【読】シャクルトンのサードマン
いまにも一雨ありそうな空模様。
外気温30度、室内の湿度は70%もあって、朝から不快な天候だ。
図書館から借りていた、サードマンの本をようやく読了。
ジョン・ガイガー 『奇跡の生還へ導く人 ― 極限状況の「サードマン現象」』
伊豆原 弓 訳 新潮社 2010/9/15 255ページ
さまざまな「サードマン現象」の事例が紹介されている。
それだけでなく、「背後にある人間の精神の働き」が考察されていて、興味が尽きない。
どうやら、私たち人類には、危機に瀕したときに自らを鼓舞し、なんとか生き延びようとするメカニズムがあるようだ。
<このような能力が誰にでもあるとしたらどうだろうか。最も孤独なときに、突然同行者を生み出す脳のメカニズムがあるとしたら、それは、厳密には集合無意識から呼び出された他人というわけではないだろうが、驚異的であることに変わりはない。私たちには、仲間を最も必要としているときにそれを作り出す能力がある。これは感動的なことである。私たちは人間のネットワークと結びついて進化してきた。夢のなかまでも人間でいっぱいである。私たちの内部には、人間を求める回路が組み込まれているのだ!>
(本書 第13章、P.245)
ところで、図書館から借りてきたもう一冊の本がある。
ジェニファー・アームソトロング
『そして、奇跡は起こった! ―シャクルトン隊全員帰還―』
灰島かり 訳 評論社 2000年刊
原題
SHIPWRECK AT THE BOTTOM OF THE WORLD
THE EXTRAORDINARY TRUE STORY OF SHACKLETON AND THE ENDUARANCE
by JENNIFAR ARMSTRONG, 1998
この中に、シャクルトンたちが体験したサードマン(彼らは三人だったから、「四人めの誰か」)のことが、具体的に書かれている。
<奇跡的にサウスジョージア島にたどりついた一行は、未踏の南のアルプスを、ほとんど何の装備もなしで踏破するしかなかった。体力と精神力ぎりぎりの旅のなかで、彼らは神秘的な体験をした。三人が三人とも、そこに四人めの誰かがいると感じていたのだ。……
T・S・エリオットは、シャクルトンのこの体験に刺激を受け、高名な詩集『荒地』のなかの一節を書いたとのこと。…>
<君達の傍にもうひとりの人がいつも歩いているがそれは誰だ?
僕が数えると君たちと僕だけだ
あの白い路の先方を見ると
君達と一緒に歩いている人がいつももう一人いるのだ
鳶色のマントに身をつつみ
頭巾をかぶって音もなく歩いている
男か女かわからないが――
君達と一緒にいるあの人は誰だ?>
(T・S・エリオット作 『荒地』より、西脇順三郎訳) (本書 P.248-249から引用)
※ この記事は、先日書いた内容の続編です。
よろしければ、下の投稿もご覧ください。
→ 2013年8月19日(月) 【読】The third man factor (サードマン現象)
http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/the-third-mann-.html
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