【読】こんな人がいたのか ――半谷清寿(はんがいせいじゅ)
少し前、地元の図書館にリクエストして入れてもらった本がある。
まだ読んでいる途中だが。
『フクシマ発――イノシシ5万頭、廃炉は遠く……人びとはいかに這いあがるか』
フクシマ未来戦略研究所(編著)
現代書館 2015/10/15発行 187ページ 1,800円(税別)
出版社のサイト情報
現代書館のサイト http://www.gendaishokan.co.jp/ 内
http://www.gendaishokan.co.jp/goods/ISBN978-4-7684-5767-2.htm
この本を知ったきっかけは忘れてしまったが、赤坂憲雄さんや開沼博さんといった、私の気になる人が執筆している。
― e-honサイトより ―
[目次]
星亮一特別対談 インタビュー・福島の現状を問う
「伝える」ことに真摯に向き合う
現状を世界一分かり易く発信する ほか
和合亮一震災ノート
フクシマの声―3・11後の「思想」と「生活」
思想家の復権に立ち会うこと
シェルターの中の善人 ほか
特集・地域で作る、育てるということ
地の記憶の再生こそローカルの歩む道
人の和が作る五穀豊穣の恵み ほか
特集・福島から息吹く、福島を考える―2015年・復旧と復興のリーディングカンパニー
■
赤坂憲雄さんの 「思想家の復権に立ち会うこと」 という興味深い一文が掲載されている。(P.58-64)
赤坂さんは、まず、福島県立博物館の前館長だった高橋富雄さんについて触れている。
(博物館の現館長が赤坂さん)
福島県立博物館
http://www.general-museum.fks.ed.jp/
その高橋富雄さんの功績を述べ、『高橋富雄東北学論集』 第四巻「東北開発」を挙げて、こう書いている。
<この一巻はいま、東日本大震災からの復興と再生という課題を背負わされながら、将来にたいして曙光が見いだせずに呻吟している7東北にとって、かぎりない示唆に富み励ましに満ちた著書として読まれるべきかもしれない、と思う。> (P.60)
続けて、高橋富雄さんの上記の本の、第一部第三章「明治の東北論――半谷清寿の発見」で語られている、半谷清寿(はんがいせいじゅ)という「忘れられた先駆的な思想家」について考察している。
高橋富雄さんのお名前は承知していたが、半谷清寿という名前は初めて聞いた。
明治39年に刊行された 『将来の東北』 という書物を書いた人だという。
(高橋富雄さんは、東北大学の図書館の片隅に埋もれていたこの本を、復刻・刊行したという)
このよな前置きの後、赤坂さんは、「試みとしての半谷清寿論」を2ページ半にわたって書いている。以下、赤坂さんの記述(本書P.62-)に沿って――
半谷清寿は、安政五(1858)年、相馬藩小高郷の郷士の長男として生まれた人。
その頃、相馬藩は二宮尊徳の「尊徳仕法」によって藩政再建につとめていて、それはいわば、「ウルトラ勤倹貯蓄型の純農一本農政」というべきもので、幕末の相馬藩にすばらしい復興をもたらしたが、それがそのままに相馬の近代化に向けての限界にもなった。
多角経営・商品作物・農業外産業などによって近代の資本主義への道が開かれるのだが――それらを抑圧して農本主義に立てこもり、復興をはかる「封建再生産」によって近代を迎えることになった。
半谷清寿は、このような相馬の伝統を断ち切り、「資本主義の精神」に目覚めた実践的な思想家だった。
彼は、小高で酒造業を始めて、酒米を得るために土地改良を進めた。
それから小高織物会社をつくり、相馬羽二重事業に乗り出す。
明治34(1901)年には、双葉郡富岡町の夜ノ森の開墾に着手、「新しき村」の試みへと突き進む。(武者小路実篤らの「新しき村」より20年以上も早い、ユートピア建設の企て)
こうした実践のなかで培われた思想が、『将来の東北』に語られている。
関東大震災のあとにも、半谷はかなり具体的な東北遷都論をまとめて、松方正義への建議という形で提言していた、ともいう。 (本書P.64)
■
長くなった。
いつもながら、うまく要約できていないが、ご容赦を。
最後に、ネット検索で半谷清寿を紹介しているサイトをみつけたので、紹介しておきたい。
「うつくしま電子事典」 (福島県教育委員会) のサイト
http://www.gimu.fks.ed.jp/shidou/jiten/
こういう人がいたんだな。
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