【読】ようやく読了 「敗戦の記憶」 (五十嵐惠邦)
途中で投げだしそうになったけれど、なんとか読了。
読み終えるまで、一週間かかってしまった。
返却期限を延長してまで図書館から借りているので、休館日が明けたらすぐに返さなくては。
それほど読まれた形跡のない本のようだから、待っている人はいないだろうが。
五十嵐惠邦 『敗戦の記憶 ――身体・文化・物語
1945-1970』
中央公論新社 2007/12/20発行 445ページ(本文359ページ)
2,500円(税別)
― Amazonより ―
内容(「BOOK」データベースより)
アジア・太平洋戦争の敗北の記憶は、戦後の社会や文化にどのような影響を与えたのか。本書では、終戦の主因は原爆投下と昭和天皇の「聖断」にあるという「物語」誕生の経緯から説きおこし、「肉体の文学」、加藤周一や丸山眞男らの「日本人論」、ゴジラや力道山に代表される大衆文化、東京オリンピック、三島由紀夫や野坂昭如の短篇などをたどる。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
五十嵐惠邦
1960年(昭和35年)、大阪に生まれる。国際基督教大学教養学部社会科学科卒業。シカゴ大学歴史学部Ph.D.、アイオワ大学歴史学部講師などを経て、バンダービルト大学歴史学部準教授。専攻、戦後日本文化史。(書籍刊行時)
巻末を見て、この本が、2000年に英語で出版されたことを知った。
日本語版は、7年後の2007年に英語を翻訳して出版されたようだ。
著者 五十嵐惠邦(いがらし・よしくに) 氏は1960年生まれ。
国際基督教大学教養学部社会学科を卒業後、アメリカに渡り、出版当時はアメリカの大学の歴史学部准教授。
この本は、著者が勤務するバンダービルト大学で、学生たちに講義しようと「悪戦苦闘した」なかで生まれたそうだ。
使われている概念用語が日本語として奇異に感じられるのは、英語からの翻訳のせいだろうか。
著者はれっきとした日本人で、日本語を母語にしているはずだから、著者独自の思いをこめた用語なのかもしれない。
書名副題の「身体・文化・物語」というのが、なにやら意味ありげだ。
<起源の物語>(ファンデーション・ナラティブ、とルビが振られている)というのが、本書の論考の発端であり、中心概念(テーマ)になっている。
「物語」とは、こういうことだ――と書きたいところだが、うまくまとめられないので本書からそのまま引用する。
<敗戦直後の、イデオロギーの再配置のなか、日米両国内で、冷戦の政治状況に不都合な歴史は抑圧された。日本にとって、昨日の敵は、今日の味方になったのである。広島と長崎で使用された核兵器の前例のない推進力は、アメリカと日本がその共同体の記憶を書き換えるための推進役となった。戦争の終わりに、アメリカと日本は、原爆の使用というクライマックスにいたるメロドラマのなかで、振りあてられた役を演じたのである。原爆の威力をkりて、「男」役のアメリカは、日本の演じる窮地にある「女」を救いだし、回心させる。戦争終結の「聖断」によって、昭和天皇は、アメリカの優れた力を認め、このドラマで中心的な役どころを演じたのである――。その誇張にもかかわらず、この「物語」は、戦争とその結末について、日米両国の認識を形づくった。>
(第一章 原爆、天皇、そして歴史――戦後日米関係の<起源の物語> P.32-33)
私にはかなり難解だったが、なんとか最後まで読み、半分ぐらいは理解できたような気がする。
第二章以降では、具体的な論考にはいり、戦後の作家たちの作品や映画を例にあげて、日本の戦後社会を分析・考察している。
とりあげた作品をよく読みこんだうえでの考察は、たいへん面白かった。
第二章 肉体の時代
田村泰次郎 「肉体の門」、丸山真男の言説
第三章 どこにもない国――日本人論について
加藤周一と丸山真男、小島信夫 「星」、大江健三郎 「不意の唖」
第四章 名づけえないものを名づける
「君の名は」(ラジオドラマ、映画)、「ゴジラ」(映画)、力道山(プロレス)
第五章 安保闘争からオリンピックへ
岸信介、東京オリンピックの最終聖火ランナー、女子バレーチーム(大松監督と「東洋の魔女」)
第六章 トラウマの再現
野坂昭如 「アメリカひじき」「火垂るの墓」、三島由紀夫 「豊穣の海」四部作
結論(終章)
著者の視点が私には新鮮で、さまざまな発見があった。
語り口が学者(研究者)らしく、難解だったが。
巻末の註(54ページ)、引用文献リスト(19ページ)、索引(12ページ)を見るにつけ、論文構成の、なかなか手ごわい一冊だったと、あらためて感じる。
「あの戦争」と戦後日本について自分なりのイメージを固めたい、というのが私の読書テーマのひとつ。
前途多難である。
やれやれ。
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