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2011年4月26日 (火)

【読】船戸さんの原発観 「原発に私は否と言う」

すこし前のこと。
今度の震災直後に、古本屋で一冊の本をみつけた。

広瀬隆 編著
 『原発がとまった日 ―1億2000万人のための脱原発読本』
 ダイヤモンド社 1989年4月発行


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この本のなかに、「私は原発に反対です」というコーナーがあり、各界の44人ほどが短文を寄せている。
私の知っている人では、山本コウタロー、C・W・ニコル、久和ひとみ、吉田ルイ子、見城美枝子、友川かずき、松下竜一、志水辰夫、J・K・ガルブレイス、三浦綾子、西丸震也、鎌田慧、松谷みよ子、杉浦明平、景山民夫、……といった名前がみられる。
船戸与一さんも短い文章を寄せている。

いかにも船戸さんらしい文章だが、ちょっと物々しすぎる感じもする。
22年前のものだが、船戸さんが危惧した方向に進まないことを願う。

今回の原発事故を機に、脱・原発の機運がたかまるだろう。
安全神話は完全に崩れたから。
引き返すなら今、という気がするのだが。
それでも、いまだに原発擁護・推進派の妙な発言がちらほら聞こえるのが、私には不思議でならない。
今こそ「否(ノー)」と言いたい。

― 『原発がとまった日』 ダイヤモンド社 1989年 より (P.56) ―

 「俺ハオマエヲ売リ、オマエハ俺ヲ売ル」  船戸与一(作家)

<技術的なことはいざ知らず、原発が主要エネルギーとなった時代の社会的状況は容易に想像できる。安全性を確保するためと称して、国家は社会全体にたいして息の詰まるような監視体制を敷くのだ。危険分子の弁別が急がれる。とっぴなことを考えたがる連中が締めあげられる。そして、やがては個々の暴力はもちろんのこと、他愛もない異議の申し立てさえ完全に封じ込められるだろう。そのやりかたは陰湿を極めるにちがいない。膨大な量の監獄および精神病棟の設置と万人にたいする万人のスパイ化。これが原発国家の社会的未来像だ。すなわち、G・オーウェルの1984年の何層倍もの不快でねばねばとした世のなかにわれわれは暮すことになるだろう。そう、生イ茂ル栗ノ木ノシタデ、俺ハオマエヲ売リ、オマエハ俺ヲ売ルのである。いや、言いなおそう。実験室デ生育シタ観葉植物ノソバデ、俺ハオマエヲ売リ、オマエハ俺ヲ売ルのだ。原発によって分け与えられるエネルギーの代償にわれわれは石のように動かなくなり、貝のように黙りこむしかなくなるにちがいない。魂の衰滅。精神の死。人々のあいだではもういかなる物語も活き活きとは産みだされてはこないのだ。百歩譲ってかりに原発推進派の連中が言うように技術的には原発の安全性が保たれうるとしても、そんな社会で暮したいだろうか?まっぴらだ。当然ながら、原発に私は否と言う。>


「私は原発に反対です」
寄稿文のタイトルだけ、あげておこう。

山本コウタロー「原発いらない」/C・W・ニコル「キノコを食べないで」/久和ひとみ「ささやかな知恵で脱原発」/木村迪夫「ひき裂かれた村」/高木茂男「原子力批判の高まりを」/大川隆一「経営者も原発に反対する」/船戸与一「俺ハオマエヲ売リ、オマエハ俺ヲ売ル」/山田征「ただの主婦にできること」/加藤哲夫「すべては夢想から始まる」/吉田ルイ子「北海道の花たちよ!」/見城美枝子「赤ちゃんよ、永遠に」/中村易世「『広島・長崎』四三年目の現実」/輿石正「『月』と『原発』」/白坂葉子「生命を脅かす原発」/友川かずき「この命、預けられない」/星寛治「有機農業に原発はなじまない」/ジャン・ユンカーマン「『原爆』の神話と『原発』の神話」/松下竜一「悪夢のような原発社会」/加賀善康「親として原発を許せない」/遠藤京子「大気や水の悲鳴が聞こえる」/志水辰夫「『朝シャン』と『原発』」/三輪茂雄「つぎは人間の番ですよ」/大倉陽子「古里の自然を残そう」/山口玲子「子どもたちの安全を守りたい」/志子田悦郎「障害者の立場からの反原発」/J・K・ガルブレイス「武装解除」/三浦綾子「預言『火によって亡ぶ』」/松本俊治「丁半博打はやめてくれ!」/安部富士男「幼稚園の森の動物たち」/舘内尚子「地球のなくなる日まで」/毛利子来「子どもの健康と社会」/西丸震也「10年前の生活にもどって」/渋谷定輔「現代の『惨酷な価値』」/鎌田慧「取り返しのつかない『犯罪』」/トーマス・バニヤッカ「ホビの預言」/松谷みよ子「検知器は明け方にひどく鳴る」/バーニー・リチャーズ「ニュージーランドに核はいらない」/長須祥行「総毛立つような計画を排す」/杉浦明平「浜岡原発が大事故起こせば」/飯沼二郎「政府にあやまちを認めさせる」/寺島アキ子「欲望肥大症的な発想」/山本芳正「『100匹目のサル』獲得まで」/井上良子「スウェーデンの勇気を見習おう」/景山民夫「外科手術と漢方薬でもう一押し」

