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2013年5月 5日 (日)

【歩】昼咲月見草

近所を歩いていると、道ばたに淡いピンクの可憐な花が目につく。
図鑑で調べたら、夏の花の巻に載っていた。

ヒルザキツキミソウ
 アカバナ科マツヨイグサ属
 北アメリカ原産の多年草

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太宰治が「富嶽百景」で、「富士には月見草がよく似合う」と書いた「月見草」は、ほんとうなら白い花で夕方開く。
黄色い「ツキミソウ」と呼ばれているのは、マツヨイグサ(待宵草)で、オオマツヨイグサは各地に繁殖している。
ツキミソウは北アメリカ原産、マツヨイグサはチリ原産、オオマツヨイグサも北アメリカ原産、と図鑑にはある。

太宰治が書いている「黄金色の月見草」は、月見草ではなくてマツヨイグサのことなのだろう。
これは、植物好きのあいだではよく言われる話。

― 太宰治 「富嶽百景」 青空文庫 より ―
http://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/270_14914.html

 <河口局から郵便物を受け取り、またバスにゆられて峠の茶屋に引返す途中、私のすぐとなりに、濃い茶色の被布を着た青白い端正の顔の、六十歳くらゐ、私の母とよく似た老婆がしやんと坐つてゐて、女車掌が、思ひ出したやうに、みなさん、けふは富士がよく見えますね、と説明ともつかず、また自分ひとりの咏嘆ともつかぬ言葉を、突然言ひ出して、リュックサックしよつた若いサラリイマンや、大きい日本髪ゆつて、口もとを大事にハンケチでおほひかくし、絹物まとつた芸者風の女など、からだをねぢ曲げ、一せいに車窓から首を出して、いまさらのごとく、その変哲もない三角の山を眺めては、やあ、とか、まあ、とか間抜けた嘆声を発して、車内はひとしきり、ざわめいた。けれども、私のとなりの御隠居は、胸に深い憂悶いうもんでもあるのか、他の遊覧客とちがつて、富士には一瞥いちべつも与へず、かへつて富士と反対側の、山路に沿つた断崖をじつと見つめて、私にはその様が、からだがしびれるほど快く感ぜられ、私もまた、富士なんか、あんな俗な山、見度くもないといふ、高尚な虚無の心を、その老婆に見せてやりたく思つて、あなたのお苦しみ、わびしさ、みなよくわかる、と頼まれもせぬのに、共鳴の素振りを見せてあげたく、老婆に甘えかかるやうに、そつとすり寄つて、老婆とおなじ姿勢で、ぼんやり崖の方を、眺めてやつた。
 老婆も何かしら、私に安心してゐたところがあつたのだらう、ぼんやりひとこと、
「おや、月見草。」
 さう言つて、細い指でもつて、路傍の一箇所をゆびさした。さつと、バスは過ぎてゆき、私の目には、いま、ちらとひとめ見た黄金色の月見草の花ひとつ、花弁もあざやかに消えず残つた。
 三七七八米の富士の山と、立派に相対峙あひたいぢし、みぢんもゆるがず、なんと言ふのか、金剛力草とでも言ひたいくらゐ、けなげにすつくと立つてゐたあの月見草は、よかつた。富士には、月見草がよく似合ふ。>

揚げ足取りはさておき、「富嶽百景」という小品が私は好きだ。
そもそも、太宰治の作品、数えるほどしか読んでいないのだが……。

さて、散歩していると、コデマリがまるでユキヤナギのように咲いている。
図鑑でみると、ユキヤナギと近縁の種だった。

コデマリ (小手毬)
 バラ科シモツケ属

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街路樹のヤマボウシも咲いていた。
地味な花だが、山地の大きな樹など、この花が咲くと遠くからでもすぐわかる。
ちなみに、よく似たハナミズキ(ミズキ科ミズキ属)の別名はアメリカヤマボウシ。

ヤマボウシ (山法師)
 ミズキ科ミズキ属

201305050037

秋に生る赤い実は甘酸っぱくておいしいそうだ。
実が生る時期に試してみようかな。

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