【読】五木さんの桐野夏生評
桐野夏生の小説が好きで、このところ古本の文庫を買っては読んでいる。
新刊の単行本は、図書館から借りたり(予約待ち行列ができているが)、待ちきれずに買ったこともある。
今日も市内のブックオフで手当たり次第に読んでいない文庫を集めて、レジに持って行ったところ、12冊で4100円。
できるだけ100円(税抜き)の棚から買いたいのだが、400~500円ぐらいのものが8冊。
しばらく楽しめそうだ。
読んだ本をダブって買ってしまわないように、リストも作っている。
〇印が手元にあってまだ読んでいないもの。
●印が読み終えたもの。
読み終えた本は、どんどんブックオフに持って行っている。
・ファイアボール・ブルース―逃亡(1995年1月 集英社)
【改題】ファイアボール・ブルース(1998年5月 文春文庫)
●OUT(1997年7月 講談社 / 2002年6月 講談社文庫【上・下】)
・錆びる心(1997年11月 文藝春秋 / 2000年11月 文春文庫 / 2006年1月 大活字文庫【上・下】)
所収作品:虫卵の配列 / 羊歯の庭 / ジェイソン / 月下の楽園 / ネオン / 錆びる心
〇ジオラマ(1998年11月 新潮社 / 2001年10月 新潮文庫)
所収作品:デッドガール / 六月の花嫁 / 蜘蛛の巣 / 井戸川さんについて / 捩れた天国 / 黒い犬 / 蛇つかい / ジオラマ / 夜の砂
●柔らかな頬(1999年4月 講談社 / 2004年12月 文春文庫【上・下】)
・光源(2000年9月 文藝春秋 / 2003年10月 文春文庫)
・玉蘭(2001年3月 朝日新聞出版 / 2004年2月 朝日文庫 / 2005年6月 文春文庫)
・ファイアボール・ブルース2(2001年8月 文春文庫)
・リアルワールド(2003年2月 集英社 / 2006年2月 集英社)
〇グロテスク(2003年6月 文藝春秋 / 2006年9月 文春文庫【上・下】)
〇残虐記(2004年2月 新潮社 / 2007年8月 新潮文庫)- 週刊アスキー連載。連載時タイトルは「アガルタ」。桃源郷としての「アガルタ」を全く知らないままタイトルとして採用したとのこと
〇I'm sorry, mama(2004年11月 集英社 / 2007年11月 集英社文庫)
・魂萌え!(2005年4月 毎日新聞社 / 2006年2月 新潮文庫【上・下】)・
・冒険の国(2005年10月 新潮文庫)
●アンボス・ムンドス(2005年10月 文藝春秋 / 2008年11月 文春文庫)
所収作品:植林 / ルビー / 怪物たちの夜会 / 愛ランド / 浮島の森 / 毒童 / アンボス・ムンドス
〇メタボラ(2007年5月 朝日新聞社 / 2010年7月 朝日文庫【上・下】 / 2011年8月 文春文庫)
●東京島(2008年5月 新潮社 / 2010年5月 新潮文庫)
●女神記(2008年11月 角川書店 / 2011年11月 角川文庫)
〇IN(2009年5月 集英社 / 2012年5月 集英社文庫)
●ナニカアル(2010年2月 新潮社 / 2012年10月 新潮文庫)
・優しいおとな(2010年9月 中央公論新社 / 2013年8月 中公文庫)
・ポリティコン(2011年2月 文藝春秋【上・下】 / 2014年2月 文春文庫【上・下】)
〇緑の毒(2011年8月 角川書店 / 2014年9月 角川文庫)
〇ハピネス(2013年2月 光文社 / 2016年2月 光文社文庫)
〇だから荒野(2013年10月 毎日新聞社 / 2016年11月 文春文庫)
〇夜また夜の深い夜(2014年10月 幻冬舎 / 2017年10月 幻冬舎文庫)
・奴隷小説(2015年1月 文藝春秋 / 2017年12月 文春文庫)
所収作品:雀 / 泥 / 神様男 / REAL / ただセックスがしたいだけ / 告白 / 山羊の目は空を青く映すか Do Goats See the Sky as Blue?
