【読】気になっていた本を
『千年震災』(都司嘉宣/ダイヤモンド社)を読みはじめてすぐ、内澤旬子さんの気になっていた本を思いだし、図書館から借りて読んでいる。
イラストも文章も味があって、私の好きな人だ。
『センセイの書斎』 ―イラストルポ「本」のある仕事場―
内澤旬子 文・イラストレーション
幻戯書房 2006年 163ページ 2200円(税別)
河出書房新社(河出文庫) 2011年 240ページ 788円(税別)
文庫の装幀の方が楽しい。
私が借りたのは単行本(左)。
本日、読了。
同時に何冊かの本を読むことに、なんとなく抵抗があったのだが、内澤さんのこんな言葉を読んで気が楽になった。
好きなように読めばいいのだ。
<本にはいろんな読み方がある。枕元に一冊だけ置いて、毎晩毎晩その本だけを繰り返して読んだっていいし、一度に五冊を同時進行で読んだっていい。そんなこと誰かに習う必要もない。> (内澤旬子 『センセイの書斎』)
もう一冊は、これから読むところ。
『身体のいいなり』 (からだのいいなり)
内澤旬子
朝日新聞出版 2010年 215ページ 1300円(税別)
内澤さんは、乳癌で「二度の部分切除を経て乳腺全摘出、そして乳房再建と手術を重ね」た経験をもつ。
(38歳でステージIの乳癌に罹患)
その体験記なのだが、いわゆる「闘病記」にはしたくなかったという。
以下、「はじめに」より。
<今年で43歳になった。この数年の身辺変化のようなものを書いてほしいと言われ、しばらく迷っていた。書くことがないのではない。この五年の間に私の身体(からだ)とそのまわりに起きたことはとても奇妙で、自分でもおもしろいと思う。……癌治療について書くのを避けることはできない。だが、いわゆる闘病記になってしまうことは避けたかった。>
<……癌に罹患し、治療をすることのすべてを不治の病と闘うと表現する人がとても多い。しかしそれはあくまでもステージIII以上に進行した状態の癌の治療に向き合う場合だろう。初期癌の治療で「闘う」と言われても、気恥ずかしく申し訳ない気持ちで一杯になる。>
<……現在にいたるまで、癌と闘っていると感じたことはほとんどない。……それなりに大変な思いはした。けれども手術のひとつひとつ自体は盲腸並みに簡単なものだったように思う。盲腸の手術を受けたことがないから本当のところはわからないのだが。ともかく世の中にはもっともっと苦しい、それこそ文字通りの「闘病生活」を送っている人がたくさんいる。それに比べたら私の癌なぞ……>
さらに、内澤さんの真骨頂は、次のように言ってのけるところにある。
「人間なんてどうせ死ぬ」
だから、私はこの人が好きなのだ。
<それになにより顰蹙を買うことを承知で言わせていただくと、人間なんてどうせ死ぬし、ほっとけばいつか病気に罹る可能性の方が高い生き物なのに、なぜみんな致死性の病気のことになると深刻になり、治りたがり、感動したがり、その体験談を読みたがるのかが実のところ自分にはよくわからないのだ。そんな体験談なぞ癌になる前から読みたいと思ったこともない。>
それでもなお、このような体験談を書こうという気になったのは、
<癌治療そのものだけではなく、今現在の自分が癌以前の自分と比べて異常に元気になってしまった経緯もすべて書いてほしいと言われた>
からだという。
あとは、読んでのお楽しみだ。
内澤旬子さんのブログ
内澤旬子 空礫絵日記
http://kemonomici.exblog.jp/
私の好きな本は、下の二冊。
『世界屠畜紀行』(2007年/解放出版社)は文庫になったんだな(2011年5月/角川文庫)。
『東方見便録』(1998年/小学館)も文庫化されているが(2001年/文春文庫)、新本は在庫切れ。私は古本を手に入れた。
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コメント
内澤さんの「世界屠畜紀行」非常に面白い内容でした。
これと関連して、映画「いのちの食べ方」も面白いですよ。
赤坂憲雄経由で検索していたら、なかなか興味あるブログに遭遇しました。
はじめまして。
投稿: バク | 2011年9月 4日 (日) 07時37分
>バクさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
ご紹介の映画は知りませんでした。
ちょっと調べてみましたが、興味ぶかいものでしたので機会をみつけて観賞できればと思います。
映画の公式サイト
http://www.espace-sarou.co.jp/inochi/
投稿: やまおじさん | 2011年9月 4日 (日) 08時40分
はじめまして。
色々参考にさせていただきました。
ありがとうございます。
投稿: http://www.kenskey.com/smles/ | 2014年1月31日 (金) 15時36分