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2013年6月28日 (金)

【読】岡本太郎の「沖縄文化論」を読む

今月上旬、石垣島旅行に持っていったものの、ほとんど読まないまま持ち帰った文庫本。
岡本太郎の『沖縄文化論』(中公文庫)を読んだ。

岡本太郎 『沖縄文化論――忘れられた日本』
 中公文庫 1996/6/18発行 261ページ 720円(税込)

『中央公論』誌上で1960年3月号から12月号まで連載されたもので、親本は1972年10月、中央公論社から出版されている。
岡本太郎が沖縄を旅したのは、1959年11月から12月にかけて。
「本土復帰」のずっと前のことだ。

彼は、那覇まで飛行機で飛び、沖縄本島をまわって、船で八重山(石垣島)まで足を延ばしている。
今から半世紀前の沖縄の様子がわかり、興味深いものがあった。

戦禍で破壊された首里城はまだ廃墟で、守礼門だけが再建されていた(1958年再建)。

<霊御殿の正面入口はびっしりと石でふさがれていた。案内する人のあとをついて、わきの崩れた石垣をよじのぼっていく。五、六メートルもある外壁の高みに立つと、そこには風が爽やかに吹いていて、明るく晴れ渡った首里一帯がながめわたせる。この丘陵は、沖縄破壊のあとをまだそのままにとどめて、白っぽく崩れたひろがりの中に、再建された守礼の門だけが、あざやかに陽をてりかえしていた。>
(P.207 「結語」)

― 目次 ―
沖縄の肌ざわり/「何もないこと」の眩暈(めまい)/八重山の悲歌/踊る島/神と木と石/ちゅらかさの伝統/結語/あとがき
増補 神々の島 久高島/本土復帰にあたって
解説 「一つの恋」の証言者として 岡本敏子

「ちゅらかさ」とは、「美(ちゅ)ら瘡(かさ)」。
天然痘を、かつて沖縄ではこう呼んだという。
災いとか伝染病を美称で呼ぶことに触れ、岡本太郎は独特の沖縄の文化論をくりひろげる。

<災いとか伝染病を美称でよぶのは、なるほど、ひどく矛盾のようだが、しかしかつての島の人には切実な意味があったに違いない。複雑な心情である。/外からくるものはいつも力としてやってきて、このモノトニーの世界に爪あとをのこす。それはよし悪しを抜きにして「貴重」なのである。だから畏れ敬って一おう無条件にむかえる。/だが何といっても、これは天然痘なのだ。決して好ましい客ではない。この凶悪に対し、彼らは無防備なのである。卑しめたり、粗末に扱えばタタリがひどいだろう。なだめすかして、なるべくおとなしく引き取ってもらわなければならない。>

<強烈に反撥し、対決してうち勝つなんていう危険な方法よりも、うやまい、奉り、巧みに価値転換して敬遠して行く。無防備な生活者の知恵であった。/私は現代沖縄の運命について考える。占領され、全島が基地化されている。ここはもはや沖縄であって沖縄ではない。当然それは民族にとっての言いようのない苦しみである。それは天然痘――もっと厄介である。……>


岡本太郎のことを、私はほとんど知らなかった。
例の「芸術は爆発だ!」「何だ、これは」で一世を風靡した風変わりな芸術家(あれは愉快だったが)、という程度の私の持っていたイメージを、払拭させられた一冊だった。


【追記】
「増補 神々の島 久高島」には、1966年に久高島(沖縄本島の南端東5.3キロ)に渡り、イザイホーという祭りを見学したことが書かれている。
Wikipediaに、ちょっと気になる記載があったので、ここにとりあげておく。

<1966年のイザイホーの際に取材に来た芸術家の岡本太郎は祭りの最中に男子禁制のクボー御嶽に入り、風葬の地に入って墓を写真にとるばかりか、棺を開けてふたを破って死者の写真まで撮り、撮影した死者の写真を中央公論に掲載した。これを見た死者の遺族には精神に異常をきたした人もいる。以後、久高島では風葬は行われなくなったとのことである(『葬と供養』 五来重 著  東方出版 (1992/04))。
岡本太郎の著書『沖縄文化論 - 忘れられた日本』(中央公論社刊 1972/10)によると、岡本は久高ノロの子息に案内されて1959年に大御嶽を訪れており「ここもかつては男子禁制だった。」と書いている。1966年の再訪の際は御嶽には行かず「那覇から来ている新聞記者」の案内で後生(ぐそう)を訪れ、ここで風葬を撮影した。>

― Wikipedia 久高島 ―

書かれたもの(本書)だけではわからないこともあるのだなあ、と感じた次第。
ためしにネット検索してみると、こんな記事も。
(「久高島 岡本太郎」でGoogle検索)

久高島民族資料室で見たものは : 沖縄・離島の旅
http://omoidenotabi.blog41.fc2.com/blog-entry-327.html
晴徨雨読: 魂の島久高島 2/28
http://seikouudokuzin.blogzine.jp/ohara/2007/03/post_6a73.html
岡本太郎 『沖縄文化論 忘れられた日本』 - 屈折率
http://d.hatena.ne.jp/entre-sol/20121212/1355322131

できれば、自分の足で一度訪れてみたい島だ。

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