〇抱く女(2015年6月 新潮社 / 2018年8月 新潮文庫)
●バラカ(2016年3月 集英社 / 2019年2月 集英社文庫【上・下】)
・猿の見る夢(2016年8月 講談社 / 2019年7月 講談社文庫)
●夜の谷を行く(2017年3月 文藝春秋 / 2020年3月 文春文庫)
〇デンジャラス(2017年6月 中央公論新社 / 2020年6月 中公文庫)
〇路上のX(2018年2月 朝日新聞出版 / 2021年2月 朝日文庫)
・ロンリネス(2018年6月 光文社 / 2021年8月 光文社文庫)
・とめどなく囁く(2019年3月 幻冬舎)
●日没(2020年9月 岩波書店)
●インドラネット(2021年5月 KADOKAWA)
●砂に埋もれる犬(2021年10月 朝日新聞出版)
・燕は戻ってこない(2022年3月4日 集英社)
【小説 村野ミロシリーズ】
・顔に降りかかる雨(1993年9月 講談社 / 1996年7月 講談社文庫 / 2017年6月 講談社文庫【新装版】)
・天使に見捨てられた夜(1994年6月 講談社 / 1997年6月 講談社文庫 / 2017年7月 講談社文庫【新装版】)
〇水の眠り灰の夢(1995年10月 文藝春秋 / 1998年10月 文春文庫 / 2016年4月 文春文庫【新装版】)
〇ローズガーデン(2000年6月 講談社 / 2003年6月 講談社文庫 / 2017年8月 講談社文庫【新装版】))
収録作品:ローズガーデン / 漂う魂 / 独りにしないで / 愛のトンネル
・ダーク(2002年10月 講談社 / 2006年4月 講談社文庫【上・下】)
【ロマンス小説】
・愛のゆくえ(1984年12月 サンリオニューロマンス)
・熱い水のような砂(1986年2月 サンリオニューロマンス)
・真昼のレイン(1986年7月 サンリオニューロマンス)
・夏への扉(1988年1月 双葉社) ※桐野夏子名義
・夢の中のあなた(1989年3月 双葉社) ※桐野夏子名義
・ジュニア小説(野原野枝実名義)
・恋したら危機!(1989年8月 MOE文庫)
・あいつがフィアンセだ!(1989年8月 MOE文庫)
・小麦色のメモリー(1989年8月 MOE文庫)
・トパーズ色のband伝説(1989年10月 MOE文庫)
・恋したら危機! パート2(1989年12月 MOE文庫)
・媚薬(1990年3月 MOE文庫)
・恋したら危機! パート3(1990年5月 MOE文庫)
・急がないと夏が… プールサイドファンタジー(1990年7月 MOE文庫)
・セントメリークラブ物語1 セントメリーのお茶会にどうぞ(1990年10月 MOE文庫)
・セントメリークラブ物語2 銀の指輪は冷たく輝く(1991年1月 MOE文庫)
・ガベージハウス、ただいま5人(1991年3月 コバルト文庫)
・涙のミルフィーユボーイ(1992年1月 コバルト文庫)
・ルームメイト薫くん 1-3(1993年-94年 偕成社)
ところで、1999年刊行の『柔らかな頬』は、同年7月の第121回直木三十五賞を受賞している。
当時の選考委員だった五木寛之さんが、この作品をどう評価しているのか興味があった。
そういえば、こんな本が手元にあった。
『ぼくが出会った作家と作品 五木寛之選評集』 東京書籍 2010年刊
五木さんは、1978年(第79回)から2010年(第142回)まで、直木賞選考委員を勤めていたはず。
直木賞選考委員リスト
https://prizesworld.com/naoki/sengun/
この本から、第121回直木賞の五木さんの選評を抜き出してみる。
ちなみにこの回の受賞作は二作で、佐藤賢一『王妃の離婚』と桐野夏生『柔らかな頬』だ。
<今回は天童荒太さんの「永遠の仔」を最後まで推したのだが、意外なほど不評で、桐野夏生さんの「柔らかな頬」と、佐藤賢一さんの「王妃の離婚」に圧倒的な支持が集り、二作受賞の運びとなった。(中略)
桐野夏生さんの「柔らかな頬」は、以前、候補になりながら受賞しなかった「OUT」とくらべて、新人の小説としての野心に欠けると思った。「OUT」は文字通り良俗的世界からブレイクアウトすることを志した作品である。制度としての直木賞のラインからはじき出されたところにこそ、「OUT」の真の栄光があったのではあるまいか。私は胸中にウメガイを抱いているかのように見えるこの作家が、ふたたび「OUT」の世界を描いて「平地人を戦慄せしめ」るであろうことを、ひそかに期待している。賞などというものは取ってしまえばこっちのものだ。あとは勝手にわが道をゆけばいいのである。(後略)>
いかにも五木さんらしいと思う。
「ウメガイ」とは、「サンカ」と呼ばれた人たちが持ち歩いた刀剣。
シンボル的な意味合いを持つ道具らしい。
「平地人を戦慄せしめ(よ)」は、有名な柳田国男の「遠野物語」序文に出てくるフレーズ。
『風の王国』や『戒厳令の夜』を読むと、五木さんの 「サンカ」への関心・思い入れが、うかがい知れる。
桐野夏生さんは、五木さんのこの選評を目にしていると思うが、五木さんが言うように「良俗的世界からブレイクアウト」する人々を描き続けている。そこがこの作家の魅力だと思う。
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