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2011年1月12日 (水)

【読】日本人はなぜ戦争を選んだのか(続)

加藤陽子著 『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』 を読みおえた。
書店にいくと、この本が目につくところに置いてあって、なるほど、よく読まれている本なんだろうなと思う。

Katou_sensou加藤陽子 『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』
 朝日出版社 2009/7/30発行
 414ページ 1700円(税別)

書名も装幀も秀逸だ。
書店で目にしたら、つい手にとってしまうような本で、私もそのようにして購入した。
いろいろ勉強させてもらったが、「あとがき」から引用しよう。

― あとがき より ―
<……本屋さんに行きますと、「大嘘」「二度と謝らないための」云々といった刺激的な言葉を書名に冠した近現代史の読み物が積まれているのを目にします。地理的にも歴史的にも日本と関係の深い中国や韓国と日本の関係を論じたものにこのような刺激的な惹句のものが少なくありません。>

「自虐史観」とかいって、思い込みの強い歴史観(「反・自虐史観」)で暴論を並べたてている書物のことだろう。
私も、かねがね、このての本を目にするたびに、苦々しく思っていた。
著者は続けてこう言う。
なかなか爽快。

<しかし、このような本を読み一時的に溜飲を下げても、結局のところ「あの戦争はなんだったのか」式の本に手を伸ばし続けることになりそうです。なぜそうなるかといえば、一つにはそのような本では戦争の実態を抉る「問い」が適切に設定されていないからであり、二つには、そのような本では史料とその史料が含む潜在的な情報すべてに対する公平な解釈がなされていないからです。これでは、過去の戦争を理解しえたという本当の充足感やカタルシスが結局のところ得られないので、同じような本を何度も何度も読むことになるのです。……>

このように考える著者による講義録だから、面白くないはずがない。
まさしく、「本当の充足感」「カタルシス」を感じることができる内容だった。
「あの戦争はなんだったのか」という問いを抱き続ける人(私もそのひとり)には、オススメの一冊だ。


さて、続いて読みはじめたのが、張作霖について掘り下げて書かれた、この本。

Shibutani_bazoku澁谷由里 (しぶたに・ゆり) 『馬賊で見る「満洲」』
  ― 張作霖のあゆんだ道 ―
 講談社選書メチエ(317) 2004年発行
 242ページ 1600円(税別)

この人も大学の先生だが(加藤陽子さんよりも少し若い)、文章がしっかりしていて、なおかつわかりやすく、すいすいと読める。
張作霖という、あまり人気のない(評判のよくない)人物にスポットをあてている貴重な本である。
じつは、図書館から借りてきたのだが、あまりにも今の私の関心事に近い題材なので、手もとに置いておきたくて新本を買ってしまったのだ。
(このようにして、わが家の「場所取り」である本が増えていく……)

帯の「浅田次郎氏推薦!」が泣かせる。


Itsuki_senpyou張作霖といえば、浅田次郎の小説 『中原の虹』(全四巻)の強烈な印象が尾をひいている。
話はそれるが、五木寛之の選評集『僕が出会った作家と作品』(東京書籍、2010年)に、この小説の選評が載っている。
吉川英治文学賞の第42回(2008年3月)の選評だ。

その中で、五木さんは、「一種の歴史講談である、という評もあったが、それは作者が最初から構想した手法であったにちがいない」と言って、浅田作品の「物語性」を肯定し、さらに、次のように高く評価している。

<……なみの小説家なら、とても張作霖などという一世の梟雄(きゅうゆう)を登場させる力業を試みようなどとは思わないだろう。/その世界に堂々と筆を進めた作者の大胆不敵なエネルギーは、作中の満洲馬賊たちの無頼なイメージと重なって見える。>

<パール・バックの「大地」に共通する史観を背後に秘めつつ、あくまで歴史書ではなく、小説の王道をめざした野心作として評価すべきだというのが、私の感想だった。>

浅田氏のあの小説の評価が、私のなかでぐらついていたところだったので、我が意を得たような心持ちになったのだった。
うれしいね。

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