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コメント

やまおじさん ご無沙汰しています。
「原発は否!」同感です。今回の統一選挙で「原発反対」を掲げたのは「社民党」「共産党」のみで政治家の頭は完全に民意と乖離しています。私もやまおじさんの様にもっと声を上げなければと思っています。

投稿: mune | 2011年4月26日 (火) 21時19分

>muneさん
コメント、ありがとうございます。
原発に否というか、諾というか、誰もが態度を明確にして議論を進めないと始まらないと思っています。
(私は「否」です)
原発擁護派の発言をネットで見たりしていますが、彼らの論拠はめちゃくちゃ(または感情論)です。

今現在、事故進行中の福島第一原発(廃炉になることは決定)をどうするのか。
その周辺の住民の生活をどうするのか。
残りの原発をどうするのか。
原発がなくなると職を失う人も多いのは確かですから(原発擁護派は、だから原発は無くせないと言う)、具体的な対策を講じないといけません。

このあたりの議論を、「前向きに」国政レベルでやってもらいたいのですが、首相を降ろすとか降ろさないとか、あいかわらずそんなレベルでがっかりです。

反原発派の世田谷区長当選に驚きましたが、これからが勝負ですね。
東京の電力が、東京外(東電の営業区域外)にある原発に依存していることを忘れず、しかし、「原発は否」と言い続けたいです。

投稿: やまおじさん | 2011年4月26日 (火) 21時41分

少し追記。
(本文で書けばいいのですが、コメントをいただいてから自分の考えがはっきりしてきた、ということもあります)

24日の東京新聞(こちら特報部)の記事で、自民党の河野太郎氏が「脱原発」の立場を明言していることを知りました。
彼はそのために、自民党内でも風当たりが強いようですが。
この際、党派を超えて、自民党時代から今の民主党政権まで続いている「原発推進」の動きを見直してもらいたいものです。
新聞やテレビのメディアも、ちょっとおかしいですね。
もっと批判的な報道があっていいと思うのですが……。

「脱原発」は大事業ですから、ここらで国民投票でもやってみては、などと思ってしまいます。

何度も書きますが、私は「原発、否」の立場です。
問題は、そこから先ですね。

投稿: やまおじさん | 2011年4月26日 (火) 22時01分

この本に作家杉浦明平の名があったこと、驚きました。彼の文章で非常に好きなものがあり、その姿勢がここに繋がっているのでしょう。この本の紹介、ありがとうございます。

投稿: 玄柊 | 2011年4月26日 (火) 23時11分

>玄柊さん
杉浦明平さんと三浦綾子さんの部分を、コピーして送りますね。

投稿: やまおじさん | 2011年4月27日 (水) 21時24分

 「生イ茂ル栗ノ木ノ下デ・・・・」というのは、どこからの引用なのでしょうね? どこかで眼にしたような気もするのですが。

投稿: みやこ | 2011年4月28日 (木) 14時06分

>みやこさん
おひさしぶりです。
あの引用は、ジョージ・オーウェルの『1984年』かららしいです。
私は読んでいませんが(ずっと前に持っていたのですが、とうとう読まないうちにどこかに行ってしまいました)、Wikipediaやネットの記事で知りました。

「生い茂る栗の木の下で/俺はお前を売り、お前は俺を売った、/奴らはあそこに横たわり、俺たちはここに横たわる/生い茂る栗の木の下で。」

有名な「大きな栗の木の下で」の替え歌だそうです。

http://www.youtube.com/watch?v=o6_8hkD_y04

投稿: やまおじさん | 2011年4月28日 (木) 22時01分

 オーウェルだったのですかあ。大昔に斜め読みして、ほとんど忘れていますねぇ・・。替え歌で歌うのは、よっ酔ったときでないと、歌い難いなあ。船戸さんの怒りの感情は 今こそ皆に伝染させたいです。

投稿: みやこ | 2011年4月29日 (金) 07時54分

>みやこさん
船戸さんはいいですね。
『国家と犯罪』(小学館文庫)おすすめします。

大きな栗の木の下で、は原作(といっても翻訳)を読まないとわからないかも。
どこかにしまってあるかもしれないので、探してみようかな。

投稿: やまおじさん | 2011年4月29日 (金) 09時16分

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