【読】三月十日という日
3.11の前日(1945年3月10日)のことなので、東京大空襲のことは、忘れられがちだ。
もちろん、あの空襲を体験した人たち、その遺族、年配の戦争体験者には忘れられない日だ。
今年も、この日の新聞、テレビ、ラジオなどで特集があった。
■
先日、図書館の新着図書コーナーでみつけて借りてきた本を、読んでいる。
和賀正樹 『これが「帝国日本」の戦争だ』
現代書館 2015/11/30発行 127ページ 1,200円(税別)
戦禍のショッキングな写真満載だが、いろいろ新しい発見があった。
東京大空襲のあとの、たくさんの黒焦げ焼死体の写真も、掲載されている。
撮影者は石川光陽とのキャプションがある。
当時、報道機関などによる写真撮影は禁じられていて、新聞にも正確な被災状況は発表されていない。
石川光陽は、撮影を許可(命令)された数少ない人だった。
石川光陽とは――
1904-1989 昭和時代の写真家。
明治37年7月5日生まれ。東京九段下の蜂谷写真館で修業。昭和2年警察官となり,6年から警視庁警務部企画課に勤務し,雑誌「自警」に管内のスナップ写真を連載。17年から空襲による被害を撮影しつづけ,「東京大空襲の全記録」をのこした。平成元年12月26日死去。85歳。福井県出身。本名は武雄。写真集に「痛恨の昭和」など。
― デジタル版 日本人名大辞典+Plusより ―
地元の図書館に、この人の著作があったので、そのうちの一冊を借りてみようと思う。
石川光陽 『グラフィック・レポート 痛恨の昭和』
岩波書店 1988年発行
<カメラと日記で綴る歴史の証言。「皇軍の赴くところ敵なし、大日本帝国が大東亜に君臨する日も間近かである。警視庁のやっている防空演習は、失礼ながらまことに無駄なことと申し上げたい…」太平洋戦争に突入して戦局の良かったころ、陸軍報道部の将校が警視庁を訪れて講演をした。この速記録を警視庁のカメラマンだった石川光陽さんは、いまでも怒りを込めて保存している。> ― Amazon ―
■
今読んでいる 『これが「帝国日本」の戦争だ』 には、私が知らなかったり誤認していたことが、他にもあった。
東京大空襲の八日後(3月18日)に、天皇(当時の昭和天皇)が被災地を視察したという。
<中世から<聖なる天皇>は、死や地や産などの穢れからもっとも遠いところに存在してきた。/臨戦下とはいえ、腐乱死体、焼死体を「玉体」である陛下の視界に入れてよいものか。/視察の内定以来、夜を日に継ぎ、順路の死体の処理清掃を急いだ。(中略) 空き地、寺院、グラウンドに陸軍が大きな穴を堀り、身元不明の遺体を百単位で投げ込み、合葬していく。……> (本書 P.98 「ご巡幸」・・・天皇は焼死体を見たか)
天皇は、わずか一時間、車で「ご巡幸」しただけだったという。
とうぜん、焼死体など目にしなかったことだろう。
もうひとつ。
これは、敗戦直前の空襲、原爆投下にまつわる話。
京都が原爆投下の第一候補だったことを、迂闊にも私は知らなかった。
アメリカが、はじめから、文化遺産の多い京都の空襲を除外していた、という通説は間違っているようだ。
スチムソン陸軍長官が京都への投下に強く反対した結果、京都が除外されたということはあったようだが……このあたり、ネット情報はまちまちで、何を信用していいのか、まだわからない。
いずれにしても、少なくとも当初は、京都、広島、横浜、小倉などが原爆投下の候補地だったらしい。
「あの戦争」について、まだまだ勉強し、調べなければ、と思う。
それにしても――
あの戦争での米軍の冷酷さ(日本本土への無差別空爆、原爆投下、沖縄戦)は、なんとしたものか。
これに対して、日本人が戦後、米国を強く非難してこなかったのは、なぜだろう。
よくよく考えなければいけない。
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