かわからないが)日本の民放テレビ局のレポーターの仕事になった。 ―― ということも、この「あとがき」で知った。
<……その時、NATIONAL GEOGRAPHICの仕事だったら、命を失わずに済んだような気がする。テレビ取材はスタッフが多く、彼だけキャビンから出て、テントに寝て悲劇に遭ったのだ。>
星野さんがあの事故にあわなければ、関野さんとコンビで、いい仕事をしていたかもしれない。 というのも――
<私たちには多くの共通点があった。二人とも大学時代は探検部で活動し、彼が初めてアラスカに行った時、私は初めてアマゾンに行った。それぞれがそこの自然と人々の虜(とりこ)となり、その後彼はアラスカに、私は南米に、他の地域には見向きもせず、とりつかれた様に通うことになる。彼はエスキモーに似ているといわれ、私はアマゾンの先住民に似ているといわれた。国際先住民年の時にはいくつか二人の対談の申し込みがあった。美術館で「残された楽園」という写真展を共催したこともあった。>
星野さんの突然の死は、いま思っても残念でしかたがない。
関野さんの「あとがき」は、次のように締めくくられている。
<結局、彼と一緒にブルックス山脈に行くという計画はなくなった。その時、星野道夫がブルックス山脈に行くときに同行していたブッシュパイロット、ダン・ロスの夫人に紹介してもらったのが、この巻に出てくる、ユーコン川源流地帯に住むハイモ一家だ。
星野道夫もハイモ一家と親交があったが、彼の著作には出てこない。野生動物を罠でとることを生業(なりわい)にしているからだろうか。聞いてみたかった。しかし「ここの野生動物、魚、ベリー、野草を食べることは、ここの大地を食べることなんだよ」と言う、ハイモさんの自然観は星野道夫のそれと共通点が多いように思う。ハイモさんと暮らしてみて、なぜ星野道夫がブルックス山脈に惚れたのかが分かったからだ。そこにはアメリカ合衆国の一部とは思えない野生が残っていた。>
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