« 【読】「東大話法」とは? | トップページ | 【読】図書館で調べる »

2013年12月11日 (水)

【読】「立場」とは?

いま読んでいる本の、第4章 <「役」と「立場」の日本社会> が面白い。

安冨 歩 著 『原発危機と「東大話法」――傍観者の論理・欺瞞の言語』
 明石書店 2012年1月発行

立場とは - 歴史民俗用語 Weblio辞書
http://www.weblio.jp/content/%E7%AB%8B%E5%A0%B4 より

たちば 【立場】
(1)立つ場所。立っている所。
(2)何かをするためのよりどころ。立つ瀬。
「それでは私の―がなくなる」
(3)その人が置かれている、地位・境遇・条件など。
「―で考えも異なる」「つらい―にある」「相手の―になって考える」
(4)物の見方・考え方。見地。立脚点。
「実存主義の―に立つ」

たてば 【立(て)場/建場】
(1)江戸時代、街道筋で人足が駕籠や馬を止めて休息した所。明治以後は人力車などの集合所・発着所をいった。
(2)人の多く集まる所。たまり場。
「小川かこの店がお定まりの―だが/人情本・梅美婦禰 5」
(3)休むこと。中継ぎする所。
「―なしにしやべり通すが/洒落本・比翼紫」
(4)位置。立ち場。
(5)定置網の敷設場所。

「東大話法」と、この本の著者が呼ぶ語り口や態度――これは東大に限らないが――でポイントになるのが、「立場」に拠って物を言うこと。
つまり
 「自分の信念ではなく、自分の立場に合わせた思考を採用する」
 「自分の立場の都合のよいように相手の話を解釈する」
 「自分の立場に沿って、都合のよい話を集める」
といった態度だ。

<「東大話法」「東大文化」の中では、「立場」という概念が、大きな役割を果たしていることが、前章の議論で確認されたと思います。私はこの概念をしっかり理解することが、日本の原子力発電のあり方と、さらには今回の事故の本質を理解するうえで、決定的に重要だと考えています。> (本書 P.193)

この「立場」という概念を、著者は夏目漱石の小説にあらわれる「立場」ということばを拾い上げて検討している。
漱石は、その小説のなかで、英語の situation, position, standpoint, viewpoint, stance など微妙に異なる概念の和訳として「立場」を使っていたというのだ。
漱石の小説での用例がいくつも示されていて面白いが、ここでは省く。

日本では古くから「立庭(たてば)」ということばがあり、「居場所」「生活の場」「住拠」の意味で使われてきたという。
それが「立場(たてば)」に変化し、明治になってから別の概念をあらわすことば=「立場(たちば)」として定着した、という説が興味ぶかい。

ところで、私もずっと気になっていたが、現代ではふつうに使われている次のようなことばが、明治の時期に作られたものだ。
著者の安冨さんも例としてあげている(本書P.214)――
学問、自由、選択、計画、医師、決定、市場、科学、思想、概念、社会、共同体、主義、自然、贈与、交換、政治、世界、責任、家族、国家――など。
これらは、明治になってから作られた「翻訳語」だという。

著者が書いていることを整理するとと、次のようになる。

・「立場」は翻訳語ではないが、漱石の用例から明らかなように、伝統的日本語と複数の英語の訳語が統合された、新しい用語。
ところが、「立場」は論文のタイトルなどにもよく出てくることから明らかなように、学術語として認識されている。
近代学術用語としては、珍しい(と、著者は考える)。

・「自由」「市場」「自然」「世界」「国家」などは、元からあった言葉だが、翻訳語として定義され直して、今日では、少なくとも学術用語としては元来の意味では使われていない。

・該当する英語の概念がないという点で、「立場」ほど頻繁に使われる学術用語は、他にはないのではないか。

誰がどのような意味合いで使い始めたのか知りたいのだが、どのようにして調べればいいのだろうか。
国語辞典だけでは、わかりそうもない。
誰か、こういうことを研究した人はいないのだろうか。

こんど、ゆっくり図書館で調べてみたいと思う。

【追記 2013/12/13】
ネット上に「語源由来辞典」というサイトがある。
http://gogen-allguide.com/
ここで、試しに「社会」を調べてみると、次のように書かれていた。
なるほど。
<【意味】 社会とは、人間が共同生活を営む際のまとまった組織や、その相互関係。世の中。世間。同類の仲間や集団。 【社会の語源・由来】 社会は、福地源一郎(福地桜痴)による英語「society」の訳語。/明治初期まで「society」に相当する訳語は存在せず、「交際」「仲間」「連中」「組」「俗間」「社中」などが当てられていた。/その中で、明治8年(1875年)、福地源一郎が『東京日日新聞』に「ソサイエチー」のルビ付きで「社會(社会)」の語を使用したことで、「社会」という訳語が定着した。……云々>

|

« 【読】「東大話法」とは? | トップページ | 【読】図書館で調べる »

【読】読書日誌」カテゴリの記事

こんな本を読んだ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/139344/58738122

この記事へのトラックバック一覧です: 【読】「立場」とは?:

« 【読】「東大話法」とは? | トップページ | 【読】図書館で調べる »