【読】2021年5月に読んだ本(読書メーター)
5月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:2839
ナイス数:85
動物感覚 アニマル・マインドを読み解くの感想
河田桟『くらやみに、馬といる』で紹介されていたので知った本。自閉症の女性 テンプル・グランディンと、自閉症の子どもを持つ女性 キャサリン・ジョンソンの共著。日本語訳文が読みやすい。自閉症であるがゆえに、ふつうの人とはことなる感覚をもっていること、どうやらそれは動物のものに似ているらしいことに気づき、そこを出発点にして「動物感覚」(動物はどんなふうに見たり、聞いたりして、考えるのか)について、これまで考えられてこなかった視点から、たくさんの新しい知見が展開されている。私の目から何枚もウロコが落ちた思い。
読了日:05月04日 著者:テンプル グランディン,キャサリン ジョンソン
我輩は施主であるの感想
古書店の百均棚で見かけて知った本。赤瀬川原平が好きで『老人力』『新解さんの謎』、路上観察のトマソン本など楽しんで読んできたが、この本は知らなかった。藤森照信さんが設計した、あの”ニラハウス”ができあがるまでの顛末が、赤瀬川さんらしい温かみのある文章で綴られている。いちおう小説の体裁をとっているが、仮名で出てくる人たちは全部、実在の、よく知られている人たち。夫人の名前と飼い犬の名前が、わざと反対になっているのも、クスっと笑わせる。やっぱりいいなあ、赤瀬川原平ワールド。どんなことも面白がることの大切さ。
読了日:05月05日 著者:赤瀬川 原平
はみだしルンルンの感想
軽~い本なので、あっという間に一気に読んでしまった。 『へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々』(ナナロク社)を読んだときに感じた、この著者のやさしさが感じられ、ほのぼのとした読後感。モンドくん(奥村門土)の絵も、ほのぼの感に味を添えている。東京新聞に毎月一回、連載していた短文を集めたものなので、読みやすい。
読了日:05月05日 著者:鹿子裕文
「顔」の進化 あなたの顔はどこからきたのか (ブルーバックス)の感想
ヒトを含む動物の顔の構造、顔を構成する口・鼻・目・耳といった器官の役割、その進化の過程、等々が図表を駆使してわかりやすく書かれている。くだけた口調にも親しみが持てる好著。第4章(ヒトの顔はどう進化したか)では人類史、第5章(日本人の顔)では日本人の進化(縄文人、弥生人、それらの混血が進んできたこと)について書かれていて、とくに興味深かった。著者は、固い食物を噛まなくなったことで日本人の顔(顎)が華奢になってきていることに警鐘を鳴らしている。「アジの干物の素揚げ給食」(座間市での試み)を普及させたいという。
読了日:05月09日 著者:馬場 悠男
ブードゥーラウンジの感想
鹿子裕文さんの2冊目の著作。彼が愛した福岡のライブハウス”ブードゥーラウンジ”の熱狂がひしひしと伝わってくる。”ボギー”(モンドくん=奥村門土の父親)とその家族、”オクムラユウスケ”(”ボギー”の弟)、奥村隆子さん(奥村兄弟の母親)等々、魅力的な人たちが生き生きと描かれている。処女作『へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々』(ナナロク社)誕生の舞台裏話も私には興味深かった。リズム感のある文章が、また、いい。ライブハウスって、いいなあ。
読了日:05月11日 著者:鹿子 裕文
武蔵野マイウェイの感想
武蔵野といっても広うござんす。この著者、よく歩くなあと感心した。東京のはずれ、埼玉に接する北多摩に住む私には、馴染みのある場所と、それほどよく知らない場所が混じっているが、縦横無尽に歩きまわる著者の足取りを、地図を片手に追った。寺社の記述が多いが、行く先々で図書館や古書店に寄るのが好きな著者に親しみを感じる。この人の本は初めて読んだが、数えきれないほどの著作があることを知って、びっくり。武蔵野の一画に住むしあわせを再認識した一冊だった。
読了日:05月14日 著者:海野 弘
漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫)の感想
知人の「この小説、いいよ~」という薦めで読んでみた西加奈子の初作品。強烈なタイトルどおり、主人公の”肉子ちゃん”と呼ばれる愛すべき女性の強烈な個性、語り手の小学生少女の独白と”肉子ちゃん”の奇妙な関西弁、登場する人たち(漁港の大人たち、思春期に向かう子どもたち)の織りなす世界が多彩。ぐいぐい引き込まれる。北陸の港町が舞台として設定されているのだが、東北の女川港との縁(えにし)を文庫版あとがきで作者が明かす。単行本は2011年8月発行。その前に幻冬舎の雑誌に連載されていたという。あの震災をはさむ時期だ。
読了日:05月16日 著者:西 加奈子
音楽プロデューサーとは何か 浅川マキ、桑名正博、りりィ、南正人に弔鐘は鳴るの感想
若い頃から浅川マキのファンだったので、彼女のアルバムにあった寺本幸司さんの名前は見知っていた。数年前、小さなイベントスペースで浅川マキを回想するトークイベントがあり、そこに出演されていた寺本さんの話を聞いた。この本が出版される話を知り、発売前に予約して購入。浅川マキだけでなく、りりィ、桑名正博らと深く関わった寺本さん。浅川マキのデビュー前後の話、旅先でのライブ中にホテルで急死したときの話など、とても興味深く、浅川マキファンにはたまらない内容。感情を表に出さない淡々とした文章も、いい。
読了日:05月22日 著者:寺本 幸司
〈沈黙〉の自伝的民族誌(オートエスノグラフィー) サイレント・アイヌの痛みと救済の物語の感想
博士学位論文がベースのこの本は、学術的な難解な論考記述に手を焼いたが、著者自身のルーツ(曾祖母から続くアイヌの出自)に向き合い、自身の問題として「サイレント・アイヌ」の世界を「自伝的民族誌(オートエスノグラフィー)」と著者が呼ぶ手法で論考している。第四章「家族史」、第五章「真衣」から読み始めて他の章を通読する方が読みやすいと思う(先頭から読もうとすると途中でギブアップしそう)。著者についてネットで調べてみると、まだ若い現代風の女性であることに驚いた。アイヌ問題に関心のある人に推奨したい良書。
読了日:05月31日 著者:石原 真衣
読書メーター
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