【読】古山高麗雄 『断作戦』
このところ、古山高麗雄という作家に、はまっている。
この作家に関するブログ記事も増えたので、カテゴリーに「古山高麗雄」を追加。
きのうから、『断作戦』 という長編小説を読んでいる。
(「文學界」198年4月号~1982年7月号連載/1982年11月、文藝春秋から刊行)
『龍陵会戦』 『フーコン戦記』 と並ぶ、彼の「戦争長篇小説三部作」の最初の作品だ。
「断作戦」 などという名前は、よほどの戦記マニアか、あの戦争でビルマ(現在のミャンマー)の戦闘にかかわった人しか知らないだろう。
もちろん、私もつい最近まで知らなかった。
― Wikipedia 「断作戦」 より ―
断作戦とはイギリス軍と中国軍の攻勢によってビルマ北部を失った後も、中国国民党への物資援助ルート(ビルマ・ルート)を遮断し続けることを目的とした日本陸軍の作戦。
作戦案は大本営の作戦班長や支那総軍の課長参謀を歴任した辻政信陸軍大佐(辻は1944年(昭和19年)7月3日に第33軍参謀に補職)。当初はミイトキーナ線を重要視していたが、辻の案で雲南周辺に戦力を集結することに決まったのである。
具体的には第33軍がビルマと中国国境のバーモ及びナンカンを攻撃し、中国雲南省を目指す計画であった。だが、アメリカ、イギリスはすでに空路をつかって援助物資を国民党に送り込んでいた。地上における遮断作戦はあまり意味をなさなかったが、西から進撃し続けるイギリス・インド軍と、北で反撃に転じた雲南遠征軍両方から圧迫を受けていた。そのため、目的が変わり、攻勢からビルマ北部を持久戦によって戦線を支えた。
いわゆる「援蒋ルート」を遮断する目的から、「断作戦」と名づけられたのだろうが、日本軍はほぼ全滅という悲惨な戦闘だった。
ビルマの戦闘といえば、「インパール作戦」が有名だが、ビルマ北部から中国(雲南)にかけての戦闘も忘れてはいけないだろう。
■
古山高麗雄は、エッセイ集 『反時代的、反教養的、反叙情的』 (2001年/KKベストセラーズ刊 ベスト新書)で、この小説について次のように書いている。
<私は、中国雲南省で全滅した騰越(とうえつ)守備隊を扱ったものを「断作戦」と題して「第一部とし、同じ雲南省の龍陵(りゅうりょう)の攻防を書いた「龍陵会戦」を第二部としたが、「断作戦」と「龍陵会戦」とは、連載を始めてから完結するまで、合わせて四年半ぐらいしかかかっていない。ところが、第三部の「フーコン戦記」を書き終えるのに、それから十三年半かかった。/私は、雲南地区の戦いには参加しているので、二部までは書きやすかったのであろう……(後略)>
<ビルマの戦い、というと、インパールばかりが大きく報じられているが、昭和十九年、日本軍はそれだけの戦力もないのに、インパールの占領を夢想し、米英支連合軍は、インパールでは日本軍の自滅を予見し、援蒋ルート確保のために、雲南、フーコンをビルマ反攻の主戦場とした。日本軍には戦力もない上に、その連合軍の意図に対応する知恵もなかった。>
― 上掲書 P.198-199 より ―
■
ところで、図書館から借りている単行本の『断作戦』は、困ったことに、表紙見返しの地図がカバーのそでに隠れて見えないのだ。
この小説には、一般的な地図には載っていない当時の地名が頻出するため、地図の全体が見えないのはつらい。
■
この小説について書かれたブログを発見した。
上手にまとめられている。
『断作戦』古山高麗雄 - うちゅうてきなとりで
http://the-cosmological-fort.hatenablog.com/entry/2015/05/05/065527
うちゅうてきなとりで
http://the-cosmological-fort.hatenablog.com/ 内
この小説、323ページのうち、ようやく三分の一まで読んだが、地名の関係が複雑でなかなか頭にはいってこないのが、ちとつらい。
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