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2015年10月 8日 (木)

【読】一億総××

安部さんがブチあげた「一億総活躍」とやら。

「一億総××」という標語は、すぐに戦中を思い起こさせる。
私などは不快の念をもよおす言葉なんだが、みんなはどうなんだろうか。

今読んでいる本。
なかなか面白い。
市立図書館でみつけて借りてきた。

原武史・保阪正康 『対論 昭和天皇』
 文春新書 403 2004/10/20発行 245ページ 720円(税別)

太平洋戦争が始まり、1942年(昭和17年)のミッドウェー海戦で形勢が逆転すると、年末の12月12日に天皇(昭和天皇)は密かに伊勢神宮に戦勝祈願に行った。これは事前に告知されずに伊勢参拝後にはじめて公表されたという。(本書89ページ)

天皇が参拝した12月12日は、翌年以降にはひとつの記念日になり、伊勢神宮内宮に参拝した午後1時22分が「一億総神拝の時間」と言われるようになった。

この日、この時刻になると、全国民が伊勢神宮に向かって遥拝したそうだ。
(昭和18年、19年に実施された)
恐ろしい時代だった。

ちなみに、この一億という数字は、台湾、朝鮮などの当時の植民地を含めたものだ。
満洲の人口は当時で約四千万、日本人は約七千五百万で、あわせると一億を優に超える。(本書130ページ)


さて、平成の時代の「一億総活躍」は、この過去の事例とはまったく関係ないが、なんだかイヤな言葉だ。
なぜなんだろうと考えてみると、どうも「一億総××」とひとまとめにして、お上が国民に号令をかけるところが、なんともイヤな感じなのだ。

「進め一億火の玉だ」とか「一億玉砕」だとか「一億総懺悔」だとか、ろくでもない標語しか浮かんでこない。
時代錯誤というか、なんというか。
一億ひとまとめに何かをしよう、させようという魂胆が透けて見える。

Ichiokuhinotama


ためしに「一億総神拝」でネット検索してみると、こんなサイトがみつかった。

国立公文書館
 アジア歴史資料センター 収蔵データ一覧
http://www.jacar.go.jp/siryo/ichiran/K_S01/m20450.html

A06050883700  大政翼賛会事務総長ヨリ聖旨奉載一億総神拝実施要
資料作成年月日: 昭和19年11月24日 / 作成者: 枢密院||枢密院書記官長
内 容: 翼団練第二三五号 昭和十九年十一月二十四日 大政翼賛会事務総長 安藤狂四郎 枢密院書記官長殿 聖旨奉戴一億総神拝実施要綱ニ関スル件 標記ノ件ニ関シテハ別紙ノ通リ決定相成候条御了知相成度候 聖旨奉戴一億総神拝実施要綱 趣旨 長クモ征戦下未曾有ノ神宮御親拝ヲ仰キ奉リテ茲ニ二年、大御@威ノ下国運愈々隆昌ニシテ皇威大東亜ノ天地ニ洽カラントス。然レトモ暴戻米英ハ飽迄モ聖業ノ達成ヲ妨ゲントシ、凡ユル犠牲ヲモミズシテ愈々熾烈大規模ナル総反攻ノ挙ニ出デ戦局日ニ危急ヲ加フ。此ノ秋ニ当リ一億蒼生ハ御親拝当日ノ恐懼感激ヲ愈々新ニシツツ粛然総神拝ヲ行ヒ、一億憤激、神国必勝ノ熱祷ヲ捧ゲ、神明照覧ノ下益々戦力増強ニ挺身シ、誓ツテ米英ヲ

保管されている当時の文書の画像が閲覧できる。

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