【読】パンツ本
きのう、大型「新古書店」(ブックセンターいとう)でみつけた本。
読みはじめると、これがとても面白い。
『パンツの面目ふんどしの沽券』 米原万里
ちくま文庫 2008年 (親本 2005年 ちくま書房)
302ページ 640円(税別)
米原万里さん、名前だけは知っていたが、著書を読むのははじめて。
1950年生まれというから、私とほぼ同年代だ。
2006年に亡くなっている。
― 本書カバーより ―
十字架上のイエス・キリストの下着はパンツか、ふんどしか、腰巻か。幼少期に芽ばえた疑問を心の中であたため続け、長じて作家となった著者は、パンツ・ふんどしをめぐる世界史的な謎の解明に挑むことになる。前人未到の試みとして「ちくま」連載中から話題騒然となり、没後、「最も米原さんらしい本」と評される、抱腹絶倒&禁断のエッセイ。
何日か前に、角田光代・岡崎武志 共著 『古本道場』 (ポプラ社)を読み、その中に米原万里さんのことが書かれていたのが、頭の片隅に残っていたのだろう。
文庫棚を漁っていた時、米原万里という名前が目についた。
本のタイトルに魅かれて思わず手にとった、というわけだ。
私は、古本マニアにはとうていなれないと思うが、本との出会いという楽しみは捨てがたい。
『古本道場』 角田光代・岡崎武志
ポプラ社 2005年
221ページ 1400円(税別)
角田さんの「古本屋修行」の中に、当時、鎌倉に住んでいた米原万里さんの自宅を訪ねるシーンがある。
この文章も、とてもいいのだった。
<米原万里さん。プラハで育ったロシア語ぺらぺらの美女である。…・(中略)…
どどんとしたお屋敷街をぐんぐん歩いていくと、どどんと米原さんちはある。とんでもなくでかいピレネー犬二匹、ふつうにばかでかい犬一匹、プラス猫五匹とともに米原さんは暮らしている。犬も猫もたいへんひとなつこくて、毛の生えた動物好きの私には、パラダイスのような家である。犬とじゃれ、猫とじゃれ、なんだか楽しくって頭がへんになりそうなくらい興奮していると、米原さんが夕ごはんの支度をしてくれた。スモークサーモンのサラダにボルシチ、ビーフストロガノフの夕ごはんである。ボルシチにはちゃんとビーツが入っていて、ビーフストロガノフはサンクトペテルブルクで食べたのとおんなじ味がした。
犬も猫も本当に心地よさげに暮らす、すてきなおうちだった。旅をしていて、偶然入って大当たりだったホテルにいるような錯覚を抱いた。米原さんちのテーブルにもテーブル下にも本が山積みになっていた。犬も猫も、本の山を崩さない。作家と暮らしているってきっと自覚しているんだろう。
鎌倉の町なかで、白熊を見かけたらそれは米原さんちのナナちゃんとボンちゃんです。熊ではなくてわんちゃんです。> (『古本道場』 P.192)
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コメント
そうか。喰わず嫌いはいけないね。日本共産党を嫌っているからついでに嫌っていた。米原万理。彼らが「原子力の平和利用はいい」ともいっていたし。チュルノブイリ事故を過小評価していたし。今度、読んでみます。
忌野も米原もがんなんですね。再発したら、もう手が付けられないんですよ、がんは。細胞が自在に変化する。医者は「気休め療法としての抗がん剤を使いますか」と尋ねるのが精いっぱい。家族もその段階から「死を受け入れる」心の準備に精いっぱい。
だから、のうぜん蔓の季節は嫌い。
投稿: ろくろくび | 2011年7月18日 (月) 13時27分
>ろくろくび さん
私は知らなかったのですが、ネットで調べてみると面白い経歴の持ち主だったようですね。
原発についは、今度の事故が起こるまで、賛成の立場をとっていた人を責められない気がします。
私もほとんど無関心でしたし。
この本は「目から鱗」でした。
『東方見便録』の内澤旬子さんに通じる、自由な発想を持った人だと感じました。
他の著書を読んでみようとまでは思いませんが。
投稿: やまおじさん | 2011年7月18日 (月) 14時00分