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2013年9月23日 (月)

【読】読了、「間宮林蔵<隠密説>の虚実」

読みおえたので、いちおう書いておこう。
書いておかないと、すぐに忘れてしまいそうだし、図書館に返却してしまう本だから。

小谷野 敦 著 『間宮林蔵<隠密説>の虚実』
 教育出版 1998/10/28発行 185ページ 1,500円(税別)

全13章。
著者が「はしがき」(まえがき)に書いているように、第12、13章がこの本の白眉だろう。
第11章までは、間宮林蔵の伝記の体裁をとっている。

【目次】
はしがき
第一章 江戸へ出るまで
第二章 当時の国際情勢
第三章 林蔵、蝦夷地へ
第四章 レザノフとクルーゼンシュテルン
第五章 エトロフ島事件
第六章 第一次カラフト探検
第七章 カラフトから大陸へ――第二次探検
第八章 ゴロヴニン事件と林蔵
第九章 シーボルト来航
第十章 発覚――シーボルト事件
第十一章 晩年の林蔵
第十二章 洞・赤羽論争――晩年の林蔵をめぐって
第十三章 「林蔵伝」の成立――明治から昭和へ
参考文献
あとがき

「あとがき」に、こう書かれている。

<ちょっと言い訳めくが、はじめに書いたように、この本のなかで学問的に私のオリジナルと言えるのは最後の二章「だけである。あとは従来の林蔵伝に対して新史料があったわけではない。それでも、現在普通に流布している林蔵伝が洞富雄氏のもので、やや古いのと、指摘したような問題もある。比較的新しいものとしては吉村昭氏の小説があるが、これはあくまでも小説である。だから新たに林蔵伝を出すのも意義があるのではないかと思った次第である。それでも私なりに工夫はしたつもりで、……一般向けの読み物にしたつもりだ。> (本書 あとがき)

間宮林蔵の評価は、明治期以降、幾多の変遷を経ているようだ。

<そもそも、林蔵という人物とその業績が一般に知られだしたのが、明治三十年前後のことで、殊に日露戦争の勃発がその認識を高めたことは前に述べた。だが、同時に皮肉な動きも起こっていたのだ。実は、現在では有名なシーボルトその人もまた、明治初期にはそれほど知られておらず、しかもスパイ事件の主役として知られていただけだったのだが、時期を同じうして「肯定的評価」へ向けてゆっくりと、しかし着実な歩みを進めていったのである。> (第十三章 P.165)

「歴史」というのも、クセモノである。
どうしても、その時代の色眼鏡で過去を意味づけしてしまうものらしい。
なんだか、当今の「歴史認識問題」を思いおこす。

<歴史家は、ありのままに過去を再現するのが使命だと一般には理解されているが、実際にはかくのごとく、「過去」は、ある時代の刻印を帯び、当時の政治情勢との複雑な絡み合いの中で再編成され、それが一貫した「物語」性を帯びていればいるだけ、人の心に焼き付けられてしまう。> (第十三章 P.177-178)

参考資料としてとりあげられている、下の本が面白そうだ。
図書館に貸出予約してみた。

秦 新二 『文政十一年のスパイ合戦――検証・謎のシーボルト事件』
 文春文庫 1996年

その前に、図書館から借りている、もう一冊を読まなくちゃ。
著者の肩書が「探検家、作家」となっていて(私の知らなかった人だが)、間宮林蔵の足跡を実際に辿っている。
アイヌ民族や北方民族についても、自ら足を運んで現地の人々と交流している、興味ぶかいドキュメンタリーだ。

高橋大輔 『間宮林蔵・探検家一代 ――海峡発見と北方民族』
 中公新書ラクレ 297
 2008/11/10発行 268ページ 880円(税別)

<世界地図からその名が消えかけている間宮海峡。厳寒の地に乗り込み、多様な民族と過ごした林蔵の真の偉業とは。発見から200年、現役の探検家がその足跡をたどりつつ、探検の意義を問う> (本書カヴァー)

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