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2011年9月19日 (月)

【読】【震】池澤夏樹 著 「春を恨んだりはしない」

池澤夏樹さんの新刊を読んだ。
120ページほどの薄い本だが、感銘を受けた。

3月11日の震災の後、五か月間に新聞・雑誌に書いた文章がベースになっているもの。

池澤夏樹 著/鷲尾和彦 写真
 『春を恨んだりはしない―震災をめぐって考えたこと』
  中央公論新社 2011/9/11発行
  123ページ 1200円(税別)

震災直後から池澤さんが何度も被災地に足を運んでいたことを知った。
けっしてシニカルにならずに、いかにも池澤さんらしい視線で震災を直視し、深く考える文章が、読む者に希望を与えてくれる。

「シニカルにならない」という姿勢を保つことは、なかなかできないことかもしれない。
私自身を省みると、時として皮肉な目でものごとを見て批判しがちだった。
この本を読んで、おおいに反省したのだった。

― 本書 「8 政治に何ができるか」 P.99 より ―
 <批判するのはたやすい。ほとんどの政策は愚策である、と遠方から総論で片付けることもできるだろう。
 愚民の代表が権力を求め、利に溺れ、夢想に踊り、現実に足を引っ張られながらなんとか進めるもの。
 しかし、災害が起こって次々に策を講じなければならない時にシニカルな総論を言っても始まらない。我々はみな圏外に立つ評論家ではなく当事者なのだ。>


― 帯より ―
 日本のこれからを考えるために
  旅する作家の機動力、物理の徒の知見
  持てる力の全てを注ぎ込み
  震災の現実を多面的にとらえる類書ない一冊

― あとがき 「書き終えて」 より ―
 <作家になって長いが、こんな風に本を書いたことはなかった。
 書かなければならないことがたくさんあるはずなのに、いざ書き始めてみるとなかなか文章が出てこない。書いているうちに間違った道に入りこんで戻り、頭を抱える。その合間に何度となく被災地へ行って走り回り、人に会って何かを知ろうとする。だが大事なものがどうしても掴めない。焦っている自分をなだめる。>
 <ぼくは震災の全体像を描きたかった。自然の脅威から、社会の非力を経て、一人一人の被災者の悲嘆、支援に奔走する人たちの努力などの全部を書きたかった。>
 <つまりぼくはこの震災を機にこれまでに考えてきたことをもう一度改めて考えたのだ。瓦礫の光景に促されたと言ってもいい。だから薄い本なのにこんなに手間がかかった。ここ数か月、これ以外のことは何もしていなかったような気がする。>


本書は書き下ろしだが、ベースになった文章(新聞・雑誌等に発表)は以下のとおり。

「要所に賢者 日本は変わる」 (読売新聞 2011/4/13付)
「新しい方程式が必要とされている」 (『kotoba』 2011年夏号、集英社)
「春を恨むことはできるか」 (『すばる』 2011年8月号、集英社)
「昔、原発というものがあった」 (『脱原発社会を創る30人の提言』 2011年7月、コモンズ)
連載コラム 「終わりと始まり」 (朝日新聞 2011/4/5付~8/2付)
「3・11を心に刻んで」 (岩波書店ホームページ 2011/7/11更新)

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コメント

この本、まだ手にとっていませんが、是非手にれようと思います。紹介感謝。

投稿: 玄柊 | 2011年9月21日 (水) 06時53分

>玄柊さん
いい本です。ぜひ。

投稿: やまおじさん | 2011年9月22日 (木) 10時11分

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