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2011年10月19日 (水)

【読】面白半分(続)

1970年代に一世を風靡した雑誌 「面白半分」 の編集・発行者、佐藤嘉尚さんの本。

佐藤嘉尚著 『「面白半分」の作家たち―70年代元祖サブカル雑誌の日々』 (集英社新書) には、おもしろい話がたくさん載っている。

そのなかの一つ。
例の「四畳半襖の下張」裁判、1974年4月16日の第七回公判で弁護側証人に立った、開高健の証言。
開高健という作家の人柄が感じられる。
少し長いが、タメになるハナシなので、紹介したい。

 『面白半分』 臨時増刊 『「四畳半襖の下張」裁判証言全記録・そのI』(1974年)より
 著者=佐藤嘉尚氏引用 (本書 P.107-)

開高 ここに列席の皆さんは平気でチャンコ鍋ということばをお使いになり、まだ恋や男性を知らないバージンの人もたくさんいるかと愚察しますが、その方だって、顔を赤らめることなくチャンコを食べたとか、冬の晩はチャンコ屋へはいっていかれると思う。しかし小生の研究によりますと、江戸が東京になったころの東京の下町一帯では女性の大事なあそこのことをチャンコと呼んでいた。
  (略)
 十二、三年前、北海道の積丹半島に行ったことがあります。宿屋の仲居さんがその地に伝わるいくつもの歌を教えてくれたのですが、そのひとつに「鏡またいで、うがチャンコながめ、うがチャンコながめて、うが笑う。エンヤサノドッコイショ」という歌がありました。「うが」というのは「自分の」という意味です。鏡をまたいで自分のチャンコをながめて、自分が笑うという、万葉歌人が見たら拍手しそうなおおらかなナルシシズムを歌ったものだと私は思います(笑)。 …後略…>

<もっとひどい例は私自身でありまして、私の名前はペンネームでも源氏名でもなく、父母祖父祖母から受け継いだ民族遺産です。開高健の「開」の字が、江戸時代の戯れ本や春本では、まさしくチャンコと同じように女性の聖なる部分を示すのです(笑)。そうすると私の名前は「開が高くて健やか」(爆笑)というひどい名前になるのではないかと思い、…中略…
 小説家になってから島尾敏雄さんや吉行淳之介さんといった学のある人たちに、よくもまあ、こんな破廉恥な名前を名のっていられるもんだ、今後どうするつもりだ(爆笑)、といわれました。 …後略…>

<このクダリなどは傍聴人はもとより裁判官、検察官、弁護士、被告、廷吏のおじさん、速記の人たちまで、全員大爆笑という感じだった。法廷にあんなに笑いが湧きあがったのは見たことがないと弁護士さんたちもいっていた。
 法廷に笑いの渦を巻き起こした当のご本人開高は、そのあとでつぎのように書いている。
  …(中略)…
 法廷の「聴衆」に散々サービスして、ご本人はクタクタに疲れていたのだ。>


「四畳半襖の下張」裁判など、いまやご存じない方も多いと思うので、おせっかいながら、参考まで。

「四畳半襖の下張事件」 ―Wikipediaより―
 月刊誌『面白半分』の編集長をしていた作家野坂昭如は、永井荷風の作とされる戯作『四畳半襖の下張』を同誌1972年7月号に掲載した。これについて、刑法175条のわいせつ文書販売の罪に当たるとされ、野坂と同誌の社長・佐藤嘉尚が起訴された。被告人側は丸谷才一を特別弁護人に選任し、五木寛之、井上ひさし、吉行淳之介、開高健、有吉佐和子ら著名作家を次々と証人申請して争い、マスコミの話題を集めたが、第一審、第二審とも有罪(野坂に罰金10万円、社長に罰金15万円)としたため、被告人側が上告した。
 最高裁判決 上告棄却。最高裁判所昭和55年[1980年]11月28日第二小法廷判決は、チャタレー事件判決を踏襲する形で、そのわいせつ性の判断について下記のように判示した。
「文書のわいせつ性の判断にあたつては、当該文書の性に関する露骨で詳細な描写叙述の程度とその手法、右描写叙述の文書全体に占める比重、文書に表現された思想等と右描写叙述との関連性、文書の構成や展開、さらには芸術性・思想性等による性的刺激の緩和の程度、これらの観点から該文書を全体としてみたときに、主として、読者の好色的興味にうつたえるものと認められるか否かなどの諸点を検討することが必要であり、これらの事情を総合し、その時代の健全な社会通念に照らして、それが「徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」(前掲最高裁昭和三二年三月一三日大法廷判決〔チャタレー事件判決〕参照)といえるか否かを決すべきである。」

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コメント

私の記憶違いかもしれませんが、もしかして「腰巻大賞」というのも面白半分で野坂さんが企画したのではなかったでしょうか。
もしそうであればそれについても記述お願いします。

投稿: ギー | 2011年10月19日 (水) 16時39分

>ギー さん
「日本腰巻文学大賞」は、四代目の編集長・五木寛之サンの発案です。
せっかくですので(笑)、少し書いておきましょうか。

投稿: やまおじさん | 2011年10月19日 (水) 17時13分

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