【雑】中本ムツ子さんが亡くなった……
参加しているSNS(mixi)の、マイミクさんの日記で知った。
残念なことだ。
千歳アイヌ文化伝承保存会前会長の中本ムツ子さん死去:苫小牧民報社
http://www.tomamin.co.jp/2011c/c11042902.html
中本ムツ子さん死去:関係者から惜しむ声 /北海道 - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/hokkaido/shakai/news/20110430ddlk01040170000c.html
中本ムツ子さんのことは、『アイヌ神謡集をうたう』 (草風館)というCDの謡い手として知っていた。
もちろん面識はないが、私がひそかに敬愛していた方だ。
知里幸恵さんの 『アイヌ神謡集』 に書かれたユーカラ(カムイユカラ)を、本来の「謡(うた)」として「復元」した三枚組のすばらしいアルバムである。
私はこれを聴いたとき、「アイヌの人たちはこんなふうにユーカラをうたっていたのか」と、深い感銘をうけた。
このCDのことを、私のWebサイトで紹介したことがある。
晴れときどき曇りのち温泉 ― 資料蔵(アイヌ資料 4)
http://yamaoji-hp.web.infoseek.co.jp/k_ainu4.html#shin-you_cd
― その中から 抜粋 ―
このCDで『アイヌ神謡集』の13編を〝謡〟として再現した中本ムツ子は、『知里幸恵「アイヌ神謡集」への道』(東京書籍/2003)に寄せた「『アイヌ神謡集』をうたう」という一文で、次のように語っている。
すこし長くなるが、その一部を紹介したい。
私の母が生きていれば今年で九十九歳になります。 知里幸恵さんと一歳しか違いません。 ですから幸恵さんは母と同じころ生まれ、同じころ青春時代をむかえ、同じ時代の空気を吸って生きた人なのだと思いました。(略)
母は小学校に通っていたころ同じクラスの生徒から「あんたは旧土人、私たちは大和民族」などと言われてとても辛かったと語っていました。 幸恵さんも辛い思いをしたことを後に本で読んで涙がこぼれました。(略)
私は子供のときからアイヌは劣った民族だということを刷り込まれてきたので、アイヌから逃げるようにして故郷を離れ、札幌で暮らしていました。 そして、五十歳を過ぎてからようやく故郷の千歳の蘭越に戻り、そこでアイヌ文化にもう一度目を向けるようになりました。 それまでは、アイヌに関する本を読むことはしませんでしたが、故郷に帰ってから友人に知里幸恵さんの『アイヌ神謡集』を貸してもらったことがあります。 ローマ字で書かれたアイヌ語は全く分かりませんでしたが、序文の内容にとても共感をおもえました。(略)
私の子供の頃、家にも神謡やウエペケレを語る人が来て、語っていました。 でも私はあんな単調なもののどこがいいんだろうと思って、小説や外国の翻訳文学を読んでいました。 母はアイヌ語で神謡やウエペケレ、シノッチャなども出来た人でした。 仕事に出た先で母は若い人たちに日本語に訳して話を聞かせてやっていたそうです。 (略) 一方、私は、母をバカにしたような気持ちでアイヌ文化を冷ややかに見ていました。 そんな私だったのですが、末にまさか神謡を語るようになるなどとは母には想像も出来なかったことでしょう。 しかし、母は驚きながらもそんな自分の娘を嬉しそうに見ていることと思います。 母とほぼ同じ歳の知里幸恵さんの残したカムイユカラ(神謡)を歌うなどとはきっと感無量のことでしょう。
千歳の中本さんがアイヌ物語を創作:苫小牧民報社 (2010/4/20)
http://www.tomamin.co.jp/2010c/c10042001.html
| 固定リンク
「【雑】きまぐれ日誌」カテゴリの記事
- 【雑】ゆっくりと春から初夏へ(2023.04.24)
- 【雑】再録――歌はだれのものか(2022.12.26)
- 【雑】小松由佳さんのこと(2022.12.04)
- 【雑】小平図書館友の会のウェブサイト(2022.11.02)
- 【雑】ひとあし早い秋の空(2022.08.19)
「アイヌ民族・アイヌ語」カテゴリの記事
- 【読】いつも読みたい本ばかり(2022年総集編に代えて)(2022.12.25)
- 【読】「ゴールデンカムイ」31巻通読(2022.09.08)
- 【読】Book Cover Challenge 6冊目(2020.05.11)
- 【読】Book Cover Challenge 3冊目(2020.05.10)
- 【読】Book Cover Challenge 1冊目(2020.05.10)
コメント
中本ムツ子さんが亡くなったこと、北海道に住む私も知りませんでした。昨年の今頃、ロシア人の友人と白老を訪問しアイヌの人達と触れ合いがあった事を思い出しました。
投稿: 玄柊 | 2011年5月 5日 (木) 20時44分
>玄柊さん
萱野茂さんといい、中本ムツ子さんといい、生前にお会いしてお話をうかがいたかった人でした。
投稿: やまおじさん | 2011年5月 5日 (木) 20時48分