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2015年10月25日 (日)

【読】「アイヌ学入門」という本

だいぶん前に買っておいた新書を読みはじめている。

著者の瀬川拓郎さんは、旭川市博物館にお勤めのはず。
私が注目している研究者だ。

旭川市博物館
http://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/files/museum/

この本、私のアイヌ観を根底からゆさぶるような内容で、じつに面白い。

瀬川拓郎 『アイヌ学入門』
 講談社現代新書 2304 2015/2/20発行 311ページ 840円(税別)

書名の「アイヌ学入門」が誤解を招きそうだが、著者の瀬川さんはこう書いている。

<本書のタイトルは『アイヌ学入門』ですが、ここでの「アイヌ学」は、アイヌへの多様な関心や好奇心に接続するための学問的なサポートといったものをイメージしています。「アイヌ学」という方法論をもつ学問分野が存在しているわけではありません。
 読者のなかには、アイヌ学という言葉のなかに「学問する側/される側」といった植民地主義の残香を嗅ぎとる方がいらっしゃるかもしれません。しかし本書の意図は、複雑なアイヌの歴史や文化の一端を提示し、そのカオスのなかから単純な二項対立の論理をのりこえていこうとする点にあります。>
 (本書 P.12)

― Amazonより ―
アイヌと聞くと、北海道の大自然の中で自然と共生し、太古以来の平和でエコロジカルな生活を送っていた民族というのが一般的なイメージでしょう。
 しかし、これは歴史的事実を無視した全くの誤解に過ぎません。
例えば中国が元の王朝だった時代、元朝は現在の沿海州地方に出兵し、その地でアイヌと戦争をしました。鷲羽やラッコの毛皮など、当時珍重されていた品々を調達するために北海道、樺太から沿海州にまで進出してきたアイヌの人々を排除するためでした。この事例からも窺えるように、中世のアイヌは大交易民族でした。奥州藤原氏が建立した中尊寺金色堂の金もアイヌがもたらしたものだった可能性があるのです。
 著者によれば、アイヌは縄文の伝統を色濃く残す民族です。本州では弥生文化が定着したあとにも従来の縄文の伝統を守り、弥生に同化しなかった人々、それがアイヌだったのです。有名な熊祭りも、縄文の伝統を今に引き継いだものではないかと考えられています。
 また、日本との交流も従来考えられていたよりもずっと緊密でした。アイヌ語で神を意味する「カムイ」が日本語からの借用語であることは有名ですが、それだけに止まらず、様々な面において日本由来の文物を自身の文化に取り入れていったのです。
 本書では、従来のステレオタイプのアイヌ像を覆し、ダイナミックに外の世界と繋がった「海のノマド」としてのアイヌの姿を様々なトピックから提示します。>

まさに、このAmazonの要約のとおりで、固定化されたアイヌ観(一般的なイメージ)を揺さぶる内容だ。
まだ読みはじめたばかりだが、すでに "発見"、"気づき"がいっぱい。

<形質や文化がどれほど混淆していようと、それぞれの独自な歴史やアイデンティティが尊重されなければならないのはいうまでもありません。「民族」とは、このような歴史や文化の共有の意識にもとづくものなのです。 (本書 P.43)

これまで「アイヌ民族」と呼ぶことに「とまどい」があったが、このようにズバリと本質を突かれると、そうなんだと納得できる。

大和民族、日本民族という言葉には、その点で「まやかし」があると思う。
これまで私がなんとなく感じてきたことだ。
アイヌや琉球の人々と比べて、「独自な歴史やアイデンティティ」が、いわゆる「日本人」にあるだろうかと考えると、心もとない。
無理にそういったものを求めようとすると、怪しい民族主義のタコツボに閉じこもってしまいそうで危険を感じる。

この本を読み続けていく途中で、感じたこと、考えたことを、また何か書くかもしれない。

― Wikipediaより ―
瀬川 拓郎(せがわ たくろう、1958年1月1日 - )は、日本の考古学者、アイヌ研究者。
札幌市生まれ。1980年、岡山大学法文学部史学科卒業。2006年、「擦文文化からアイヌ文化における交易適応の研究」で総合研究大学院大学より博士(文学)を取得。旭川市博物科学館主幹。
著書[編集]
『アイヌ・エコシステムの考古学 異文化交流と自然利用からみたアイヌ社会成立史』北海道出版企画センター 2005
『アイヌの歴史 海と宝のノマド』講談社選書メチエ 2007
『アイヌの世界』講談社選書メチエ 2011
『コロポックルとはだれか 中世の千島列島とアイヌ伝説』新典社新書 2012 
『アイヌの沈黙交易 奇習をめぐる北東アジアと日本』新典社新書 2013
『アイヌ学入門』講談社現代新書、2015

     

そういえば、『アイヌの歴史 海と宝のノマド』を最後まで読んだはずだが、もう忘れてしまっていて、面白かったという印象だけが残っている。
『アイヌの世界』(2011年発行)は持っていなかったので、ネット注文した。
去年、北海道に行ったとき、新典社という出版社から出ている新書を二冊、手に入れた。
(上にリンクを載せた二冊)
これもまだ読んでいない。

すこし腰を落ちつけて、この人の本を読んでみようかな、と思う。

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