【読】鳥肌が立つ?
最近、気になる言葉づかい(誤用)を耳にすることが多い。
そう感じるのは、私が歳をとったせいか。
『考証要集』 (大森洋平著/文春文庫/2013年) を読んでいて、我が意を得た記述があった。
鳥肌が立つ 【とりはだがたつ】 232-233ページ
この言葉を「感動した」意味に誤用するのは最近の日本語の悪例である。嫌う人は大勢いるので、とりわけ時代劇の台詞では誤用に注意すべし。日常会話でも「おいしくて鳥肌が立った」等と言わないのが上品である。以前、元陸軍中尉の鈴木英男氏(飛行予備学生第13期)から「最近の人は、本当に鳥肌が立つ思いをしたことがないから、こんな馬鹿な誤用をするのです」とのお話を伺った。氏は太平洋戦争末期、有人ロケット爆弾「桜花」に搭乗し敵艦に体当たりする特攻隊員だった。「鳥肌が立つ」の真の意味を十二分に知る方である。
私も言葉の誤用をすることが多いから、他人のことは言えないけれど、この「鳥肌」の誤用には耳をふさぎたくなる。
言葉は、時代とともに変化していくものだということを認めても、だ。
ところで、この 『考証要集』 のはじめの方に、「あります」 の誤用が載っている。
あの安倍晋三氏がよく使っていて、私は不快に感じるのだが、これはもともと旧日本陸軍の用語である。
安倍氏の胸の内(本音)が窺えるようではないか。
けっして美しい日本語とは言えない。
あります 【あります】 37-38ページ
最近の「戦前ドラマ」では、陸海軍を問わず軍人にやたら「~であります」と言わせたがるが、これは正しくは旧日本陸軍の語法である。元は長州弁で、明治初期の陸軍が長州出身者だったことの名残と言われる。海軍では原則として使わない。太平洋戦争期になると徴兵前の青少年層への軍事教練の影響で、水兵が「あります」言葉を使う例は間々あった。しかし、海軍士官は使わない。うっかり使うと「陸式(陸軍式のこと)はやめろ!」と修正された。……
(いま気づいたが、安倍氏のご先祖は長州出身だったっけ?)
旧日本陸軍と海軍とでは、この他にも言葉の使い方の違いが多く、興味ぶかい。
例えば、敬称。
陸軍では上官の敬称として「大佐=連隊長」までは「殿」、「少将=旅団長」以上は「閣下」を用い、二等兵が古参の一等兵を呼ぶ時は「古兵殿」「古年兵殿」。
いっぽう、海軍では敬称を一切用いず、呼び捨てだった。
最下級の二等水兵が連合艦隊司令長官に呼びかける場合でも「長官!」だけだったそうだ。
(上掲書 101ページ)
時代考証の本だが、面白いことがたくさん書かれている。
三分の二ほど読んだところ。
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