【読】読了、船戸与一「満州国演義7 雷の波濤」
二週間かけて、ようやく読了。
船戸与一 『満州国演義7 雷の波濤』
新潮社 2012/6/20発行
477ページ 2,000円(税別)
広大なスケールの書き下ろし長編、7巻目。
ここでも「船戸節」はいっこうに衰えをみせない。
ひさしぶりに小説を読む悦びにひたった。
船戸与一の小説は、暴力、殺人、性描写が激しいため、誰にでもすすめるわけにはいかないが、「船戸史観」とでも呼びたいしっかりした歴史観を土台にしていて、読み応えがある。
『満州国演義』の一巻目、「風の払暁」は、昭和3年6月4日の張作霖爆殺にはじまる。
敷島家という架空の名家に生まれた四兄弟、敷島太郎、次郎、三郎、四郎。
長男は「満州」在住のエリート外交官。
次男は日本を捨てて満蒙の地で馬賊の長となり、放浪を続ける。
三男は優秀な陸軍憲兵として、やはり大陸で活躍する。
四男だけは国内で無政府主義に傾倒し、劇団に所属していたが、これも大陸に渡る。
この四人と、それをとり巻く奇怪な人間関係を軸に、日中戦争からアジア・太平洋戦争の泥沼に足を踏み入れていく日本の「あの戦争」の時代が描かれる。
実在の軍人、政治家、民間人も多数登場するが、それらは直接姿を見せず、小説の登場人物たちの口を借りて描かれている。
フィクションといえばフィクションだが、ベースは史実だ。
作者は、おそらく、膨大な史料をたんねんに調べているはず。
(最終巻に参考資料が一挙掲載されるという)
私の手もとには、「あの戦争」関係の本がたくさんあるが、さしあたって読んでみようと考えているものをあげておく(再読を含む)。
いずれも新書。
なかなか本も読めないが……。
『満州国演義』にかける船戸さんの意気込みは、下の書籍で。
この書籍について書いた、四年ほど前の私のブログ記事も、ご参考まで。
2009年1月25日(日) 【読】船戸与一の流儀
http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-02c1.html
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