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2014年1月10日 (金)

【読】福島第一原発事故 「想定外」のウソ

きのうから読みはじめた本で、いろんなことを知る。

3年前の2011年3月11日、あの大地震と大津波で福島第一原子力発電所の原子炉はめちゃめちゃになった。
当時の報道ではわからなかったことが多い。
事故から1年ほど経過した頃にまとめられたこの本で、事故当時の詳しい状況がわかり、興味ぶかい。

ほんとうは、もう「原発」のことなど忘れてしまいたい気分だ。
しかし、忘れてはいけないし、忘れることなどできない。
いつ、次の大地震が起きるか誰にもわからないし、私の中から不安も消えないから。

大鹿靖明 『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』
 講談社 2012/1/27発行 366ページ 1,600円(税別)
 講談社文庫 2013/2/15発行 656ページ 950円

 

100人以上のキーパーソンの取材によって次々に明らかになる新事実。
●原発事故発生時に東電トップは不在だった。勝俣会長は花田元文春編集長らと中国に視察旅行、清水社長は夫人同伴で奈良観光。焦った清水社長は自衛隊機で帰京を図るも、防衛相の鶴の一言で離陸15分後にUターン。ようやくたどり着いた東京は大渋滞で出社できず。
●電源復旧のためにかり出された電源車はのべ69台。しかし、どれも電源復旧には役立たない。電源車と原発をつなごうにも、ケーブルがない。やっと探し当てると、今度は倉庫の鍵が開かない。なんとか取り出しても、重さ1トンで簡単には敷設できない。危機的な状況のなか、喜劇的な失態が相次ぐ。
●福島第一原発撤退を言い出した清水社長に、菅直人首相は「撤退なんかありえない」と押し戻し、東電本店を数時間にわたって占拠した。「撤退はない! 命懸けでやれ! 60歳以上は現地に行け!」と激怒する首相に気圧されて、東電もやっと腹を括ることに。
●賠償を国が肩代わりすると思い込み、破綻寸前の東電に6000億円のキャッシュを気前よく振り込んだ東電メーンバンクの三井住友銀行。債権放棄やむなしの報道に驚いた経営幹部は掟破りの行動に出た。
●東電のドン勝俣会長の父親は代ゼミの「受験の神様」だった。熱血指導で、兄は新日鐵副社長、道路公団理事、東大教授、弟は丸紅社長の超エリートに。学歴秀才で気位の高い彼は「地震があったときに一番安全なのは原発なんだ。原発に避難したほうが安全なんだよ」と同級生に放言していた。
●菅首相の「鶴の一声」かと思われた浜岡原発の緊急停止は、実は、世論のガス抜きを図った経産省キャリアたちが仕組んだ罠だった。菅首相自らが記者発表したことで、ガス抜きどころか脱原発の機運が高まった。それに危機感を抱いた電力業界と経産省はより一層菅降ろしに邁進してゆく。
●その気になれば、経産省キャリアの人事まで影響力を行使できる東京電力。古賀茂明ら電力自由化を唱えた改革派官僚は軒並み放逐されて、東電べったりの官僚ばかりが出世する。かくいう状況では「脱原発」などの思い切った改革は望み薄だ。

― Amazonより ―

[目次]
第1部 悪夢の1週間
 第1章 3月11日午後2時46分
 第2章 全電源喪失
 第3章 放射能放出
 第4章 原発爆発
 第5章 日本崩壊の瀬戸際
 第6章 まだそこにある危機
第2部 覇者の救済
 第7章 救急融資
 第8章 救済スキーム
 第9章 潰された自由化
 第10章 インナーの攻防
第3部 電力闘争
 第11章 仕組まれた原発停止
 第12章 サミット深夜の激論
 第13章 菅降ろし
 第14章 政権崩壊
あとがき
注と情報源
参考文献

私が読んでいるのは、図書館から借りてきた単行本(2012年1月発行、366ページ)。

まだ50ページほどしか読んでいないが、当事者の証言や事実関係の記述については、一つ一つの情報源が巻末に記載されていて、信頼できる。

私が知らなかっただけかもしれないが、事故後、東京電力が「想定外の大津波」と繰り返していたのが、大嘘だったことがわかった。

以下、本書の第2章「全電源喪失」(原子力村の不作為、P.28-)から。
私にはとても衝撃的だった。

当時の東京電力副社長・武藤栄は、東電の原子力・立地本部長として、ヘリコプターで現地・福島へ向かった(3月11日)。

<武藤は、…福島に向かうヘリコプターの機中できっと慙愧に耐えなかっただろう。彼は知っていたのだ。この日のくることを。想定を超える大津波がいつの日か、東電の福島の原発基地を襲う可能性があることを。彼らが想定していた最大5.7メートルの津波を遥かに上回る規模の10メートルを超える大津波が、過去にこの地域を蹂躙したことがあり、ひょっとするといつの日にか、自分たちの原発に再来することがありうることを。それなのにその対策を、原子力部門のドンたる武藤はなにひとつ講じることはなかったのだ。> (P.29-30)

<東電の原子力設備管理部の土木調査担当者ら武藤の部下たち3人は、震災が起きるつい4日前の3月7日月曜日の夕刻、所管官庁である経済産業省の原子力安全・保安院を訪ね、小林勝耐震安全審査室長に従来の想定を超える大津波が襲来する可能性があることを告げていた。> (P.30)

<このとき「取扱注意 お打ち合わせ用」と記された3枚の資料を東電の3人は持参している。、明治三陸沖地震と貞観津波という二つのシミュレーション結果が記され、最大で10メートルを超える津波が襲来し、陸地では波高が15メートル超にまでせりあがる、と書かれていた。東電は、想定されたこの巨大津波への対応を来年(2012年)10月におこなうつもりだった。資料にはそう明記されている。」> (P.30)

この部分の情報源は、「東京電力作成の『福島第一・第二原子力発電所の津波評価について』 2011年3月7日」と、巻末にある。

また、試みに、東京電力が発表した「福島原子力事故調査報告書」(平成24年6月20日) を紐解いてみた。
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu12_j/images/120620j0303.pdf
(東電のサイトからは見つけにくかったため、Google検索で所在がわかったもの)

専門的でわかりにくい報告書の中、16ページ以降に「津波への備え」という記載があった。
P.26に
<原子力安全・保安院には、地震発生直前の平成23年3月7日にも試し計算結果を説明している。>
とあり、本書の記述に対応している。

彼ら東電は、自ら想定していた(それまでの想定を見直そうとしていた)のだ。
それなのに、私の知る限りでは、事故後の弁明で「想定外だった」(だから、防げなかった)と繰り返していた。

当時のいきさつが本書に詳しく書かれている。
言い古されたことではあるが、東京電力という会社組織の隠蔽体質が、よくわかる事例だ。

ちょっとボリュームのある本だが、最後まで読み通してみたいと思う。

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