【読】間宮林蔵の謎を解く(この本が面白い)
図書館から借りてきて、読みはじめたばかりだが。
小谷野 敦 著 『間宮林蔵<隠密説>の虚実』
教育出版 1998/10/28発行 185ページ 1,500円(税別)
著者の小谷野さんについて、私はまったく知らないが、目のつけどころがいい。
北方謙三の『林蔵の貌』という小説では、寛政元年(1789年)の「クナシリ・メナシ」の叛乱(アイヌの蜂起)について全く触れられていなかった。
それが私には不満だった。
『林蔵の貌』の冒頭は、「越前三国で十四人の配下を持つ漁師の伝兵衛が、ある命により、野比と名乗る武士を蝦夷地に送り届けるため、日暮の海に舟を進めるところからはじめられる。丸二日かけて陸地に辿り着き、アイヌの村に身を寄せていた伝兵衛と野比は、上陸四日後の夕方、焚火の傍で仁王立ちになった赤鬼のような一人の男と出会う。/間宮林蔵である。」(集英社文庫解説/縄田一男)というシーン。
ここで、野比がアイヌの老人に対して「日本人」という言葉を使っていたことに、私は引っかかった。
アイヌに対する「日本人」の呼称は、当時なら「和人」であるべきだと思ったのだ。
まあ、それはいいとして、時代背景として、寛政元年のアイヌ叛乱のことが一言も触れられていないことも、私には不満だった。
もっとも、この叛乱が起きたのは、林蔵がまだ十歳になるかならないかの頃だったが。
小説としては面白く読んだのだが、そんなこともあって、林蔵が生きた時代のことを、もっと広い目で見直してみたいと思った。
そんなときに、この小谷野さんの本を知った。
ひさしぶりに面白そうな本に出会った。
北方謙三『林蔵の貌』の出版は1994年6月だから、北方さんも1998年刊行のこの本を知らなかったはず。
文庫版下巻の参考文献一覧には、洞富雄 『間宮林蔵』(吉川弘文館)という有名な本が載っていたが、小谷野さんによると、洞さんの本には問題もあるようだ。
洞 富雄 『間宮林蔵』
吉川弘文館 人物叢書
1950年、新装版1986年
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