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2012年2月13日 (月)

【読】「カムイ伝」のウソ?

にわかに身辺慌ただしくなり、なかなか本が読めなくなったのだが……。
ずっと読み続けている古文書入門書に、興味ぶかい話が書いてあった。

白土三平 作 『カムイ伝』 に描かれている江戸時代の村の描写のまちがいについて、である。
江戸時代の農民(百姓)は文字を読むことがを禁じられていた、というのは白土氏のフィクションではないだろうか、と私も思う。

<……漫画やテレビで描かれる江戸時代像は、ときどき実態とは正反対に描かれています。/たとえば、白土三平氏の 『カムイ伝』 (小学館文庫) という漫画があります。江戸時代の村の生活を描写したこの作品は、江戸時代の庶民へのまなざしを高めた、とても意義深い作品です。/それでもこの漫画では 「百姓の読書は禁止」 されているという設定で、村に高札を立てても、村で文字を読めるのは庄屋のみである、という場面が設定されています。>

<もちろん、漫画に出てくる高札は、ご存じのように、歴史的に実在し、庶民に領主の命令を知らせるための札です。しかし、もし、漫画の設定にあるように、多くの庶民が文字を知らないのならば、そもそも高札など立てる必要はないはずですし、領主が読み書きを禁じているのならば、なおさらのことです。時代考証の論理というより、漫画の筋書きの中の論理が矛盾しています。>

<とはいえ、これは漫画ですから、その作品の本質の評価とは関係のないことです。あまりうるさいことをいうことには、わたしは賛成しません。>

 ― 高尾善希 著 『やさしい古文書の読み方』 日本実業出版社(2011年) P.94-95
   「漫画 『カムイ伝』 の矛盾」 より ―

私が柄にもなく 「古文書講座」 などに通っているのも、江戸時代の庶民のほんとうの生活を知りたい、という欲求からきているところがある。

私も著者(高尾氏)とおなじように、『カムイ伝』 に文句を言うつもりはない。
全巻をきちんと読んだことがないので、近いうちに読みなおしてみるつもりでもある。
(古本屋を探しまわって小学館文庫版を全巻揃えたのだが、なかなか読めないでいる)

私たちが江戸時代の生活について持っているイメージは、かなりいい加減なものではないだろうか。
かねがね、そんな感じをもっていたので、古文書の世界から江戸時代を見直してみたいとも思う。

そういえば、田中優子さんが書いた 『カムイ伝講義』 も面白そうだが、まだ読んでいないなぁ。

【2012/2/15追記】
高尾善希(たかお・よしき)さんのブログ
 江戸時代研究の休み時間
  http://takaoyoshiki.cocolog-nifty.com/
「ワン・コイン古文書講座」というものを開催なさっているようだ。
場所が川崎市宮前区なので、ちょっと通えそうもないが、面白そう。

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コメント

普段ドラマや映画で見てる時代劇も違うのかもしれないですもんね。
ナンバ歩きとか知ったときは驚きました。
やまおじさんの研究熱心さ、すごいです。

もうお読みになられたかもしれませんが、「百姓たちの江戸時代」(ちくまプリマー新書)という本があるみたいですよ^^

投稿: はっせー | 2012年2月14日 (火) 18時41分

はっせー さん
研究というほどのことではありませんが、江戸時代に関心があります。
興味ぶかい本を教えてくださって、ありがとうございます。
図書館に置いてあるようですので、こんど読んでみますね。

投稿: やまおじさん | 2012年2月14日 (火) 19時02分

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