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2011年3月31日 (木)

【読】読了、吉村昭 「関東大震災」

計画停電も実施されない日が続く。
気持ちもようやく落ちついてきたので、すこしは本が読めるようになった。

吉村昭さんの『関東大震災』を読みおえた。
これまで私がなんとなく想像していたよりも、ずっとすごい事態だったと知った。

本所被服廠跡では避難してきた群衆を猛火が襲い、三万数千人が焼死した。
Wikipediaには、焼死体が累々と積み重なっている写真が掲載されているが、とても正視できない悲惨なものだ。

「朝鮮人が来襲する」というデマも、最初は風説だったものがまたたく間に拡がり、ついには警察当局や新聞社までが事実であるかのように発表、報道した。
当局はそのような事実がないことを確認し、あわてて否定したのだが、いったん広まった噂はとどまることはなく、人々は自警団を結成して、いわゆる「朝鮮人狩り」が続発した。
震災下で、みんな頭に血がのぼっていたのだが、その陰には朝鮮人に対する根強い差別意識があった。

そんな中での、憲兵隊大尉 甘粕正彦とその部下による、大杉栄、伊藤野枝、甥 橘宗一の三名の殺害事件についても、詳しく描かれている。

とにかく、今では信じられないことが次々と起きていた。
すべて史実である。


関東大震災から72年後の1995年に阪神淡路大震災を、そして、その後20年もたたないうちに、また大きな震災を経験した私たち。
この時期に、こういう書物を読んでみるのもいいと思う。

この先、そう遠くない時期に、また大きな地震がくると思う。
考えたくはないが、この地震国では、そうなっても不思議ではない。

目先の繁栄に目がくらんでいた私たちは、ここらで、じっくり地に足をつけた生き方を考え直したいと思うのだ。

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コメント

吉村昭の「関東大震災」、図書館で借りて読んでいます。
生き残った人達の体験(証言)に、その悲惨な状況を知りました。

焼け残った一画は、住民たちの必死の消火活動。
荷物を捨てることで、助かった人達。
考えさせられます。

春の花が咲き始めましたね。
こちらでも、やっと桜が開いてきました。

まだまだ被災地の方々の苦難は続きます。
原発も心配ですね。

どうぞお元気で。

投稿: モネ | 2011年4月 3日 (日) 23時50分

>モネさん
想像を絶する被害だったのですね。
本所被服廠跡というのは、いまの両国国技館、江戸東京博物館のある一帯だったことを知りました。
私が毎日、通勤電車でながめているあたりです。
いまは平和な一角ですが……。

吉村昭さんの小説は、どれも淡々と事実を語る、といった趣で、私は好きです。
『三陸海岸大津波』(文春文庫)の新本をネット注文(e-hon)で入手できるようになりました。
近日中に読んでみようと思います。

桜、ようやく咲きはじめましたが、また寒くなって、いっとき「おあずけ」ですね。

投稿: やまおじさん | 2011年4月 4日 (月) 21時14分

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