【読】あの戦争のリアル
今日もいい陽気。
こどもの日だった。
といっても、私には、あまり関係ないけれど。
午前中、所属する市内の団体の定例会議に出席。
帰り道、買い物。
あとは、ラジオを聴いたり、本を読んですごす。
■
何日か前に大型新古書店「ブ」の新書コーナーでみつけた本を、読んでいる。
これが、とても面白い。
一ノ瀬俊也 『日本軍と日本兵 ――米軍報告書は語る』
講談社現代新書 2243 2014/1/20 263ページ 800円(税別)
著者は1971年生まれというから、私から見ればまだ若い研究者。
こんな内容だ。
― Amazonより ―
<私たちは、日本軍、とくに日本陸軍というと、空疎な精神論ばかりを振り回したり、兵士たちを「玉砕」させた組織というイメージがあります。しかし、実際には、「玉砕」ばかりしていたわけではありません。孤島で追い詰められた場合はともかく、ニューギニア、フィリピンなどの大きな島では、徹底抗戦、持久戦がとられましたし、沖縄でも、最後に出された指令は、組織的抵抗を最後まで継続せよ、というものでした。
もちろん、だからといって、日本軍が玉砕をしなかった、あるいは合理的な組織だったということではありません。ただ、日本軍=玉砕というイメージにとらわれると、なぜ戦争があれだけ長引いたのかという問いへの答えが見えづらくなってしまうのです。
日本軍、とくに日本陸軍の実像をどうとらえるべきなのか、本書は、戦争のもう一方の当事者である米軍が軍内部で出していた広報誌『Intelligence Bulletin(『情報広報』)を用いて、彼らが、日本軍、そして日本人をどうとらえていたかを探ります。
『情報広報』には、例えば、日本人はLとRの区別がつかないので、戦場で日本人か中国人か判別がつかない場合には、それらが入った文章を言わせることといったことが書かれています。また、日本兵個人の特徴として、規律は良好、準備された防御では死ぬまで戦う、とある一方で、予想していなかったことに直面するとパニックに陥る、自分で物を考えないといった分析がされています。
さらに、日本の兵士らがじつはさまざまな不平不満を抱えていて、投降させることもできた、といったことが書かれているのです。
本書は、気鋭の研究者が、米軍内部の資料をもとに、従来の日本軍イメージをとらえなおす一冊です。>
「あの戦争」を、「米軍から見た日本軍・日本兵」という切り口で、ていねいに考証している。
こういうアイディアは、これまであまりなかったのではないだろうか。
日本人の視点からでは知り得なかった、思いがけない発見が多く、夢中になって読んでいる。
「あの戦争」のリアルに、目から鱗が落ちる。
■
もう一冊。
これは、やはり大型新古書店「ブ・いとう」でみつけて買っておいたもの。
「あの戦争」を知るためのブック・ガイド。
書名に魅かれて買ってしまった本だが、役に立ちそうだ。
「役に立つ」というのは、紹介されている本が「これを読めば理解が深まる」というものばかりだから。
たんなるブックガイドではなく、「あの戦争」の通史でもあり、底を流れる史観も公正なものだと思う。
著者は1958年生まれ。
肩の凝らない文章が読みやすい。
いい本に出会った。
林 信吾 『「戦争」に強くなる本 ――入門・アジア太平洋戦争』
ちくま文庫 2007/12/10発行 276ページ 800円(税別)
― Amazonより ―
<テロとの戦いや、北朝鮮の核武装への動きとミサイル実験、中国の軍拡などによって、軍事知識は必要不可欠なものになりつつあるが、軍事に関する議論は玉石混交の状態にある。では、まず何から読めばよいのだろうか。これまでアジア太平洋戦争について公刊された書物を、「開戦原因」「敗戦原因」「戦争の展開」「兵器について」「戦争責任とは何か」など多面的に整理・紹介し、戦争の真実に迫る。>
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