【楽】平岡正明さんの「幻想旅行」評
山崎ハコさんの素敵なアルバム 「幻想旅行」 のことを、きのう書いた。
そこで、また思いだしたのは、平岡正明さんの本。
今から30年も前に出版されたものだが、私のたいせつな一冊だ。
いやあ、本棚の奥から探しだすのがたいへんだった。
『歌謡曲みえたっ』 平岡正明
ミュージック・マガジン 1982年
前にも少し書いたことがある。
→ 2006年12月 9日 (土) 【楽】【読】歌謡曲
http://yamaoji.cocolog-nifty.com/blog/2006/12/post_8661.html
この本のなかで、平岡さんが山崎ハコさんのアルバム「幻想旅行」を論評しているのだ。
初出は、「週刊漫画ゴラク」1980年6月24日号から82年2月5日号まで連載したコラム。
平岡さんらしく歯切れのいい文章で、ハコさんのこのアルバムをベタほめしている。
マラソン・レビュー1980~82 (81年11月) P.153-154
●山崎ハコ『幻想旅行』――ソウルフルってのはこのことだ
これでいいんだよ。ちっともヘンじゃないよ。というのは新譜『幻想旅行』(キャニオン C28A0191)を山崎ハコ自身が、あたしらしくないんじゃないかしらと心配しているという噂を耳にしたからだが、心配御無用。
俺が二グロの音楽家なら、パチリと指を一つ鳴らして、この娘はだれ? ソウルフルだぜ、すごく。ただおれたちのソウルとは別の種類のだが、きっとトキオの娘っていまじゃこんなにソウルフルなんだ、とい言うだろう。
心配御無用というより、こりゃ最高! ハコはこういうぐあいにハコ入り娘をぬけてくれればいいんだ。…(以下略)
これが最近のハコだ。楽屋のちょっとしたあいまの時間に、杉良太郎や丹下左膳の話をして笑っていたハコだ。葬式の後で悪酔いするような、あるいは悪酔いの真実だけがハコだと思っていたファンにはショックかもしれないが、今年に入って彼女は主として作曲面で、いかにも20歳をすぎた娘らしい色っぽさを身につけていた。自唱の「男のウヰスキー」だとか、北原ミレイのための「納沙布岬」などがそれで、ハコはホレース・シルバーのように、作曲のいい時期と歌のいい時期があるのだろう。…(以下略)
私も、この時期のハコさんのアルバムが、それまでの殻を破った画期的なものだったと思っている。
「男のウヰスキー」や「納沙布岬」のシングル盤レコードも、この頃手に入れて愛聴してきた。
平岡さんはもうこの世にいないけれど、なんとなく懐かしくなって、本棚から引っぱりだしてみたのだった。
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